韓国経済の危機(?)を読む5つのシグナルの話

韓国の経常収支が赤字との記事を昨日お伝えしました。つまり輸出が鈍っているということです。為替安でエネルギー価格高騰によるマイナスを吸収できない、とか原因はここでは置いておきます。結果としてが「輸出(貿易)不振」というのが現実としてあります。

もう一つ韓国が抱えている爆弾に家計負債があります。今年の6月時点でGDP比104%と世界1位です(増加速度も速い)。家計負債がGDPを超えている国は現時点では韓国が唯一。同時期の日本の家計負債は59.7%、2位の米国でも76.1%です。改めて規模の大きさが分かります。

こうしたこともあって金融危機や為替危機関連の記事が増えています。
これから起こるかもしれない経済危機の兆候を読み解く5つの信号をチェックしている記事があったので紹介します。

 



韓経ビジネスの記事からです。

通貨危機金融危機は異なる?危機を読む5つの信号[暗雲立ち込めたグローバル経済③]


チュ・ギョンホ経済副首相兼企画財政部長官は9月30日、フィリピン・マニラで開かれたアジア開発銀行(ADB)年次総会に出席し、「国際通貨基金IMF)の通貨危機金融危機の時のように、韓国で経済危機が再現される可能性は非常に低い」と強調した。

一方、家計負債が韓国経済を揺るがす震源地だという分析も出ている。シティ・グループのジョアンナ・チュア・アジア担当主席エコノミストは10月3日、ブルームバーグTVに出演し、家計負債で景気低迷を迎える国として韓国を選んだ。

危機触発の理由を内部で探すか、外部で探すかの違いで意見が分かれる。1997年の通貨危機、2008年の金融危機の時とは異なる衝撃と、これを防ぐ緩衝材は何だろうか。韓国経済の危機を読み取るシグナルを点検した。

1. 借金で建てた家
今年の家計負債は歴代最大値を記録した。韓国銀行によると今年第2四半期の家計信用残高は1869兆4000億ウォンで2003年の統計集計以来、歴代最大値を記録した。通貨危機直後の家計負債は184兆ウォンで金融危機の時は607兆ウォンに過ぎなかった。

(中略)

問題は家計貸出の80%以上が金利引き上げに脆弱な変動金利という点だ(7月基準)。韓国銀行が今年4回にわたって基準金利を引き上げ物価上昇に乗り出し貸出金利も急騰した。都市銀行の貸出金利の上限が年7%を超え、チョンセ資金貸出と信用貸出を受けた貸出者の月の利子償還額は2年で最大2倍に跳ね上がった。
このうち、金利が上がるほど償還能力が急激に落ちる一般家計多重債務者は451万人だ。彼らの債務不履行が急増すれば実体経済と金融経済全般に打撃を与えかねない。

(中略)

2. IMF以来、最悪のインフレ
家計が融資金を返済するために財布のヒモを引き締めている中、物価は通貨危機以来24年ぶりに最悪を記録した。6月に6%を超えた物価上昇率は依然として5%台後半に留まっている。韓国銀行は今年の消費者物価上昇率が1998年(7.5%)以降、最も高い5.2%を記録すると推定した。記入機器に見舞われた2008年の物価上昇率は4.7%だった。

3. 金利ジレンマ
このような状況で韓国銀行は金利引き上げのジレンマに陥った。家計負債の負担を減らすためには金利を引き下げなければならないが、急騰した物価と変動性が大きくなった外国為替市場を考慮すれば金利を引き上げなければならない。Fedが最近3連続でジャイアントステップを踏み今年の米国基準金利はゼロ水準から3~3.25%まで上がった。
米国の金利引き上げ歩調に合わせ韓国銀行も今年2.5%まで金利を引き上げた。年末まで追加で金利引き上げも続くものと予想される。

(中略)

