韓国の2023年経済政策の方向性...電気料金増、国公債は発行額縮小、個人投資資金の社債市場流入を促すためハイ・イールド債を奨励する話

ユンさん主宰の非常経済民生会議兼第1次国民経済査問会議において「2023年経済政策方向」が策定されました。この中で、韓国電力公社の来年の社債発行額を今年(29兆ウォン)の約3分の1規模の10兆ウォン前後に縮小する方針が示されました。
垂れ流し続けている赤字は2026年までの4年間で段階的に電気料金を上げることで吸収していくとのことです。

また、債券市場への資金流入を促すため社債へ投資した個人投資家への税制優遇を拡大したり、信用等級の低い社債編入したファンドに対する税制優遇も増やす方針です。

 



朝鮮Bizの記事からです。

来年の韓電債発行を今年の3分の1に縮小...社債投資の個人には税制優遇の拡大


(前略)

数年間で需要が急減した社債市場を再び復興させるために個人の社債関連投資に対する税制インセンティブを拡大する。個人総合資産管理口座(ISA)非課税恩恵付与対象金融商品社債と場外株式(K-OTC)市場内の中小・中堅企業株式を含め、ハイイールドファンド(high-yield fund)投資に税制恩恵を付与することだ。

ハイイールドファンドとは信用等級が低く収益率が高い債券に投資し、高収益・高リスクを追求するファンドを指す。国内債券に60%以上投資しながらBBB+以下の低信用等級債権を45%以上編入したファンドが税制優遇対象だ。

(中略)

一方、これまで資金需要が集中していた国公債に対しては発行物量を削減するなどの安定位政策が伴う。国公債の場合、年間発行量を今年の117兆3000億ウォンから来年は167兆8000億ウォン規模に縮小する方針だ。特に来年第1四半期の純発行額(発行額-償還額)を今年(42兆ウォン)の半分水準に大幅に縮小する。

(中略)

債券市場かく乱の根本原因とされた韓電債は発行規模を今年と比べ大幅に縮小することにした。韓国電力の赤字を招いた原価以下の電気料金を徐々に引き上げる方針を決めたためだ。政府は韓電・ガス公社の累積赤字と未収金が回収されるよう2026年までの4年間で料金を段階的に現実化すると明らかにした。ユン・インデ企画財政部経済政策局長は16日に開かれた事前ブリーフィングで「段階的な料金引き上げと国際原油価格を勘案すれば、来年の韓電債の物量は今年対比で3分の1以下に減る可能性がある」と明らかにした。今年の発行規模は29兆ウォンに達したが、これを10兆ウォン程度に減らすものと見られる。

これと共にこの他に地方債も年間発行規模を今年の7兆5000億ウォンから6兆5000億ウォンに減らし、第1四半期に満期が到来する地方債・公社債の80%規模である2兆ウォンを償還するという計画だ。

(後略)



朝鮮Biz「내년 한전채 발행 올해 3분의1로 축소…회사채 투자 개인에겐 세제 혜택 확대(来年の韓電債発行を今年の3分の1に縮小...社債投資の個人には税制優遇の拡大)」より一部抜粋

他にも海外資本を呼び込むために色々規制解除を行うみたいですけど、そこら辺は今回は置いて(省略して)おきます。

信用等級の高い国公債の発行を減らすことで債券市場での資金の偏りを抑える、また税制優遇により個人投資家の資金を呼び込む...一見まともそうに聞こえますけど、どうでしょう?結局は今までと同じ「家計負債で経済を回す」と同じことだと思います。
高利回りをエサに低信用・高リスクの債権を売りつけるわけで、それを買うのは結局は「ヨンクル(魂を売ってでもお金を借りて投資)」ではないかと。不動産市場が債券市場に変わるだけで同じことが起こるように思えます。

さらに税制優遇を受けるためのハイイールド債に組み込まれるBBB+以下の社債は、いわゆる「ゾンビ企業(営業利益で利払い出来ない)」と呼ばれる限界企業(上場製造業で39.1%と算出)である可能性が高く、本来は淘汰されるべき企業を延命させる手段とも取れます。

一方、地方債の発行規模は減らすとしています。公社、国債、地方債は等級が高いですからね。国の借金は減ります。
つまり、企業と国民を2つの車輪に見立て、それぞれが相互に債務と債権があるものとします(家計債務で社債を買う、家計債務の出どころは民間金融企業)。その車輪の上に国が輿として乗っかります。今までと構造は同じです。韓国はこれで経済発展してきたので。今は車輪の動きが悪くなってしまった状態なので油を差そうとしている状況ですね。


また、記事中では触れられていませんけれども電気料金が上がることによる製造業への負担についても気になるところです。競争力への影響とかそこそこありそうですが...。