VOA「韓国政府は立場をはっきりするべき」という話

米下院議長のペロシさんが訪韓していたとき、ユンさんが会わなかったことを当初は一部保守論客の人が「国益に適う」と評価するなどしていましたが、時間が経つにつれて保守系メディアからも「さすがにこれは...」という記事が目立つようになってきました。
しかし保守系メディアは当初は本当に肯定的に報じていました。若干無理していたのかもしれませんが...それにしても楽観的とさえ思えるほどに、何の問題意識も持っていないようでした。
それが急にどうしたのかと言うと、VOAからも「韓国は立場を明らかにすべき」との専門家の声が届けられたからです。

 



VOAの記事からです。

米専門家「韓国、米中間で規則基盤の国際秩序重視を明確にすべき」


米国下院議長の台湾訪問で激化した米中葛藤の中で韓国は法治と原則に基づいた国際秩序を重視する明確な立場を取らなければならない、と米国専門家らが強調しました。

(中略)

クリストファー・ジョンストン元ホワイトハウス国家安全会議東アジア局長は「米国と中国の葛藤が高まる中、韓国が外交的に取るべき道は欧州と日本、豪州など同じ考えを持つ国々と意見を集めることだ」と述べました。

(中略)

ジョンストン元局長は5日、VOAとの電話インタビューで、韓国が法治と規則基盤の国際秩序の重要性、紛争を解決するための武力使用に反対する声を出すことが重要だと話しました。
それと共にユン・ソンニョル韓国大統領もこのような価値の重要性を強調してきたとし「私たちがみな同じ声を出すことが重要であり、そうすれば中国が私たちを引き離すことは非常に困難になる」と話しました。

(中略)

デトラニ元次席代表*1は、ユン・ソンニョル政府は在韓米軍2万8千人が駐留しており、抑止を公約した親しい同盟である米国と、最大の交易相手国である中国の2つの大国を相手にしなければならない状況だと話しました。
しかしユン政府が韓国が「国際的プレイヤー」であることを明確にしたという点を指摘し、韓国が明らかに米国と共にすると考えていると述べました。

(中略)

ただ、だからといっても必ずしも全てに歩調を合わせるべきだということを意味するわけではないと付け加えました。

(中略)

ランド研究所のスー・キム政策分析官も「習近平政権の中国と米国の関係は最低限現状の維持、でなければ緊張が激化するだろう」とし「すべての主要事案において同盟国が意見を集めることが重要だ」と強調しました。

(中略)

キム分析官は「岸田日本総理がペロシ議長に会い両国間の連帯を示した」とし「ユン大統領の最近の決定は、一部の米国高官に韓国を信頼できる同盟国として信じることが出来るかどうか疑問を持たせた可能性がある」と述べました。
これはまた、韓国が同盟から得られるものに影響を与える可能性があるとキム分析官は述べました。
さらに「韓国は当然、中国を意識し続けなければならないが、圧迫に屈服するならユン政府も前政府と変わらないと言うメッセージを伝えるだけだ」と付け加えた。

(中略)

専門家たちは9日に中国で開かれる韓中外相会談で韓国政府の明確な基調を示すことが重要だと話しています。

ジョンストン元局長は特にパク・ジン韓国外交長官がペロシ議長の台湾歴訪で中国が武力デモを行うことに対する強硬なメッセージを送らなければならないと述べました。

(後略)



VOA「미 전문가들 "한국, 미중 사이서 규칙 기반 국제질서 중시 분명히 해야"(米専門家「韓国、米中間で規則基盤の国際秩序重視を明確にすべき」)」より一部抜粋

「バランス外交」とか言っている時点でお察しと思いますが、韓国は日本以上に「事なかれ」が重視される場合があります。強者の喧嘩に巻き込まれたときです。
「クジラのケンカにエビの背が裂ける(고래 싸움에 새우등 터진다)」との諺がありまして、「強者のケンカに巻き込まれたら弱者が被害に合う」との意味になります。こういう時は出来るだけ息をひそめてやり過ごすのが賢いやり方でしょう?

米中対立における韓国の立場というのがまさにそれで、今回のペロシさんの訪韓にユンさんが夏季休暇を当ててスルーしたことを保守陣営は本気で「巧くやった」と思っていたのではないか。私はそんな風に思っています。
そして、恐らく今までの米国であればそうした韓国の甘えを許容してくれていたはずです。
でも最近、米国と中国の国力の差はあらゆる面で縮まってきています。米国にもはや韓国を甘えさせてあげられる余裕はありません。
VOAが韓国に対して厳しく現状認識を求める記事を載せたことで楽観視していた保守系メディアも「あれ?」となったのではないでしょうか?それで慌てて政府の批判に回ったのだとしたら呆れますが...。



*1:6者協議米国次席代表