韓国造船業の防産目標の一つに「維持・保守」分野があります。
7～8月頃に何本か記事が集中していましたが、ハンファオーシャンやHD現代重工業などが軍艦の輸出より維持・保守事業拡大のための投資を積極的に行っている、という内容です。HD現代はすでにフィリピンから受託した護衛艦2隻について保守サービスを提供しているそうです。
本命は米海軍からの受託と思われます。
2月と4月に米海軍高位級が造船所を見学したり、韓国の防衛事業庁が米国側と艦艇事業の維持・保守分野の協力案などを議論しているという話が出ていたようです。
しかしどうやら最近、韓国は選考から漏れる可能性が高くなりました。技術不足などではありません。もっと悪いかもしれません。「防空網」が無いのだそうです。
韓国日報の記事からです。記事中に「日本軍所属筋」と書いた部分がありますが、原文（일본 군 소식통）ママを直訳しています。他にも日本関連の発言で「空軍」「海軍」の表記が出てきますが、こちらも原文ママの訳です。
［単独］「韓国の造船所には防空網がない」...米の懸念で73兆ウォンの軍艦整備市場を逃す
（前略）
今年初めまで国内造船業界では米国艦艇MRO*1市場進出に対する期待感が大きかった。2月と4月、米海軍側の高位級人事が相次いで造船所を訪問し、生産工程と製品を見学し、国内造船業者と前・現職海軍関係者らとMROおよび船舶製造協力を議論した。
（中略）
何より圧倒的な韓国の船舶製造能力は期待感を一層高める要因だった。韓国は世界船舶市場の1、2位を争う造船強国の一つだ。一方、米国は最近、海軍力の衰退に対する憂慮と共に、造船製造能力を早急に確保しなければならないという主張が出ている。米国が当然、造船強国であり同盟国である韓国に手を差し伸べるという見通しが出ざるを得ない状況だ。
しかし米国は来たいとは裏腹に韓国だけを眺めていたわけではない。現在基準で世界566億ドル（約73兆ウォン）、2028年には624億ドル（約81兆ウォン）まで成長が予想されるMRO市場を狙った日本とインドが他のライバルとして急浮上したのだ。5月、日本経済新聞は米国が日本の民間造船会社に米海軍艦艇のMROを任せる方案を検討していると報じた。
米国が日本とインドに目を向ける理由は一つだった。日本軍消息筋は17日、「日本の造船所の場合、周辺に有事の際に核心施設を保護するための大型格納庫、空軍機などの防空体系が設けられている」とし、「造船所は海軍力を保障する核心施設であるため、設計段階から防空体系を軍当局と協議する」と述べた。インドの場合も軍の防空網支援とともに造船所レベルで迎撃システムを構築しているという。韓国の弱点が彼らに長所として作用したわけだ。米国側は最近、韓国軍にこのような憂慮を伝えたという。
韓国軍も造船所地域の防空網体系が脆弱だという点を認めながらも解決策を出せずにいる。防衛事業庁関係者は「最近、造船業者らが国家重要施設合同防御態勢診断調査を行い対応体系を議論している」としながらも、現在、具体的な防空体系が用意されてはいないと話した。
（中略）
匿名を要求した防衛産業専門家は「韓国造船会社は米国同盟国の中で唯一韓国が国防調達協定（RPD）の未締結国であり、価格競争力でも遅れかねない構造」とし「制度的支援が後押ししていない状態で郡の協力も弱く先取りできる市場を逃している」と憂慮した。
韓国日報「[단독] "한국 조선소에는 방공망 없어"... 美 우려에 73조 군함 정비 시장 놓친다（［単独］「韓国の造船所には防空網がない」...米の懸念で73兆ウォンの軍艦整備市場を逃す）」より一部抜粋
「韓国の弱点が彼らに長所として作用したわけだ」...この感覚はすごく不思議。弱点ってのは、相手の弱みになる部分ですよね。
日本とインドは韓国の弱点だから備えていたわけではありません。「当たり前のことを当たり前として準備していた」だけのことです。
これは「弱点」ではなく、ただの韓国のミスでしょう。サッカーの試合でGKが退場になった場面でゴールを入れられて「弱点を突かれた」とか言います？
また、協力が得られなくて「先取りできる市場を逃している」と分析するのも少しズレた認識のような気がします。造船技術以前に備えが基準に達していなかったという話に思えます。
そもそもどういう「協力」を求めているか、というのもありますが。インドのように造船所に迎撃システムを組み込むのは今すぐにどうこう出来る話ではないです。日本のように緊急避難用の格納庫を用意することは出来るでしょうが、それこそ造船所レベルでやることであって、防衛事業庁や軍が介入できることでもないように思います。
そもそもの想定が甘かったんですね。これも「パリパリ（早く早く）」の影響でしょうか？
*1:Maintenance Repair Overhaul：定期的な保守点検修理
