「外交」は「例外扱い」を得る手段という話

米国のインフレ削減法とは、車両の最終組み立て地によって、EV車の場合最大で7500ドルの税控除を受けられる制度です。8月17日から有効になっています。1ドル135円とすると控除額は100万を越えますから結構大きいですよね。

最終組み立て地は北米(米国、カナダ、メキシコ)で行われていることが要件となっており、エネルギー省の公表した資料により日本車やドイツ車などの一部車種はすでに要件を満たす可能性が高いものが判明しています。
しかし韓国現代自動車は主要自動車メーカーの中で唯一、一車種も要件を満たさないことが判明しました。なぜなら現代自動車は北米で組み立てを行っていないからです。
ある韓国メディアはこれを「後頭部」として報じました。5月のバイデンさん訪韓時に発表された韓国企業の大規模投資に「Thank you Korea」を叫んでおいてこの仕打ちか、というわけです。

 



時事ジャーナルの記事からです。

米国は後頭部、日本は虎視眈々と...ユン政府どうする


(前略)

米・中覇権戦争の真っただ中にい立つことになった韓国が、北韓問題と共に絡み合った難題をどのように突破していくのか、政府の外交力が本格的な試験台に上がった。

22日、外交関係者によると、パク・ジン外交部長官は最近、トニー・ブリンケン米国務長官に電気自動車補助金支援対象から韓国産車両を除く「インフレ削減法」施行に懸念を示し、問題を提起した。

パク長官はインフレ削減法施行で韓国企業が被る打撃と被害に言及し「柔軟な履行」を促したと伝えられた。既にバイデン大統領が署名したが、細部内容で調整の余地がある点を勘案したのだ。パク長官はこれに先立ち国会で該当事案と関連して現代・起亜自動車の電気自動車補助金が中断される場合、韓米自由貿易協定(FTA)内の国民待遇原則と世界貿易機構(WTO最恵国待遇原則などに違反する素地がある点に言及し、対応策を講じると明らかにした。

(中略)

ユン・ソンニョル政府にバイデン政府のこのような動きがさらに痛いのは、わずか3ヶ月前のバイデン大統領の訪韓当時「両国間の緊密な絆と革新、協力」を約束したためだ。
バイデン大統領は今年5月に訪韓し、米国に並んで大規模な投資を決定したサムスン電子現代自動車グループに謝意を表明し、莫大な「投資の包み」を抱いて発った。米国の今回の法案通過を巡り「韓国が後頭部を殴られた」という評価が出てくる理由だ。バイデン訪韓当初にも「韓国は得たものがない」との批判が出たが、韓国産電気自動車補助金支給除外で「得」どころか「失」だけが大きくなったことになった。

ユン・ソンニョル大統領が重ねて関係回復に手を振った日本も冷ややかな反応だ。同盟と協力に力を入れてきたユン大統領に向けて日本はこれ見よがしに韓国を刺激する言動を続け「虎視眈々と」機先制圧を狙う雰囲気だ。

岸田文雄日本総理は15日、A級戦犯が合祀された靖国神社玉串料を奉納し、官僚たちは神社参拝を強行した。ユン大統領が光復節の祝辞を通じて「未来志向的日韓関係」を叫んだ日に日本政府が即座に冷や水を浴びせたわけだ。

(中略)

日本メディアによるお日本の官僚はユン大統領就任を「絶好の機会」と考えているとみられる。自国に友好的立場を取っているユン大統領を通じて強制徴用賠償や慰安婦問題などを有利に解決できるという判断をしているということだ。

ユン大統領が「就任100日」記念記者会見で強制徴用被害者賠償問題に対して「日本が憂慮する主権問題の衝突なしに債権者が補償を受ける方案を講じている」と明らかにし、このような見解はさらに強化された。日本メディアはユン大統領が実際に出す「カード」に注目し、日本に有利な解決方案模索を喜んだ。

日本が韓国を輸出管理優遇対象である「ホワイトリスト」(白色国家リスト」に復帰させず、韓国側の動きを見守るのも「有利な高地」のための神経戦を続けるという意味と解釈される、産経新聞は複数の日本政府関係者を引用して、4日に開かれた韓日外相会談でパク長官がホワイトリスト復帰と半導体材料3品目の輸出管理解除を要求したが日本が応じなかったと報道した。

(後略)



時事ジャーナル「미국은 뒤통수, 일본은 호시탐탐…尹정부 어쩌나(米国は後頭部、日本は虎視眈々と...ユン政府どうする)」より一部抜粋

「外交」という大きな括りでは同じなのかもしれませんが、米国のインフレ削減法と対日外交を同列に扱うのは違うのではないか、と最初に読んだときに違和感を覚えました。
が、よくよく考えると、あるフィルターを通してみたときになぜこの2つが同じ問題として扱われるのか納得がいきます。

それは「例外」です。
米国のインフレ削減法は「最終組み立て地が北米のもの」を税控除対象とするシステマチックなものです。それに対して記事は「なぜ韓国を例外にしてくれなかったのか」と言っています。
対日外交においては日本が有利な立場(日本に対して友好的態度のユンさん)を利用して徴用訴訟などで「司法判断の例外を引き出そうとしている」という主張です。

つまり韓国にとって「外交」とは相手からの「例外扱い」を得るためのもの、ということです。
「米中バランス外交」は米中間での等距離外交という意味ではなく「米国からも中国からも例外扱いをしてもらう」という意味ということです。そりゃ、上手くいくはずないですよね。