日本の貿易黒字は「韓国のおかげ」という話

3年ぶりに昨年は貿易黒字になりました。
コロナの影響で原油の輸入量が半分くらいに減っていますから、それが大きかったんだろうと思っていたのですけれど、韓国メディアで変な記事を見つけました。
曰く、日本の貿易黒字は「韓国のおかげ」だそうです。


聯合ニュースの記事からです。

日本、昨年「韓国のおかげ」で3年ぶりの貿易黒字記録


日本が昨年、外国との交易で全体黒字額の3倍水準を韓国を通じて上げたことが分かった。
これは日本が他国との貿易で生じた赤字を韓国がかなり埋めたという意味であり、注目される。

日本財務省が21日発表した貿易統計(速報値)によると、昨年12月の輸出は2.0%増の6兆7千62億円、輸入は11.6%減の5兆9千552億円となった。
このため、日本の12月の貿易収支は7千510億円の黒字になり、6ヶ月連続の黒字となった。

(中略)

日本の昨年の輸出は世界的に流行した新型コロナウィルス感染症(コロナ19)の影響で前年より11.1%減少した68兆4千67億円と集計された。
しかし、輸入は13.8%減の67兆7千320億円となり、年間貿易収支では6千747億円(約7兆2千億ウォン)の黒字を記録した。
日本が年間貿易黒字をあげたのは3年ぶりのこと。

こうした中、日本は昨年12月、韓国との貿易では輸出を20.8%増やし、輸入は6.5%減らし、前年同月比85.2%多い2千215億円の貿易黒字を記録した。
昨年の年間基準で韓国向け輸出は5.5%減少した4兆7千662億円、輸入はさらに大幅な12.1%減少した2兆8千378億円を記録した。

(後略)

聯合ニュース「일본, 지난해 '한국 덕'에 3년 만의 무역 흑자 기록(日本、昨年「韓国のおかげ」で3年ぶりの貿易黒字記録)」より一部抜粋


「全体の黒字額の3倍の水準を韓国経由で上げた」...この意味が最初よく分からなかったんですけど、分かってみればなんてことはありませんでした。
つまり、韓国の輸出額から輸入額を引いた金額、韓国にとっては対日貿易赤字、日本からは対韓貿易黒字に相当する金額ですね、これが全体輸出額から全体輸入額を引いた差額、日本の貿易黒字の3倍に相当するよ、という話です。

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画像のマーカー部分の比較(1,928,475/674,433=2.8≒3倍)です。正直、回りくどいです。それならアジア全体の貿易黒字の「およそ41%が韓国から」と言った方が直感的に分かると思うんですけど。
「3倍」の方がインパクト的に「韓国のおかげ」を強調できるとでも思ったのでしょうか?

さて、では日本の貿易黒字は「韓国のおかげ」なのか、というと…どうでしょう?
韓国への輸出の伸び率は前年比マイナスです。ということは韓国が前年より沢山買ってくれた訳ではありません。単に「相対的に輸出より輸入が減っただけ」のように思えます。

アジアだけで見ると韓国より香港の方がスゴイことになってますよね。台湾も韓国と金額としては同水準だし...記事の理屈で行くと、「香港と台湾のおかげ」でもあるわけです。

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で、「アメリカのおかげ」でもあります。アメリカ一国だけでアジア全体の貿易黒字額をサラっと超えていますので。

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更に中東との貿易差額が軒並み40%近く減少しています。原油国との貿易は日本が圧倒的な赤字ですので、マイナスってことは貿易赤字額が減少したことを意味します。この辺りの影響も相当あったはずです。

結論として、私的には「韓国の影響は些細なもの」じゃないかと。いや、確かに大事なお客さんではあるんですけどね。金額の大小問題でもないんですけど...「赤字を韓国がかなり埋めたという意味であり、注目される」こういう恩着せがましい書かれ方をすると、なんか誤解してない?と、どうしても言いたくなってしまうのです。