「高位公職者捜査処」が民間人記者を捜査対象にしている話

ムン・ジェイン政権は発足後、検察改革と称して検察機関の捜査権縮小に努めていました。代わりに政治家や政府高官の捜査を担当する「高位公職者犯罪捜査処」を設置しています。
ところがこの機関が政治家でも政府高官でもないただの民間人である新聞記者を捜査対象とし、通信会社に通信記録の照会を行っていたことが発覚しました。
朝鮮日報の報道では少なくとも160名の記者らが通信記録の照会を受けたとのことで、高位公職者犯罪捜査処に対して「批判的」な記事を書いた記者がターゲットにされているようです。

 

 

朝鮮日報の記事からです。

取材記者も捜査した公捜処...160名を相手に通信照会


高位公職者犯罪捜査処(公捜処)が裁判所から通信令状を取って通話内訳を確認した状況が明らかになっている。記者を捜査対象とし、着信・発信内訳まで確認したのだが、取材源や情報提供者の身元が明らかに成る可能性があり、懸念の声が高い。また、外信記者たちの通信試料まで確認した事実も知られ、公捜処の公式解明を求める声まで高まっている。

28日、法曹界によると公捜処は最近、裁判所に通信令状を請求しテレビ朝鮮記者2名と中央日報の記者1名に対する通信令状を請求し発行を受けたという。テレビ朝鮮の記者2名は「イ・ソンユン・ソウル高等検察庁長に対する皇帝調査」を報道した。また中央日報記者は「イ高等検察長の控訴状流出疑惑」を報じている。

公捜処は3人の記者いずれも内部捜査の段階で通信令状を取ったという。テレビ朝鮮の記者の場合、イ高等検察長が映っている防犯カメラの映像の場所を検察が知らせたという疑惑(公務上の機密漏洩)を確認するため通話内容を確認したものとみられる。家族の通信資料を照会した事実が明らかになり、公捜処の内部捜査の事実が明らかになった。誰と通話したのか通信社に一々確認したという意味だ。

(中略)

また、公捜処は批判的な立場を示した韓国刑事訴訟法学会会長など役員陣を含めて計160人に対し300回あまりに渡って通信資料を照会したことが分かった。野党などでは無差別調査という評価を出している。

(後略)



「취재기자도 수사 나선 공수처... 160여명 상대 통신조회(取材記者も捜査した公捜処...160名を相手に通信照会)」より一部抜粋

「皇帝調査(황제조사)」の訳はコレで良いと思うのですが...。今年の3月か4月頃にソウル高等検察庁長のイ・ソンユンさんが公捜処長のキム・ジンウクさんに面談するため公捜処を訪問した際、キムさんは訪問の記録が残らないように公捜処の公用車をイさんのために手配したとされています。こうした配慮を揶揄しているようです。

野党議員に限定すると、全体の約7割の議員が何らかの通信照会を受けていたことが分かっています。もう手当り次第という感じ。



 

 

ニュース1の記事によると、朝日新聞の現地記者も照会を受けていたようです。

朝日「韓国公捜処、自社記者の通信資料も照会...理由を明らかにせよ」


ジャーナリスト・政治家などに対する査察疑惑に包まれた高位公職者犯罪捜査処(公捜処)が外信記者に対する通信資料を照会していたことが確認された。

30日付けの朝日新聞は公捜処が自社のソウル支局韓国人記者1名の身元情報を収集したと報じた。
この記者はこの1年、捜査機関から本人に関する個人情報の照会があったかどうか、20日に該当通信会社に情報公開を申請し、26日にその結果の通知を受けた。
通知書には公捜処が今年7月から8月にかけて計2回にわたり指名、住民登録番号、携帯電話の加入日など通信資料を照会したという内容が含まれている。
照会の理由は「電気通信事業法第83条により裁判、捜査、刑の執行または国家安全保障に危害を及ぼすことを防止するための情報収集」であったという。

(中略)

一方、朝日新聞は同日の記事で「ムン・ジェイン政府や公捜処に批判的な報道をした記者らが公捜処の通信記録照会対象に多数含まれている」とし「ムン・ジェイン政府の検察改革で発足した公捜処は政治家、高位公職者、司法関係者らを対象にした捜査権を渡されたが記者の場合、公捜処の捜査対象に含まれない」と説明した。



ニュース1「아사히 "한국 공수처, 자사 기자 통신자료도 조회...이유 밝혀라"(朝日「韓国公捜処、自社記者の通信資料も照会...理由を明らかにせよ」)」より一部抜粋

韓国大統領府は公捜処は独立した機関であるため「(大統領府としての)立場を出す予定はない」とのことです。