韓国政策金利3.0%、20~30代の脆弱借主「ヨンクル」直撃の話

韓国の基準金利が引き上げられました。
予想されていたことではありますが、一気に0.5%アップして3.0%になったことで家計負債への影響を懸念する記事が大量生産されています。住宅ローンの金利は年内に最高で8%を超えるとの見通しも出ており、確かに深刻です。
中でも20~30代の脆弱借主の割合は6.6%と他の世代の平均5.8%より高く、不動産投資目的のローンである可能性も高い層です。
所謂「ヨンクル(魂を売ってでも借金して投資)」と呼ばれる人たちですが、金利が上がると不動産価格は下落するとされており、基準金利引き上げはこの層にはダブルパンチ(金利増による返済負担増+不動産価格下落)になるだろうと思われます。

 



ニュース1の記事からです。

「4億借りたら毎月300万ウォン銀行に」..2番目のビッグステップにヨンクル族「パニック」


(前略)

13日、金融界によれば韓国銀行が前日「ビッグステップ」を断行して以降、銀行貸出窓口と主要貸出・不動産コミュニティには利子償還負担を吐露する書き込みと問い合わせが増えている。

韓国銀行金融通貨委員会は12日、基準金利を0.50%引き上げる「ビッグステップ」を断行した。7月に続く歴代2番目のビッグステップだ。また、4・5・7・8月に続く韓国銀行史上初の5回連続基準金利引き上げだ。

基準金利引き上げは1年2ヵ月ぶりに8回続き、貸出者の苦痛が深刻化している。昨年8月に0.5%だった基準金利は今月3.0%で、なんと2.5%pあがった。3.0%台の基準金利は2012年10月以降、10年ぶりのことだ。

基準金利が急騰したことにより銀行貸出金利も順次さらに上がるものと予想される。銀行貸出金利は基準金利に加算金利を加える方式で算定されるため借主の実際の負担はさらに大きくなりかねない。

金融界では韓国銀行のビッグステップの影響で都市銀行の貸出金利が年内に8%台に上がるだろうという観測が出ている。

(中略)

昨年、金利が本格的に上がる前に4億ウォンを年4%金利(30年満期、元利金均等条件)で借りた場合、貸出初期の月当たりの負担は133万ウォン(年間約1596万ウォン)だった。元金を合わせた元利金は190万ウォン程度だった。しかし、貸出金利が年8%に上がれば月の利子は266万ウォン(年間約3192万ウォン)と2倍程度に増える。元利金まで加えれば銀行に毎月300万ウォン近く(294万ウォン)返済しなければならない。年間元利金償還額は3528万ウォンで、会社員の年俸水準に肉迫する。月給をそのまま銀行に払わなければならないわけだ。

今回のビッグステップによって年間全体の家計利子負担は6兆9000億ウォン増加するものと推算される。昨年8月から今月までの基準金利引き上げ幅である2.5%pを反映すれば約1年ぶりに増えた家計の利子負担額は34兆5000億ウォンに達する。借主1人当たり年間163万ウォン程度に達する。

特に昨年の低金利基調で無理に借金をした20~30代のヨンクル族*1が今回の金利引き上げ期に大きな打撃を受けるものと予想される。

韓国銀行の調査で20~30代の家計貸出は昨年末基準で475兆8000億ウォンで、1年前より35兆2000億ウォン増えた。そのうち脆弱借主の割合は6.6%で他の年齢層の平均(5.8%)より高い。30代の借主のLTI(所得対比貸出比率)は280%に達する。

(後略)



ニュース1「"4억 빌리면 매달 300만원 은행에"..두번째 빅스텝에 영끌족 '패닉'(「4億借りたら毎月300万ウォン銀行に」..2番目のビッグステップにヨンクル族「パニック」)」より一部抜粋

下は記事に添付されていた基準金利の変遷グラフです。最近の引き上げがいかに急ピッチで行われているか分かります。




他ソース(韓国経済TV)になるのですが具体的な事例を紹介していました。5億6600万ウォンを借りてマンションを購入したA氏(記事によると大企業職員)のケースです。該当箇所部分だけ以下に抜き出します。

A氏の総融資額は住宅担保貸付4億6000万ウォン(30年元利金均等分割償還。新規取扱額コピックス6ヵ月連動金利)と信用ローン1億ウォン(融資期間1年。毎年期限延長可能。金融債6ヵ月連動金利)を加えて5億6600万ウォンだ。
A氏に初期6ヵ月間適用された金利は住宅担保ローンが年2.91%、信用ローンが3.66%で月の元利金返済額は約224万7000ウォン(住宅担保ローン元利金194万2000ウォン+信用ローン利息30万5000ウォン)水準だった。

だが2年後の今月現在、住宅担保ローンと信用ローンの金利はそれぞれ5.07%、6.67%に高まり、月払い額(249万2000ウォン+55万6000ウォン=304万8000ウォン)も2年間で36%も増えた。

しかも今年末や来年初めの基準金利が3.50%に達すると6ヵ月後の来年4月のA氏の月償還額は約340万4000ウォン(住宅担保ローン年6.07%適用元利金276万5000ウォン+信用ローン7.67%適用利子64万9000ウォン)で最初の貸出当時(224万7000ウォン)より51.5%(115万7000ウォン)も増える。

ウォン表記なのでピンと来にくいかもしれません。正式なレートではないですが規模感としては、当初の月返済は22万円程度だったものが2年後には30万円になり、来年には34万円になるかも、くらいです。
A氏は大企業職員という設定ですが、それにしてもローン返済に月22万とは、最初から無理があったんじゃないでしょうか?日本だと返済負担率30~35%が限度とされていますので、月収60万以上ということになります。それでもギリギリです。

また、これが自宅用ではなく投資用だった場合はもっと悲惨です。
韓国銀行は金融不安の大きな原因に不動産価格の高騰による家計負債増加を上げています。家計負債の増加を止めるには金利を上げてローンを借りにくくすることが一番簡単そうです。
住宅ローンが借りられなければ不動産は売れません。自然、不動産価格は下落します。
これにより最も被害を被るのは先の記事に出てきた「ヨンクル」たちです。



*1:投資資金を借金で賄う人たちのこと。ヨンクルのヨンは「영혼(ヨンホン=魂、霊魂)」のこと。「魂まで売った」みたいな感じ。