「グローバルサプライチェーンは今日の新たな『アチソンライン』」...日本の動きに「韓国の安保に大きな影響を及ぼしかねない」と警戒する話

半導体産業を「安保」と見なすようになって久しいです。
韓国では未だに「経済(=中国市場)」と捉える方が多いとはいえ、諸外国、特に日本の半導体投資の動きを警戒してはいます。ただ、それでもやっぱり「最大市場の中国を捨てるわけにはいかない」を前提と結論に、経済面に偏った見方で論じられることがほとんどです。

そんな中、半導体を韓国安保の要とし、その主導権を奪われることは「国家安保の危機」とするストレートな記事がありました。
韓国の半導体製造拠点と台湾を結ぶラインを「新アチソンライン」と定義し、そこが日本に奪われかねないことに警鐘を鳴らすものです。

それでもやっぱり韓国脳だな、と思うのが日本と韓国が半導体産業で「戦っている」前提となっている部分ですかね。

 



ヘラルド経済の記事からです。

龍仁・平沢は「新アチソンライン」...日に奪われると国家安保の「危篤」[半導体新韓日戦]


「グローバルサプライチェーンは今日の新たな『アチソンライン』と同じだ。半導体は韓国の安保を守る『護国神器』(国を守る神の武器)だ。半導体の主導権を奪われるということは韓国の安保に大きな悪影響を及ぼしかねない」(ヤン・ヒャンジャ無所属議員)

(中略)

半導体工場が密集している韓国の平沢・利川と、今後建てられる龍仁、そして台湾台北を結ぶ境界線は「新アチソンライン」と呼ばれる。過去の米国の極東防衛線のように今は半導体工場ラインが「産業的防衛線」と見なされている。

(中略)

韓国と日本はそれぞれ異なる半導体の強みを持っている。メモリ半導体およびファウンドリ(半導体委託生産)では韓国が相対的優位に立っているが、その基盤となる源泉技術では日本の影響力が大きい。

日本は世界半導体装備市場の35%、素材市場の55%を占める伝統的な「素材・装備・部品」強国だ。過去30年間、製造技術分野では後れを取ってきたが、全般的な半導体サプライチェーン体系では代替不可能な「ハイエンド(high-end)」素材・部品・装備技術で圧倒的存在感を誇示している。韓国と台湾、米国など主要半導体企業は日本の素材・部品・装備業者なしには半導体製造が不可能だと言っても過言ではない。

(中略 ※日本の弱点として半導体製造産業の低迷により先端工程技術が遅れている点と人材需給の問題。)

反面、韓国は30年築いてきた強固な半導体製造技術が後押しされるという利点がある。最近、メモリ半導体状況が多少悪くなったが、以前として全世界メモリ半導体市場の60~70%ほどを占有している。汎用製品だけでなく、最近は人工知能サービスの拡散で脚光を浴びているHBM(高帯域幅メモリ半導体)など高付加価値メモリ市場でサムスン電子とSKハイニクスが90%を占めているという点も注目に値する。

(中略 ※韓国の弱点として素材・部品・装備の面で海外依存度が大きいという点。半導体素材の日本依存度は40.1%、中国17.1%、米国9.3%など。)

半導体産業復興に向けた政府支援と投資においては日本の勢いが恐ろしい。日本が2021年に半導体産業復活を宣言した後、今年6月までに発表した関連予算は1兆円、ウォン貨で9兆2000億ウォンに達する。韓国も最近になって多様な政策を出しているが、グローバル半導体サプライチェーン再編の中で依然として不十分だという指摘が多い。

(中略 ※「ラピダス」設立と米IBMに専門人材を派遣し、10年の技術格差を協力して埋める戦略。)

(中略)

日本にグローバル半導体会社の生産施設を誘致するという計画も早い成果を見せている。米国最大のメモリ半導体マイクロンは5000億円かけて広島工場に新規ラインを増設することにし、台湾TSMCは86億ドルかけて熊本県ファウンドリ工場を建設中だ。追加建設も検討中だ。

(中略)

国内企業に対する支援も惜しまない。日本政府は最近、自国半導体素材企業のサムコ(SUMCO)が九州地域の佐賀県に建設するシリコンウエハー工場に750億円(約6900億ウォン)を支援することを決めた。強みである素材・部品・装備分野をさらに強化し影響力を高めるというものと分析される。

(中略)

専門家らは、半導体が国際情勢や経済安保問題と絡み合い、一国の経済を牛耳るほど重要になったと評価している。韓国の半導体要衝地である平沢・利川を含む境界線が「21世紀アチソンライン」という声も出てくるほどだ。

(中略)

KAISTのキム・ジョンホ教授は「米軍が韓国から撤収するならば我が国の安保に大きな脅威になるように、半導体サプライチェーンを奪われることも安保側面で同じ脈絡」とし「半導体主導権を奪われるならば韓国の安保に大きな影響を与えるだろう」と明らかにした。

続いて「今、日本は韓国と台湾に半導体工場が集中していることが地政学的に危険だと判断し、米国と台湾とに日本へ工場をさらに建設しようと説得しているようだ」とし「地政学的関係を利用して静かに半導体復活を夢見ており、(韓国は)緊張を緩めてはならない」と話した。

(後略)



ヘラルド経済「용인·평택은 ‘新 애치슨라인’…日에 뺏기면 국가 안보 ‘위태’ [반도체 新한일전](龍仁・平沢は「新アチソンライン」...日に奪われると国家安保の「危篤」[半導体新韓日戦])」より一部抜粋

半導体サプライチェーンから締め出されることが致命的であることは確かだと思います。そこは同意できます。
ただ、この記事の視点だと、まるで「敵は日本」と言っているようで違和感があります。

アセアン地域安保フォーラムで日中韓首脳会談が噂されています。と言っても、私が見たソースは韓国メディアだけなので実際どの程度実現の目途があるのかは分かりません。
ただ韓国メディアは首脳会談が実施されるとしたら、その場で「半導体三国の協力策が出るか(ニューシースなど)」と報じており、正直「は?」な感じです。

「新アチソンライン」を自任するのであれば、韓国が最前線です。中国は「対岸」です。そこが、メディアとは言え真っ先に「(中国と)協力」と言い出すことに、どうしても違和感というか不信感というか...そういうものを感じてしまいます。
「チップ4(最近めっきり聞かなくなりました)」に入る/入らない/事実上入った...などの煮え切らない態度と合わせて、韓国「だけ」を当てには出来ない、と自ら思わせてしまっているんじゃないでしょうか?
親米とされるユン政権ですら「こう」なのです。左派政権が足ったらどうなることか...。

あと、意図的にかは分かりませんが、広島G7の際にサムスンも日本に投資を決定したことには一言も触れられていません。