214型潜水艦が故障した話

韓国海軍の潜水艦が活動中に推進系の機能故障のために民間企業の船に牽引されて基地に帰港する、という格好悪い事態が起こりました。
記事によると「異例のこと」だそうです。
この艦は以前から異音騒動など問題続きだった孫元一(ソン・ウォニル)と同型艦の214型です。
同型艦のみならず、この艦自体も艦橋周辺のボルトが緩んたり折れたりなどの問題が過去に報告されていたにも関わらず海軍は「問題ない」という見解を示していたそうです。


朝鮮日報の記事からです。

故障した4500億ウォンの潜水艦、民間船舶が引っ張った


海軍が運用中の最新鋭214型(ソン・ウォンイル級・1800t)潜水艦A艦が22日、慶尚北道浦項市の東方の会場で活動中に機能故障のため民間船舶に曳航された。潜水艦推進電動機の異常が原因だという。潜水艦の核心部品であるモーターやバッテリーなどに異常が生じた可能性があるということだ。A艦の故障について、政界は昨年から問題を提起しているが、海軍は「問題ない」という立場を示していたことが分かった。

24日、海軍などによると5月まで定期修理予定のA艦が22日午後、試運転潜行を終えて水面に浮上し、基地に移動した。その際、推進系統の安全警報が鳴った。これを受け、A艦の乗組員らは指揮部に状況を報告した。海軍関係者は「乗組員の安全などを懸念し、直ちに運転を中止、曳航措置した」と説明した。海軍からの連絡を受け、製造会社の現代重工業タグボートを緊急派遣した。この潜水艦はタグボートに曳かれて23日未明に近くの基地に戻り整備を受けている。軍の潜水艦が作戦や整備など任務遂行中に機能の問題で民間船舶に曳航されるのは異例のことだ。軍関係者は「民間のタグボートが投入されたのは、製造会社のアフターサービスのため」と説明した。

A艦は2008年に推進し、翌年に就役した。国会議事録に因ると昨年10月の国政監査でハ・テギョン議員は「214級J艦が故障したが同じ仕様のA艦は大丈夫か」と尋ね、プ・ソクチョン海軍参謀総長は「今の所大丈夫だ」と2度答えた。ところがわずか3ヶ月後にA艦から問題が発生した。A艦はJ艦と同様に推進電動機で欠陥が発生している可能性があると軍は判断している。

(中略)

214級潜水艦は2000年からドイツの技術を導入、現代重工業と大宇造船海洋が計9隻を建造、運用している。一隻の価格は約4500億ウォン*1だという。

(中略)

しかし就役後、ボルトが折れたり緩んだり、潜水艦プロペラから亀裂151個が発見されるなど論議が相次いだ。2015年には元艦長などの予備役将校が潜水艦の性能評価に関する軍納不正に関与し検察の捜査を受けたりもした。

朝鮮日報「고장난 4500억 잠수함, 민간 선박이 끌고왔다(故障した4500億ウォンの潜水艦、民間船舶が引っ張った)」より一部抜粋


214型は元はドイツ潜水艦(212級)の廉価輸出版です。
ドイツは設計図を売っただけなので、部品はすべて韓国で賄われているはずです。ですから問題があったとすれば韓国産の部品の問題です。
実はドイツも6隻ある潜水艦が予算不足でろくに整備できず全隻「稼働不可」状態だったりするらしいんですけどね。(3年くらい前に唯一動いていた一隻が「潜ろうとしたら壊れた」はず。その後どうなったかは知らない)
韓国もドイツも本質は大陸国家ですから海軍力はあまり重視されていないのでしょうか。

軍納不正というのは、所謂「中抜き」です。
設計上・仕様上はきっちり優秀に作っておいて、後から部品を安物に取り替えて差益を横領するやり方です。(仕様書と実際の部品が違う)
少し古いデータですが、2010〜2013年の3年間だけで航空装備23社103件の摘発事例が報告されています。

ちなみに、問題の艦は2008年進水、2009年就役の現代重工製ということで艦名は「安重根」で間違いないと思われます。214型には独立運動家などの名前が付けられることが慣例となっています。


*1:約422億円