「クアッドの拡大計画はない」という話

米韓首脳会談において注目されている内容の一つとして、韓国に対するクアッドへの参加要請の有無があります。
中国の手前、韓国としてはクアッドへの態度をはっきりさせることは負担になります。出来れば触れてほしくない(はっきりさせたくない)所なわけです。
韓国メディアとしてもそこは分かっているようで、米会首脳会談を前に行ったキャンベルさんとのメールインタビューで「クアッド参加国拡大計画」の有無を尋ねたそうです。そこで「拡大計画は無い」と言質を引き出したのですけれど、捉えようによっては「クアッドはそもそも4ヵ国による集まりで韓国は関係ない」とも「参加受付は締め切った」とも取れるような少し微妙な言い方です。


国民日報の記事からです。

カート・キャンベル米調整官「現時点でクアッド拡大計画はない」


カート・キャンベル米国ホワイトハウス国家安全会議(NSC)インド・太平洋調整官は「現時点でクアッド(Quad)を拡大する計画はない」と明らかにした。

聯合ニュースは現地時間の18日、キャンベル調整官との書面インタビューで「韓国を含め、クアッド参加国を拡大する計画があるのか」という質問にこのように答えたと19日、報道した。

(中略)

報道に寄るとキャンベル調整官は「米国、豪州、インド、日本のクアッドは民主主義が各国国民と、さらに広い世界のために共に何が出来るのかを示すために設立された」とし「(拡大するなら)まさに我々は名前を変えなければならない」と言及した。

ただし「自由で繁栄するインド・太平洋支持、という私たちの共同の価値は域内の多くのパートナーによって確かに受け入れられている」とし「我々は域内の協力拡大を続ける方法があると考え、これには韓国、東南アジア諸国連合ASEAN・アセアン)と域内の他のパートナーとの協力を含む」と述べた。

米国はクアッド国を中心に、外交はもとより経済分野でも協力を加速させている。バイデン政府は発足直後「中国牽制」を掲げ、クアッド外相会議に続き、クアッド首脳会議まで開催するなど、4カ国の結集に乗り出している。

(中略)

このような脈絡で、米政府が韓国をクアッドに参加させて中国県政の隊列に参加させようとしているのではないか、という疑問が提起されてきた。

(後略)

国民日報「커트 캠벨 美조정관 "현시점 쿼드 확대 계획 없다"(カート・キャンベル米調整官「現時点でクアッド拡大計画はない」)」より一部抜粋


キャンベルさんの言う通りであるのなら米韓首脳会談でクアッド勧誘(圧迫?)が行われることはないのでしょう。まあ、クアッドだけが選択肢ではないのでしょうけれど。

「対中国」に限定した外交政策の上では、韓国にとってクアッドに参加しなくて良いというのは一見有り難いように見えるのですが、クアッドはより広範囲の分野での協力拡大が進められているために、長い目で見ると同じ同盟国であってもクアッド参加国と非参加国とで待遇が違ってくる可能性は否めません。
そのため「乗り遅れ」を心配する以下のようなコメントもあります。

今からクアッドに入ると言っても米国が受け入れないという。クアッドは単なる軍事安保協議体を超え、第4次産業の方向性を決める産業技術標準協議まで扱い始めた。クアッドは欧州連合とも連携する。米国+欧州+カナダ+豪州+日本+インドが使う技術標準 VS 中国+ロシア+北韓パキスタンが使う技術標準のうち、どちらが良いかは3歳の子どもでも分かる。当然、米国が主導するクアッドに入って4次産業の新標準制定に韓国が主導的に参加し、韓国の持ち分を得なければいけないのに、ムン・ジェイン運動圏政権によってこれを逃した。


このコメントが指摘している通り、一言で「中国牽制」と言っても安保、経済だけでなく産業の分野も含まれるわけです。
いつの時代も「標準ルール」を作る側が有利になっているんですよね。