基準金利が上がれば家計だけでなく企業の負担も大きくなる。全国経済人連合会基準金利3%時代が開かれれば大企業の59%が営業利益で金融費用を負担できなくなると推算した。
チュ・ウォン現代経済研究院研究室長は「家計負債増加と消費萎縮、企業の資金調達が難しくなるすべての背景には結局、金利引き上げが位置する」として「為替レート急騰もやはり米国の高金利で、基軸通貨であるドルの魅力が高まりウォン・ドル市場まで影響を与えるため、今後Fedが基準金利をどれだけ引き上げるかにより韓国経済が直接的な影響を受ける可能性が高い」と話した。

4. 「危機防波堤」外貨保有高は十分
危機信号があちこちから出ているが政府は通貨危機金融危機の時のような経済衝撃はないだろうと一蹴する。グローバル経済衝撃の「危機防波堤」である外国為替保有額が十分で、対外健全性が通貨危機金融危機の時と比較して良好だという理由からだ。
チュ副総理は「金利引き上げは一定期間になれば再び正常な水準の調整が起きる」として「中国は外国為替保有額が世界1位だが、経済規模対比でみればGDPの18%水準」とし「韓国は経済規模の25%を外国為替保有額として持っている」と話した。
外貨準備高は9月末基準で4167億7000万ドルだ。金融危機だった2008年の2012億ドルと比べると2倍を超える。

(中略)

5. 6ヵ月以上の貿易赤字IMF以来初
経済の大黒柱の役割を果たしていた輸出にも危機の信号が出た。これまではウォン安が進めば韓国企業の価格競争力が上昇し、貿易収支黒字に繋がった。しかし今はドルが一人で勢いを増し、他国の通貨価値が同時に下落した。これは韓国企業の競争力増加に繋がりにくく、むしろ全世界の輸入物価が上昇し世界の貿易量の減少に繋がりかねない。

9月の貿易収支(輸出額 - 輸入額)が37億7000万ドル(約5兆4300億ウォン)と赤字を記録した。これは6ヵ月連続の赤字だ。韓国が半年以上連続して赤字を出したのはIMF通貨危機前の1997年5月以来、25年ぶりのことだ。輸出の柱だった半導体は9月にも前年同月比5.7%減少し、地域別では対米輸出が16%増加しただけで、中国(-6.5%)、独立国家共同体(-29.9%)、EU(-0.7%)がいずれも不振だった。



韓経ビジネス「외환위기·금융위기와 다르다? 위기를 읽는 5가지 신호 [먹구름 낀 글로벌 경제③](通貨危機・金融危機は異なる?危機を読む5つの信号[暗雲立ち込めたグローバル経済③])」より一部抜粋

独立国家共同体」と訳した個所は原文が「독립군가연합(独立軍歌連合)」となっているんですが、多分誤字です。

為替危機と金融危機の違いは説明されていないので簡単に触れておきます。

まず為替危機は通貨危機と同じです。通貨が暴落することです(原因は何でもいい)。これによって金融機関や企業が破綻すると金融危機に発展します。
阻止するには通貨当局による通貨防衛(介入)しかありません。弾(外貨準備)が必須です。何度か触れていますが、韓国の弾は実弾ではなく空砲だった過去があります。

金融危機では企業や銀行の破綻などをきっかけに金融機関の資金繰りが困難になり(元本や利息が受けられなくなる=不良債権化)、市場の流動性が低下します。そうすると短期金利が上昇してさらに資金繰りが困難(利子が高くてお金が借りられない)になります。連鎖的に次の破綻が起こります。
破綻先への公的資金投入や中央銀行による資金供給、不良債権処理等々で対処します。

あと出てきてませんが債務危機というのもあります。借金が嵩み過ぎて返せなくなることです。「債務不履行(デフォルト)」ってヤツです。

「借金で建てた家」と言っていますけれど、家計負債に含まれるのは別に住宅ローンだけではありません。
最近の基準金利の引き上げを受けて家計負債の増加速度は少し鈍化したらしいです。
それでもニューシースによると、返済が滞る可能性のある高リスク者のうち39.3%の世帯が無職(5万2000世帯)と自営業者(9万8000世帯)で占められているということです。