迷走中の徴用工賠償判決解法は「第三者返済が現実的」だがユン政府が台無しにしようとしている...「仲裁委」を検討すべき、という話

徴用工賠償判決解法について、「第三者返済」が現実的ではあるものの、ユン政府自体がコトを急いだせいで台無しにしようとしている...との批判記事がありましたので紹介します。

色々と書いてありますが著者自身は日韓請求権協定の仲裁委員による解決を提案しています。
著者の考えとしては、ユン政権は日韓の懸案を解決した状態で足取り軽く訪米し、米韓首脳会談を行いたいと考えているが、外交スケジュール的に期限が決まっていて、もちろん日本はそれを把握しているので韓国は「不利だ」と。
仲裁委での韓国の「勝算」は高くないものの、日韓請求権協定に明示された紛争解決法であるし、仲裁委で強制動員の問題点を一つ一つ上げていく方が、このまま日本に足元を見られてなし崩し的な解決で火種を残すよりマシ、とのことです。

 



京郷新聞の記事からです。

[ユ・シンモの外交フォーカス]道に迷った日帝強制動員解法


先月12日、政府が主催した「強制徴用解法公開討論会」で起きた混乱と騒動は、この事案がそれほど複雑で多層的なのかを示した。討論会が修羅場になったのは予想されていたことなので驚くことではない。本当の問題はこのような討論会があまりにも遅く開かれたことだ。

このような討論会は2012年5月24日、最高裁1部(主審=キム・ノンファン)が控訴審判決を覆し、日本企業に賠償責任があるという趣旨で破棄差戻決定を下した直後から開かれるべきだった。判決の意味・問題点・波長・政府の対応などを巡り「混乱した公論化」がその時から始まっていたらはるかに簡単に国内的合意に達しただろうし、日本も真剣に協議に乗り出しただろう。しかし韓国は10年以上、この問題を回避し、非常識な方法で対処してきたがそれは実現しなかった。

歴代政府が強制動員賠償判決問題を扱ってきた過程は「無能力・無責任な対日外交」の極致だ。李明博政府はこの問題に関心が無く、大統領の独島訪問、天皇*1発言などで韓日関係を完全に壊した後、その負担を朴槿恵政府に転嫁した。朴槿恵政府は判決の深刻性を認識したが正攻法を選ばず、あろうことか最高裁の腕を捻って判決を再び覆そうとした。2018年10月、最高裁の最終確定判決が出た直後にでもこの問題を正面から扱っていたらそれでもよかっただろうが、文在寅政府は日本の外交協議要請に無回答で一貫し、日本の輸出規制措置以後、強硬対応に転じ、韓日葛藤を国内政治に利用することで事を決定的に誤った。

ユン・ソンニョル政府が積極的に問題解決に乗り出したが今回は合理的な過程を経ず困難を招いている。ユン・ソンニョル政府の解決法案は国内企業の寄付金で被害者に「判決金」を支給する「第三者返済」だ。韓国が主導的に問題解決に出れば日本が「誠意をもって呼応」し、日本の被告企業が寄付金造成に参加し適切な謝罪表明をすると期待した。しかし日本は被告企業が支払うことを拒否した。

(中略)

ユン大統領はこの問題を早く決着させ新たな韓日関係の始まりを知らせる首脳会談を行った後、上半期中に軽い足取りで米国を訪問しバイデン米大統領の歓待を受けるという一連の構想を持っている。

しかし第一段階である強制動員問題に阻まれている。外交日程上の時限を持って日本と交渉しているので、これを知っている日本に勝つ方法はない。

ユン・ソンニョル政府が推進する第三者返済は現実的に唯一の解決策だ。しかしその解決策に到達するまでの過程とシーケンス(手順)が間違っている。強制動員賠償判決は法的・歴史的・外交的側面をすべて勘案し精巧に扱わなければならない難題だ。

(中略)

しかし政府は独自の方法で解決を急いだ。官民協議会を開いて被害者と会う姿を見せたが結論を決めて進行した形式行為だった。壁にぶつかった政府は今や日本に「寄付金を出して謝罪してほしい」としがみ付いている。たとえ日本が受け入れたとしても、このようなやり方なら寄付金でも謝罪でもない。まともな問題解決とはいえない。

(中略)

日本が「国際法に違反した韓国が一人で解決しなければならない」という対場を最後まで固守するならば、政府は仲裁委員会を開く方案を検討することを望む。仲裁委での勝算が高くないとはいえ、韓日請求権協定に明示された紛争解決方法を協議に上程するしないのは妥当ではない。負けても仲裁委で強制動員の問題点を一つ一つ指摘し、結果に承服することが日本の要求をすべて受け入れて国内的葛藤を大きくし韓日間にわだかまりの紛争の火種を残すよりはよい選択だろう。



京郷新聞「[유신모의 외교포커스] 길 잃은 일제 강제동원 해법([ユ・シンモの外交フォーカス]道に迷った日帝強制動員解法)」より一部抜粋

書いた人の肩書は外交専門記者だそうです。何言ってるんでしょうね、すぐに対処していればもっと簡単に国内で意見のすり合わせが出来た?日本ももっと真剣に協議に応じた?本気でそう思っているのなら、それこそ問題の「本質」が分かっていないように思いますが。
「日本に勝つ方法はない」とか「仲裁委で負けても」とか、勝ち負けで語ってしまっている部分で本音が漏れているというか、語るに落ちたというか...。
それに「寄付金を出して謝罪してほしい」は、ユン政権になってからではなく最高裁判決が出てからずっと言ってますよね。言い方が違うだけで、それ以外の提案は無かったと思いますけど。


2012年の最高裁(大法院)による差戻しの前の2008年の1審と2009年の2審では原告の訴えを「棄却」しています。2005年当時、廬武鉉政権の政府公式見解は「日本が韓国に無償供与した3億ドルに徴用関連の費用はすべて含まれる」です。なんの矛盾もありません。
※個人の請求権は消滅していない云々...については確かにその通り。「訴える権利」は保障されています。が、その後、裁判所は「請求権協定ですべて解決済み」と棄却するのが筋となります。「訴える権利」=「請求できる権利」では無いということ。

ところが2012年の最高裁(大法院)判決で原告の訴えにない勝手な判断を下します。原告の訴えは「不法行為による損害賠償」でした。この不法行為が指すのは「約束された賃金支払いが無かった」「聞いていた労働環境ではなかった」などです。
最高裁(大法院)はこの「不法行為」を「植民地支配は不法行為」と挿げ替えて差し戻し判決を下しています。「植民地支配」という「不法行為」に対する損害賠償は請求権協定に含まれていない、だから慰謝料を払え、との理屈です。
問題の「本質」を一つに絞れというのなら、この斜め上過ぎる判決でしょう。「法的・歴史的・外交的側面をすべて勘案し~難題だ」と、あたかも「難しい問題」に仕立てあげていますが、それは韓国の国内問題です。

ちなみに、当時(2012年)の李明博政権も判決直後に「請求権協定で解決済み」の立場を示しています。一応、それまでの立場を継承するという意思は表示していますので、これを「無関心」とまで切り捨てることはないのではないかと。

*1:原文「일왕(日王)」。