1年の営業利益で借り入れの利子さえ支払えない企業のことを韓国では「ゾンビ企業」といいます。この状況が3年続くと「限界企業」にクラスチェンジします。
昨年、韓国企業は急激な金利上昇による利子負担増と、原材料費の高騰による営業利益減でゾンビ企業の割合が42.3%と過去最高値を記録しました。
日本の場合はっきりした「ゾンビ企業」の定義はありません。一応、国際決済銀行の定義では「設立10年以上で3年以上、営業利益で利子（＋配当金 ）が支払えない企業」となっています。その定義でとある調査会社が出したデータによると、2022年度決算の時点での日本のゾンビ企業率は12%前後だったようです。1割を超えます。最初に見た時はちょっと多いかな～...と感じました。
しかし、コロナ前（2019年＝10.18%）と比べれば確かに上昇気味ですが、リーマンショック後の2009年（16.74%）、2010年（18.93%）、2011年（19.24%）と比較するとまだ比較的「低い」水準と言えます。韓国の4割超に比べても、やはり低い水準と言えます。まあ、こちらの場合、定義が同じではないので単純比較は出来ないんですけど。
ソウル経済の記事からです。
昨年のゾンビ企業の割合は42.3%で過去最大...稼げないのに金利が上がる
（前略）
25日、韓国銀行が発表した「2022年企業経営分析」によると、昨年国税庁に法人税を申告した非金融営利法人企業91万206社の金融費用負担能力を示す利子補償比率は348.57%で2021年（487.9%）より130%ポイント以上下落した。営業活動を通じて生み出した収益で金融費用を負担できる程度を示す割合で該当指標が低くなるほど営業利益が減ったり利子負担が大きくなったものと見られる。
全体調査対象企業のうち利子費用が0の企業（46万8248社）を除いた44万1958社のうち、利子補償比率が100%未満の企業の割合は42.3%で歴代最高値を記録した。利子補償比率が100%未満なら稼いだお金で利子も出せないという意味で、不良企業と見ることが出来る。100%未満の企業の割合は2017年に32.3%、2018年に35.2%水準だったが、2020年（40.9%）を基点に40％台に進入した。2021年（40.5%）は小幅下落したが1年ぶりに再び上昇転換したのだ。企業数に換算すれば2021年は16万7300社から昨年18万7000社へと2万社近く拡大した。
（後略）
ソウル経済「작년 좀비기업 비중 42.3%로 역대 최대…돈 못 버는데 금리 올라（昨年のゾンビ企業の割合は42.3%で過去最大...稼げないのに金利が上がる）」より一部抜粋
利子費用「0」の会社を入れた場合（法人税を申告した全非金融企業）ゾンビ企業率は20.5%になります。韓国企業の5社に1社。
最近、「このままじゃ日本のようになる」という趣旨の記事がチラホラ目に付くようになってきました。所謂、「失われた20年」だか「30年」だかのように低成長期に突入するという意味なんでしょうけど、もし韓国がバブルが弾けた直後の日本のようになるんだとしたら、日本の比ではない不況に見舞われると思います。
というのが、当時の日本はまだ「切れる身」があったんです。国レベルでは国債を発行（1989年の国債残高はたった161兆円）して公共事業を増やしたり減税に回したりの手が使えましたし、民間企業は肩叩き（リストラ）と新規雇用凍結で凌ぎました。その後、労働市場改革とやらで非正規雇用を拡大することで人件費を圧縮。氷河期世代なんてのは割を食いまくった世代です。
また長らく続いたデフレの影響で物価が「上がる」ことに拒否感を示すという副作用が今まさに出ています。
しかし、削れる身を削り切ってヒョロヒョロに瘦せこけながらもなんとかやってこれたのが日本です。
さて、韓国に同じようなことが出来るでしょうか？
現状、韓国は政府・企業・家計すべてが借金を抱えています。また、民間企業に勤めている場合、平均退職年齢は49.3歳です。肩叩きはすでにやっているので、その年齢が引き下げられるということになります。
新規雇用の凍結をしようにも、韓国では青年層の就職難はすでに常態化しています。（これは主に求職者の求める「条件」と企業の提示する「条件」が一致しないのが原因とされています）
今年5月の時点で卒業後3年以上働いていない若者は21万8千人と集計されています。このうち「何もしていない」いわゆる「ニート」とされるのは8万人（36.7%）で大体10人中4人の割合です。
これだけ見てると、なんか手詰まり感ないですか？
韓国政府は財政健全化を目指して国債の新規発行を抑える方向に進んでいます。間に合えば政府が借金を負って経済を回すという手が使えますが...次の政権を左派が取ったら元の木阿弥な気もします。
