半導体競争力評価、2年で中国に抜かれた韓国...メモリ半導体の優位性を失うのも時間の問題か?の話

韓国の産業研究院が2020年にまとめた半導体産業の競争力評価では米国(93.4)、日本(78.4)、台湾(75.1)、韓国(68.6)、中国(64.3)の順でした。
しかしこの2年、米中覇権争いからの半導体産業を安保と見なすサプライチェーン再編、各国の半導体産業への開発投資が進み、2022年の競争力評価は米国(96)、台湾(79)、日本(78)、中国(74)、韓国(71)、EU(66)と、韓国が中国に逆転されました。まあ、日本も台湾に抜かれてますけどね。それどころか日本だけ評価点がほとんど変わってないんですけどね。今回は「韓国」の展望ということで日本の件は置いておくとして...記事ではサプライチェーン再編は2025年頃に終わると予想されており、そうなると韓国の半導体産業のグローバル地位に不利となる、としています。

 



アジア経済の記事からです。

[2023半導体展望]半導体競争力、2年間で中にも追い越され...「2025年が分水嶺


韓国が「半導体強国」という現在の位置に安住している間に米中覇権競争と主要競争国の半導体支援法などが国内の半導体業界の地位を脅かしている。半導体産業の構造上、多数の半導体厳選技術を有している米国と、韓国の半導体輸出額の40%を占める中国の間でどちらか一方に路線を決めることも難しく「四面楚歌」に陥る局面だ。

誰よりも米国は果敢に動いている。米議会は今年7月、「半導体と科学法」を可決した。中国との技術覇権競争で勝利するための米国の国家総合科学技術戦略を盛り込んだものだ。同法で米国は2800億ドル(約370兆ウォン)を半導体産業に投入することにした。

(中略 ※「チップ4」や中国、EUの取り組みに触れ)

覚醒した日本の動きも注目されている。一時期、50%以上のシェアで世界半導体市場を席巻した日本は今や半導体を国家戦略産業に指定し、半導体産業の復活に死活をかけている。

グローバル各国が半導体産業の育成に積極的に乗り出す中で、今後グローバル半導体市場の競争がさらに激しくなり、メモリ半導体1位である韓国の地位が揺れかねないという懸念が力を得ている。

最近、産業研究院(KIET)がまとめた報告書によると、昨年の半導体産業の総合競争力を分析した結果、米国(96)が最も高く、台湾(79)、日本(78)、中国(74)、韓国(71)、EU(66)の順だった。韓国はメモリ半導体(87)では高い競争力を評価されたが、システム半導体(63)は比較対象国のうち最下位と評価され、総合評価でも6つの調査対象国のうち5位に止まった。2020年の調査と比べると1年ぶりに韓国と中国の順位が逆転した。2020年の5ヵ国対象調査では米国(93.4)が1位で日本(78.4)、台湾(75.1)、韓国(68.6)、中国(64.3)の順だった。

キム・ヤンパン産業研究院専門研究員は「各国政府の支援政策と主要半導体企業の投資計画などを総合すれば、大体2025年を基点にグローバル半導体サプライチェーンが再編されるものと展望される」として「供給網が再編されれば我が国の半導体産業のグローバル地位に否定的な影響を及ぼす可能性が高くなる」と分析した。



アジア経済「[2023 반도체 전망]반도체 경쟁력 2년새 中에도 추월당해…"2025년이 분수령"([2023 반도체 전망]반도체 경쟁력 2년새 中에도 추월당해…"2025년이 분수령")」より一部抜粋

半導体競争力評価について少し調べてみたのですが、どのメディアもレポートの「結果」部分のまとめをコピペしたものしか載せておらず、産業研究院が何を基準に点数化したのかイマイチ分かりません。
元ネタと思われるドキュメントを見ても基準の細かい部分は一切言及されていないのですが、なんとなく「設計」「製造装置」「素材」「ファウンダリーとしての製造能力」の一つ、あるいは複数に優位性を持っていると高く点数が出るよう評価されているみたいです。


米国半導体産業協会が集計した9月の全世界半導体売上は472億4000万ドルでした。前年同期比と比較して0.5%減です。ほぼ変わりません。
しかしメモリ半導体を主体とするサムスン、SKハイニクスは大きく営業利益を落としています。具体的には今年第3四半期のサムスンの営業利益は前年同期と比べてほぼ半減(-49.16%)の5兆1200億ウォン、同じくSKは約60%減の1兆6556億ウォンです。
この原因としてメディアではこぞって景気低迷とインフレ、中国向け需要の減少などを上げます。しかしそれだと半導体全体の売上は昨年比で誤差の範囲の低下なのにメモリ半導体だけ急減している理由が説明できません。未だにPS5の品薄が続いていることからも分かる通り、世界的に半導体不足は続いています。つまり「(メモリ)半導体強国」韓国の供給と市場の需要が完全にミスマッチ状態なわけです。各国が今、力を入れているのはシステム半導体とその根幹技術開発力です。

メモリ半導体がどうでもいい、というつもりはありませんけれど、メモリシェア1位の今後が気になるのであれば次世代メモリに注目すれば良いと思います。次世代メモリは2031年までに440億ドル規模の市場に成長するという見通しです。
ただ、実はこちらでもTSMCが一歩先んじている印象があります。今年6月に開催された半導体関連のシンポジウムでTSMCは次世代メモリ関連の研究成果の発表を5件(10件中)出してきているそうで、力の入れようを感じます。