検察から捜査権を完全に剥奪する「検捜完剥」の話

ムン政権の政策の一つである検察改革の集大成である「刑事訴訟法検察庁法改正案」として国会に提出されています。(ムンさんの任期中にこの法案が通るかは疑問)
これには検察から捜査権を剥奪する内容が含まれています。現在捜査中のものは全て警察に引き継がれるとのことです。
検察改革というより、警察強権化のように思えます。
韓国の弁護士会はこれについて「検察捜査権剥奪は現政権勢力の自己防衛用の立法だと疑われるに十分」と批判していて、朝鮮日報は「文在寅・李在明擁護法」と書いています。

この法案が出されるときに一時期「諸外国では検察は捜査権を持たないのが一般的」という話が出たことありました。もちろんそんなことはないんですが、主要国の検察の捜査権のあり方を分かりやすくまとめてある記事があったので紹介します。

 



世界日報の記事からです。

主要国家の捜査・基礎の完全分離は稀だ[『検捜完剥』衝突]


「捜査専従機関と起訴専従機関の分離は大韓民国の長年の課題であり、世界的な傾向を示している」

検捜完剥(検察捜査権完全剥奪)の先頭に立った共に民主党のパク・ホングン院内代表は19日、国会で開かれた院内対策会議でこのように述べた。捜査・起訴の分離が多数の事例というのは民主党が「検察捜査の公正性不足」とともに検捜完剥を推し進める主な名分だ。

20日法曹界によると米国やドイツ、フランス、日本、英国などの主要国家のうち民主党が推進する検捜完剥のように、捜査と起訴が完全に分離られた例はまれだった。

米国連邦および一部の州の検事は重要犯罪を直接捜査する。ただ韓国と違って警察が操作する事件は警察が、検事が直接操作する事件は検事が、それぞれ逮捕などの令状を請求する。

(中略)

ドイツの検察は警察に対する無制限の指示権を持つ。検察が独占的に令状請求権、捜査終結権も持っている。「フォルクスワーゲン燃費操作疑惑」、「チェ・スンシル資金洗浄容疑」などもドイツの検事が直接捜査した。

フランスの場合、検察の捜査指揮権を認める。検事は捜査の指揮者として捜査権を持っており、警察に具体的な指示を出すことが出来る。韓国は昨年、検察と警察の捜査権調整施行で検察に6大犯罪捜査権を残す代わりに警察に対する捜査指揮権を廃止したこととは区別される。

このほか日本の検察は腐敗犯罪、企業犯罪、脱税・金融犯罪などについて特別捜査部を3ヶ所、特別刑事部10ヶ所などで直接捜査している。

英国の場合、事件捜査と起訴が警察と検察にそれぞれ分離されている。ただし、経済・腐敗犯罪に効率的に対処するため1988年に捜査・起訴権を全て持つ重大犯罪捜査庁(SFO)を設置し、公訴維持まで担当するようにした。

(後略)



世界日報「주요 국가 수사·기소 완전 분리 드물어 [‘검수완박’ 충돌](主要国家の捜査・基礎の完全分離は稀だ[『検捜完剥』衝突])」より一部抜粋

端折りましたが、ロースクールの教授は、捜査権と起訴権を完全に分離するのが世界的な傾向というのは「フェイクに近い」としています。
捜査権は大きな権力ですから、権力の分散ではなく集中という逆の流れであり違和感を感じます。