A型はコロナに弱い?元情報は「査読前論文」という話

血液型により特定の病気への抵抗力が異なる、という話はたびたび聞きます。
熱帯地方にO型の人が多いのは、O型がマラリアにかかりにくからと言いますし、その地方独特の風土病に強い血液型が生き残り易いというのは自明の理に思えます。

日本では「A型が最も免疫が弱く、O型が強い」と言われることがあるようですが、実際のところは特定の病気に対して弱くとも他の病気に対して耐性を持っていたり、その逆であったりと、総合的に見るとバランスが取れているのだそうです。


現在、韓国のネットやSNSを通じて「血液型によってコロナへの耐性が違う」という話題が急速に拡がっているそうです。
ところが、元となったのは「査読前論文サイト」に掲載された情報です。以前フランスで流れたデマ情報と同じ構図です。フランスの時と違って、情報発信源がメディアな分、より質が悪いかもしれません…。


KBSニュースの記事からです。

[ファクトチェック]「血液型A、コロナ19に脆弱、O型は強い」..本当だろうか?


「血液型に応じてコロナ19ウィルスの耐性が違う」
「A型が最も脆弱でO型が相対的に感染に強い」

今日(18日)、各種インターネットカフェSNSで急速に拡散している内容です。ところが、薮から棒で主張がありません。関連研究の結果を伝えるメディア報道を根拠にしているからです。

(中略)

関連の内容は昨日(17日)午後、国内のある日刊紙が初めて報道し本格的に知られるようになりました。以来、通信社など複数のメディアが記事を打ち出し関連記事の流布も急激に増えた状況です。

しかし、記事に紹介された研究は厳しい検証を経て学術誌に掲載された「正式論文」ではありません。この研究結果が掲載されたのはmedRxivという「事前論文サイト」です。

(中略)

ユン・テホ保健福祉部中央事故収拾本部防疫統括班長は今日、中央災難安全対策本部(中対本)定例会見で研究結果について尋ねる記者の質問に「統計でO型がわずかの感染だったという一つの論文だけでもって判断することが出来るものではないだろう」とし「より(多くの)研究を通じて明らかにしなければならない」と説明しました。

実際に研究ではコロナ19発祥地として知られている武漢市と深圳にある病院3ヶ所でコロナ19確定判定を受けた患者2,173人の血液型パターンを統計に基づいて調査した結果です。武漢市金銀谭病院の感染者1,775人の血液型分布を3,694人の一般人の血液型分布と比較して計算してみたところ、A型が38%で一般人のA型分布の32%よりも高く、O型は26%で一般のO月分布の34%よりも「優位に低かった」と分析した。他の2ヶ所に対する結果も同様のパターンを示したとする説明です。

研究者はこのような結果に基づいて「A型の人はコロナ19感染を減らすために、個人の保護強化が必要であり、特に感染した場合はより多くの看護と治療が必要である」と主張しました。

ユン・ジホン・カトリック大富川聖母病院感染内科教授(大韓感染学会長)は、最近東亜サイエンスとのインタビューで「事前論文サイトにあがって来る内容は同僚の評価を経たものではないので交信力が低下する」とし「専門家が参考にすることはあるが、メディアが『学説』が出てきたかのように扱うことは危険である」と指摘しました。

【結論】
「A型がコロナ19に最も脆弱でO型が相対的に強い」→概ね事実ではない。

専門家グループで参考に値する内容ではあるが、まだ正式論文の内容でもなく科学的根拠が不足している状況。さらなる研究が必要であることは研究者自らも認めている。ただし、一抹の可能性を考慮して「概ね事実ではないこと」と判定。

(後略)

KBSニュース「[팩트체크K] "혈액형 A, 코로나19에 취약, O형은 강해"..정말일까?([ファクトチェック]「血液型A、コロナ19に脆弱、O型は強い」..本当だろうか?)」より一部抜粋


研究発表者自身が「仮説」であること、「立証するためには直接研究が必要であること」を明示していたそうですが、完全に独り歩きしてしまったようです。


説明だけ見ると、思わず「なるほど」と思ってしまうかもしれませんが、中国でのコロナの二次感染拡大は「家族間が65〜70%を占めている」という状況を完全に無視した話になっている点に注意です。血液型は遺伝しますから、単純な血液型分布図と比較しても偏りは立証できないと思います。
だからこそあくまで「仮説」でしかないわけです。


不安な気持ちはあると思いますが、不確実な情報に踊らされないように気をつけましょう。