韓国の学生は情報から「事実」と「意見」を区別する評価能力が低いという話

OECDは3年に1度、加盟国の15歳を対象に、学習到達度調査(PISA)として文章読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの調査を行っています。(「リテラシー」とはざっくり言うと「情報を理解、分析して適切に活用する能力」のような意味です)
OECDは「21世紀の新しい識字」として、単に文章を読むだけでなく、書かれた情報の信頼性を判断する能力の重要性を指摘しています。

直近では2018年に行われた調査の結果から、韓国の学生は読解力が高いにも関わらず、その情報の真偽や「事実」と「意見」の違いを評価する能力が低いことが分かったそうです。


ハンギョレの記事からです。

フィッシングメール分からない?...韓国青少年の「デジタル理解力」OECD底辺の「衝撃」


韓国の青少年たちのデジタル理解力(デジタルリテラシー)が経済協力開発機構OECD)の学習到達度調査(PISA)で底値を記録していることが分かった。

(中略)

経済協力開発機構が3日(現地時間)に発表した<PISA 21世紀の読者:デジタル世界における文章力開発>報告書によると、韓国の満15歳の生徒(中学3年、高校1年)たちは詐欺性の電子メール(フィッシングメール)を識別する力量評価において、経済協力開発機構諸国の中で最も低い水準を記録した。
フィッシングメールの有無を識別し、情報の信頼性を評価するテストではデンマーク・カナダ・日本・オランダ・イギリスの学生が最も高い水準だった一方、韓国はメキシコ・ブラジル・コロンビア・ハンガリーなどと共に最下位集団に分類された。

また、韓国の学生たちは与えられた文章から事実と意見を識別する能力でも最下位を記録した。経済開発機構加盟国の平均識別率が47%であるのに対し、韓国の学生は25.6%に留まり最下位だった。これと関連の深い「情報が主観的であるか偏向的であるかを識別する方法について教育を受けたか」と尋ねる調査でも、韓国はポーランド・イタリア・ギリシア・ブラジルなどと共に平均以下のグループに属し、学校でデジタルリテラシー教育がきちんと行われていないことが明らかになった。

(中略)

読解力評価に重点を置いて行われた2018年のPISAで韓国は読解力の分野での点数がOECD平均(487点)より高い514点で上位圏(37ヵ国中5位)を記録したことが分かったが、今回の発表で韓国のデジタル識字力に関する教育が下位圏であることが分かった。

(中略)

情報の信頼性を識別する調査は生徒らに対し、有名モバイル通信会社の名義を詐称したフィッシングメールを送った後、「フォーマットに合わせて利用者情報を入力すればスマートフォンがもらえる」というリンクに反応する態度を調査する形で行われた。事実と意見を識別するテストは設問を提示した後、5つの問題から評価する国語の試験形式で行われた。

(中略)

OECDは報告書で「インターネットのお陰で誰でもジャーナリストや発行人になることが出来るが、情報の真偽を明確に区別しにくくなった」とし「21世紀の文章力は知識を自ら構築して検証する能力」と明らかにした。OECDは「情報が多くなるとほど読者は不明確さを探索し、観点を検証する方法が重要になる」と指摘した。

(中略)

国内でも最近、文章力教育への関心が高まっている。映画評論家が<寄生虫>を紹介した短い文章で書いた「明徴」や「製織」という単語に対する反応と「三日」が「四日」と誤解される場合なども話題だった。

(中略)

スマートフォンソーシャルメディアを通じ、フェイクニュースや偽操作情報の影響力が増大し、コロナ19関連の間違った情報が早いテンポで広まっている中、ユーザ自らが情報の真偽を判別するデジタルリテラシーの必要性が高まっている。

(後略)

ハンギョレ「피싱 메일 몰라?…한국 청소년 ‘디지털 문해력’ OECD 바닥 ‘충격’(フィッシングメール分からない?...韓国青少年の「デジタル理解力」OECD底辺の「衝撃」)」より一部抜粋


韓国メディアではたびたび「機能的文盲」と話題になることがあります。文章は読めているのに、その「内容」が理解できない状態を指します。
この手の報道のときには、個々のケース(三日を四日と勘違いした、とか)については触れられるのですが統計データなどが示されたことはありませんでした。

しかし今回のPISAの結果を見るに、読めていないわけでも理解できていないわけでも無いようなので「機能的文盲」ではないのかもしれません。
読めている、理解できている...でもその情報が「事実」なのか「根拠」は何かなど、論理的に情報を整理出来ないということではないでしょうか?
もしそうなら媒体がデジタルかどうかは関係ありませんね。「デジタルリテラシー」以前に、少し前に日本で流行った「ロジカルシンキング」や「クリティカルリーディング」の訓練で改善される可能性が高いように思います。(そういう意味では記事の視点もズレてますね)

また語彙力低下により、その単語の意味が後の文章に「どのように影響しているのか?」が把握できないために文章全体の構成が掴めない、といった可能性もあるのかもしれません。

下の図はPISAの報告書からで、「事実」と「意見」を区別する能力と読解力の関係を表しています。横が読解力で縦が「事実」と「意見」を区別する能力です。

f:id:Ebiss:20210520191754p:plain:w450


韓国は右下。読解力はOECD平均を超えているのに、「事実」と「意見」を区別する能力は平均に遠く及びません。(ちなみに、日本は数字の13の位置。ほぼ相関係数と一致)

このことから韓国人(青少年に限定せず全体的に)の文章理解の特徴として、文章から「事実」を読み取る能力が低いという仮説が立てられます。
慰安婦」「徴用工」...最近では福島の処理水放流に至るまで、日本側が「事実」として提示する情報がことごとく伝わらないのもこのせい?と思えなくもないですね。

ちなみに日本の結果は...読解力504点(11位)、数学的リテラシー527点(1位)、科学的リテラシー529点(2位)となっています。
2012年以降、読解力が右肩下がりで落ちています。読解力は9段階評価なのですが、最低レベルの1に分類された低得点者の割合が有意に増えているそうなので、その点少し気になりますね。

読解力の問題が気になる人はこちらから日本人生徒向けの問題文(と答え)を確認出来ます。「事実と意見を識別するテスト」もこちらに入っています。
問題文のすぐ下に回答が表示されているので、解いてみようと思う場合は縦幅に合わせて表示すると見えちゃいます。気をつけてください。