ソウル江西区長補選、前職が新人に負けた当然の話

ソウル市の江西区の区長選が行われました。結果、野党「共に民主党」の候補者が与党候補者に得票率で17.15%の大差を付け勝利しました。

もともと江西は共に民主党の地盤ではあります。とはいえ、ここまで大差を付けられたのには、それなりに理由もあります。

というのが、国民の力公認候補のキム・テウさんと言う人。前職の江西区長(2022年6月当選)だったのですが、ムン政権のときに公務上の機密漏洩をしていたことが発覚し、今年の5月に執行猶予付きの懲役刑判決を受けています。それにより区長職を失い、今回補欠選挙が行われたわけです。

「前科アリ」候補者です。確かに韓国は日本に比べて政治家の「前科者」が多いです。しかし、それでも判決から半年も経たずにユン政権が公認を与えたというのは事実上「お咎めなし」に等しい行為です。
ユンさんは元検察総長です。そして就任当時からやたらと「公正と正義」を強調してきた人です。しかも「公務上の機密漏洩」という公務者としての資質を疑わせる罪を犯した人です。
こうしたことから、一部では国民の力が公認候補を決めたときから予見されていた結果だと見る向きもあります。

 



聯合ニュースの記事からです。

予想外の格差に与党「刷新論」噴出、野党、対与党攻勢の手綱


(前略)

12日、中央選挙管理委員会によると、ソウル江西区庁長補欠選挙民主党のチン・ギョフン候補が56.52%を得票し、「国民の力」のキム・テウ候補(39.37%)を17.15%ポイント差で制した。

今回の補欠選挙は全国の基礎自治体の一つに過ぎないが、総選挙を6ヵ月後に控えて与野党が総力戦を繰り広げ、状況が大きくなった。

国民の力としては野党の票田である江西での敗北が全く予想できない状況ではない。

しかし党の使用可能な資源を総動員して総力戦を繰り広げただけに、負けたとしても「薄氷勝負」を期待したため、予想より大きな格差が明らかになった成績表は総選挙を控えた党刷新論を呼び起こすものと見られる。責任所在をめぐる党内の甲論乙駁もある程度予想される。

(中略)

ただ、惨敗の責任をすべて指導部に負わせることは難しく、険地での敗北を総選挙首都圏民心の尺度と見ることは難しいという認識もあり、直ちに指導部を交替したり非常対策委員会を開くような急激な変化はない可能性が高い。

(中略)

国民の力は敗北の後遺症を早く収拾するため近いうちに総選挙企画団を立ち上げ、党務監査と人材の迎え入れにも拍車をかけ、総選挙体制に拍車をかける方針だ。

反面、「大勝」を収めた民主党はユン・ソンニョル政府を審判するという国民世論が今回の選挙で明らかになったと解釈し、対与党攻勢の手綱をさらに引き締めるものと見られる。

特にユン大統領が赦免・復権した候補に二桁の得票率差で勝ったことは民心が現政権をどのように眺めるのか如実に表れたというのが民主党の評価だ。

民主党は「政権審判論」を掲げて、今回つかんだ勝機を来年の総選挙まで続ける方針だ。

(後略)



聯合ニュース「예상밖 격차에 與 '쇄신론' 분출, 野 대여공세 고삐(予想外の格差に与党「刷新論」噴出、野党、対与党攻勢の手綱)」より一部抜粋

今回の投票日の直前に聯合ニュースは「もし明日が総選挙投票日だったなら、どこの党に投票するか」を聞いたアンケート調査を行っていました。

その結果、全国では国民の力(与党)が32.6%、共に民主党(野党)が31.3%(信頼区間95%、標準偏差±3.1%)と拮抗しています。
地域別では江西区が含まれるソウルでは国民の力支持が39.2%、共に民主党支持が28.2%と、むしろ与党優勢でした。そのため共に民主党の地盤といえども、もう少し善戦するとの見方もあったようです。

今回の選挙結果が総選挙→大統領選の結果を左右するかはまだ分かりません。特に総選挙はともかく、大統領選にはユンさんはもう出馬できませんから「ユン・ソンニョル vs イ・ジェミョン」の構図にはなりえません。

それでも今の流れが続くなら、次期政権は共に民主党が取る可能性が高いと思われます。
前述の聯合ニュースのアンケートには年代別の選好も含まれていて、国民の力が支持を集めていたのは60代以上(国力50.8%、民主党23.9%)のみでした。
40代(国力19.5%、民主党42.5%)、50代(国力26.9%、42.4%)は逆に共に民主党支持者が圧倒的に多く、18歳から39歳まではどちらも25%と拮抗しています。
これ、普通に左派政権ですよね。またちゃぶ台返しかー。