韓国人から見た「日本が韓国の徴用賠償要求を理解できない理由」の話

日本が韓国の徴用賠償要求を理解できない理由を考察するコラムがありましたので紹介します。

ただ、出オチ感がすごいです。最初のパラグラフで著者は「ある結論」を出していて、それこそが日本が一貫して主張し続けているものなのですが、それを脇に置いて「日本が徴用賠償要求を理解できないのは(一度決めた)規則と社会合意を重視するため」であり「日本も認識を変えなければならない」に着地します。
日本「も」なのは、一応、韓国に「法的矛盾解消」の措置を促しているからです。ただ、具体的なことは何も書いてません。

 



国際新聞の記事からです。

【CEOコラム】新日本紀行と韓日関係


先週、2年半ぶりに東京に行ってきた。韓日関係が大きな困難に直面しているため、できるだけ多くの専門家たちに会って意見を聞こうと努めた。概してユン・ソンニョル新政府に対して高い期待感を持っていたが最大懸案である強制徴用被害者問題に対しては依然として強硬な立場を維持していた。一言で韓国は「なぜ1965年の韓日基本条約と韓日請求権協定ですでに解決された問題を再び持ち出すのか」ということだった。経済的にすでに先進国になった韓国が国家間の約束を一方的に破棄しようとするような要求をするのはその地位に合わない、という不満の声も聞かれた。日本はこの問題を徹底的に法的次元で眺めている。もちろん、韓国の被害者たちも最高裁判決を通じて法的主張をしているが、その根底には歴史認識の問題が敷かれている。加害日本企業に謝罪を要求しているのがまさにそのような理由だろう。

もちろん、専門家たちとの意見交換が日本の立場を理解するのに大いに役立ったが、出張期間中に垣間見ることになった平凡な日本社会の日常が、彼らの思考を臨場感を持って理解するのに大きな参考になった。

#1. 東京羽田空港の風景だ。飛行機から降りると、待っていた地上職員がすべての搭乗客に右方向に一列に並んで歩くよう誘導した。なんと20分以上歩くとようやく検疫デスクと入国審査台が目に入った。ところが、よく見てみるとどういうわけか、先ほど降りた飛行機ゲートの近くに戻って来ているではないか。空港を一周回ってもとに戻ったわけだ。右ではなく左に行っていればすぐに到着できたはずなのに、なぜ反対側に歩かせたのかと聞いたら双方向に歩かせると新型コロナウィルス感染症の感染リスクがあるからだと言われた。

#2. ホテルに到着してテレビをつけると、新型コロナウィルス感染症の感染者管理をコンピューターで行っている区役所を紹介していた。

(中略)

日本の友人にデジタル化が遅れた理由を尋ねると個人情報保護のためには長い歳月と過程を経て立証された伝統的方式に固執するしかない、と話した。日本では希望者以外に住民番号を強制的に割り当てる制度がない。デジタル技術を活用した行政的便利さより個人情報保護に、より大きな価値を置いたことから出た政策だ。

#3. 食事をするためにレストランに入ると依然としてカメラ体温計で温度を測定し手指消毒剤を使うよう勧められた。そして食卓の上には透明アクリル仕切りが置かれていた。

(中略)

#4. 今年7月に実施された参議院選挙の結果について現地のジャーナリストと対話を交わし、日本では投票する際に候補者の氏名を投票用紙に直接筆記具で記入するという話を聞いた。そのため電子開票は不可能ですべて開票するという。完璧性の側面で機械より手開票が正確だという信頼を持っているためだということだ。

(中略)

結論的に言えば、日本人は定められた規則と社会的合意によって構築された伝統を非常に重視するということだ。現代日本社会が非常に保守的にならざるを得ない理由だ。

このような日本的思考は強制徴用者賠償問題を再び持ち出す韓国を理解不可能な状態にする。しかも2015年の韓日慰安婦合意を実質的に無効化した先例があるため、韓国に対する不信の強度が非常に高い。これまで少なくとも歴史問題に関して韓国が道徳的優位を占めていたが、約束を守らない韓国という主張に、むしろ日本が被害者になったような状況が演出されている。

どうすればこのような思考の衝突が克服できるだろうか。非常に難しい問題だが、韓国は法的矛盾解消のための措置を検討することで、また日本は無条件に韓国の責任として責め立てるのではなく、自ら融通性を発揮できる空間を設けることで接点を見出す努力を傾けなければならない。

(後略)



国際新聞「[CEO 칼럼] 新일본기행과 한일 관계(【CEOコラム】新日本紀行と韓日関係)」より一部抜粋

何を主張しているか分かりますか?この人は日本側が一貫して「法的次元」で見ていることが分かっていながら、日本が「韓国の主張する」徴用賠償要求を理解できないのは「日本社会が日常的に型に嵌めた対応しか取らないからだ」と言っているわけです。
事例として挙げられている日常にしても言いがかりとも受け取れる難癖ですし、その根底に「韓国=先進的、日本=後進的」の印象付けがあるように思えます。しかも一部事実誤認してます。
最後は削りましたが首脳会談の必要性を説いています。トップダウン形式で一気に解決してしまおう的な?慰安婦合意がそれでしたのにね。

著者は韓国に「法的矛盾」が生じていることを認めながら「日本も~」を主張しています。
つまり著者は「法的次元」の視点など、本質的な問題(価値)ではなくもっと融通を利かすべきだ、と。これが「情」の国の本音というわけでしょうか。もう滅茶苦茶です。

まあ、逆に言うと法的根拠で日本側の主張を崩すことが出来ないということを吐露したとも取れますが。
あと、どうでもいいんですが「韓国が強制徴用者賠償問題を再び持ち出す理由」については何の説明もありません。

ちなみに事実誤認は#2の「日本は希望者以外に住民番号を強制的に割り当てる制度がない」です。「マイナンバー」と「マイナンバーカード」を完全に混同しているのだと思われます。