第3者返済、日本企業に求償権を行使しないという話

日韓首脳会談が終わってゴチャゴチャしてきました。
竹島の話を言った/言わないだの、シャトル外交再開で夏あたり岸田さんが訪韓するだの、輸出管理においてホワイト国(グループA=優待国)復帰のための協議が始まるだの。
輸出管理協議は「別問題」としていたものの、このくらいのお土産は持たせてあげても良いかもしれません。これ以上はいたずらに徴用問題と絡めて欲しくないですが。

これらがどう進展(?)していくかは今後の話になるでしょうからひとまず置いておいて。個人的に気になった...というか、驚いたのがユンさんが第3者返済後の「求償権」、つまり弁済を肩代わりした債権を請求することですが、これを「しない」と明言したことです。
訪日前に日本メディア(読売)とのインタビューで述べていた件です。それを共同記者会見で改めて言及しました。日本メディア相手に話にだけならコッソリアピールで済みますが、韓国メディアの耳目のある共同記者会見の場でも、というのが意外です。

 



国民日報の記事からです。

ユン「求償権を行使するなら全ての問題を元の位置に戻すこと」


ユン・ソンニョル大統領は16日、強制徴用被害者賠償解決法である「第3者返済」により発生する求償権を日本の被告企業に請求しないという点を明確にした。

求償権は債務を代わりに返済した人が債権者に変わって債務当事者に返還を請求できる権利だ。韓国政府の強制徴用被害賠償解決法は「第3者返済」を核心内容とするため、法理的に求償権が発生することになる。

(中略)

ユン大統領は同日、岸田文雄日本総理との韓日首脳会談後の共同記者会見で「求償権の取り扱いについてどう考えているか」との日本人記者の質問に対し「韓国政府は(日本の被告企業に対する)求償権行使は想定していない」と明らかにした。ユン大統領は続けて「もし求償権が行使されるとすれば、これは再び全ての問題を元の位置に戻すこと」と指摘した。

ユン大統領は「これまで韓国政府は1965年度(韓日請求権)協定と関連して強制徴用被害者に対する賠償問題を政府の財政として処理した」と説明した。ユン大統領はまた、韓国最高裁が2018年10月、日本の被告企業が私たちの強制徴用被害者に対して賠償しろと判決したことと関連して「2018年にこれまでの政府の立場と、また政府の1965年協定解釈とは異なる内容の判決が宣告された」と話した。

ユン大統領はそれと共に「韓国政府はこれを放置するのではなく、これまで韓国政府がこの協定に対して解釈してきた一貫した態度と、この判決を調和的に解釈し韓日関係を正常化し、発展させなければならないという考えを持って基金による『第3者返済案』を判決解決策として発表した」と強調した。

(中略)

求償権請求をしないということは日本の被告企業側に直接的な賠償責任を問わないという意味だ。1965年の韓日請求権協定ですべての賠償問題が解決されたという日本の主張に手を上げたものと解釈できる。

(中略)

大統領室高官は東京現地で記者団に対し、日本側の強制徴用関連の前向きな謝罪発言が無かったことについて「(岸田総理が過去の)相対的な談話の内容、歴史認識に関する談話を継承すると話したので(謝罪は)十分ではないかと思う」と述べた。この関係者は続けて「歴代日本政府が天皇と総理を含め50回余り謝罪をした経緯がある」として「謝罪を再度受けることが私たちにどんな意味があるのか考えてみる必要がある」と指摘した。



国民日報「尹 “구상권 행사 한다면, 모든 문제 원위치로 돌려놓는 것”(ユン「求償権を行使するなら全ての問題を元の位置に戻すこと」)」より一部抜粋

至極まっとうなことを言っていて「え、大丈夫?」という気になります。
韓国政府の一貫した解釈というのは、確かにある意味その通りです。左派だった廬武鉉政権でさえ、日本に賠償は求めず韓国政府の財政から支援金を出すことで国内問題として処理しましたし、竹島上陸や天皇謝罪発言等で散々反日を煽った李明博政権でさえ2012年の判決時には「解決済みの問題」として判決内容を批判していました。
「日韓関係正常化」とは、ここの解釈を本来あるべき一貫した態度に戻す、ということを含んでいるとのメッセージと受け取っていいのでしょうか?
個人的には歓迎したいスタンスではあるんですけど...現時点でこの方向性に進むにはユンさんにはまだまだ障害が多いでしょうね。国内世論をどうまとめるか、プランはあるのでしょうか?

謝罪を再度受ける意味...よく言いましたね。他ソースも確認したのですが、大統領室の主要関係者というだけで誰なのか分かりませんでした。
誰が言ったにせよ、韓国(メディアも国民も市民団体も)は本当に求めているのは「謝罪」なのか?というところをマジで一度じっくり自問してみれば良いと思います。「日本に謝罪させることで屈辱を与えたい 」という本心に気が付くかもしれませんよ。