「鼠穴」ならぬ「人穴」の話

先日の韓国側から北朝鮮側への越北者の件ですが合同参謀本部の調査により、越北者の姿が監視装置に写っていたことが分かりました。
7回も補足されていたにも関わらず、韓国軍はそれをスルーしていたことになります。

少し前にも中国からの密入国者の乗った船を、監視装置が13回補足していたにも関わらず、オペレーション側が「釣り船」としてスルーするという事態がありました。

これは典型的なヒューマンエラーでしたが、今回も同じでしょうか?


聯合ニュースの記事からです。

越北者、北到着場面が監視装置に写される…海兵2師団長職務解任


韓国定住から3年で北韓に渡ったキム某(24)さんが北韓に到着した当時の映像が軍の監視装置で補足されていたことが確認された。

(中略)

調査結果によるとキムさんは18日午前2時18分頃、タクシーに乗って燕尾亭(ヨンミジョン)近くで下車したが、当時200mの距離にあった民統線*1検問所勤務者がタクシーの光を見ても、これを確認したり上部に報告しなかった。
続いて2時34分頃、燕尾亭付近の排水路に移動したキムさんは、2時46分頃、漢江に入ったと合同参謀は確認した。排水路脱出に12分しかかからなかったということだ。
水流の場合、二重障害があったりるすが、鉄の障害物が古く、一部壊されており、「通常の体格の人」が通過可能な状況だったというのが合同参謀の説明である。
漢江に入った後、流れを利用して北韓地域に向かったキムさんは午前4時頃、北韓地域に到着したことが確認された。

特にキムさんが燕尾亭の警備所近辺から漢江に入った後、北韓の地に到着するまでの全過程は、軍の近距離、中距離監視カメラに5回、熱線監視装備(TOD)に2回など、計7回補足された。

(後略)

聯合ニュース「월북자, 북한 도착장면 감시장비에 찍혀..해병2사단장 보직 해임(越北者、北到着場面が監視装置に写される…海兵2師団長職務解任)」より一部抜粋


夜間のことでありますし、監視カメラに写っていると判明したのも、後になって「越北があった」事実を前提に何度も見直してやっと識別できた、というレベルだったようです。
ですから、これだけで監視体制の不備を責めることは出来ないのですが…実は最大の問題はそこではありません。

脱北者で越北者のキム某さんが今回通ったルートは、3年前に彼が脱北に使ったものの復路らしいのです。
つまり、壊れていた鉄の障害物は今回壊されたのではなく(12分以内に壊すのは無理でしょうし)、少なくとも3年前からこの排水路には「人が通り抜けられる」サイズの穴が開きっぱなしだったということです。

3年前、脱北直後の彼を聴取した際にそのことは分かっていたはずです。
にもかかわらず、今まで破損箇所が放置されていた…その体質こそが問題の本質ではないかと思います。


*1:民間人出入統制区域。軍事境界線の南側5〜10kmに設定されている、民間人の出入りを規制している区域。