サムスン重工業の未払い問題の話

先月25日、サムスン重工業の下請け業者(TSS-GT)の社員10名ほどが契約金未払いを訴え、建設中だった海洋生産設備現場を占拠する事態が発生しました。

施設占拠当時、その下請け企業は、契約書の事後作成とサムスン重工業からの単価引き下げ圧力により約20億ウォン*1の未払いが発生していると主張していました。
この件に関して、ハンギョレ新聞が独自に入手したとする契約書(作業合意書)で、日付が操作されていた可能性が示唆されています。


ハンギョレの記事からです。

[単独]サムスン重工業、契約書の日付を操作して「不当下請け」明らか


(前略)

16日、<ハンギョレ>が入手した両者間による作成作業合意書などの文書には「先施工、後契約*2」の状況がそっくりそのまま盛り込まれている。この合意書の署名日(①)は、1月30日とされているが、実際に署名した日付(②)は、3月11日である。署名された時点を隠すために、その文書を出力した日付部分を修正テープで覆っているが、まだ隠せていない後ろの付属書類には、出力日が3月11日と記録されている。 〜(中略)〜

これに対して、サムスン重工業側は<ハギョレ>に「該当業務は事前に作業量や金額などを知ることができないため、作業を先にして後で合意書を書いた」と釈明した。書面の交付が遅れて行われたことを事実上認めながらも、作業の特殊性をもって不可避であることを強調したのである。 〜(中略)〜

サムスン重工業側は解明の過程で、書面発酵が適時に行われなかった理由は、TSS-GTの方に責任があるという主張も展開した。サムスン重工業の関係者は、「(事前相談をせずに)自分たちが先に処理をしておいて、後で『私たちはこのような作業をしたので精算してくれ』と話した」と述べた。しかし、これに対してTSS-GTのキム・トンジュ代表は「(追加人員などは)私たちが入れたのではなく、サムスンの方から何人か入れるよう言った」とし「お金がいくらか減るかもしれない状況で、私たちが勝手にやることはできないだろう」と反論した。

(中略)

公取委が明らかにしたサムスン重工業の2013年〜2018年の違法行為は、書面による事前の(作業合意書)発行義務違反行為が3万8451件、一方的な単価引き下げ要求が2912件にのぼる。

(後略)

ハンギョレ「[단독] 삼성중공업, 계약서 날짜 조작해 '부당 하도급' 드러나([単独]サムスン重工業、契約書の日付を操作して「不当下請け」明らか)」より一部抜粋


「先施工、後契約(선시공 후계약)」、先に作業をやらせておいて、後から契約書を作成することです。
これに相当する用語が日本にあるのかどうか知らないので、ちょっと訳がぎこちないです。
サムスン重工業に限らず現代重工業、ロッテ建設、LG電子などでも問題が提起されています。

一方的な値引き要求は「후려치기」と言います。
「ぶん殴る、ひっぱたく」みたいな意味がありまして、つまりは「(単価)ふっ飛ばし」みたいなニュアンスなんだろうと思います。

これらは、韓国で大企業が下請けに対して行う代表的なガプシル(パワハラ)行為とされています。

サムスン重工業一社だけで5年間に4万件近い事後契約書問題が報告されていることから、いかに慣例として根付いているかが伺えます。


*1:約1億7千万円

*2:原文「선시공 후계약」