「帝国の慰安婦」パク・ユハ氏の名誉棄損罪、観音寺盗難仏像の所有権...2つの最高裁判決の話

今日は個人的に以前から注目していた裁判の判決が2つ出ました。

一つは「帝国の慰安婦」著者のパク・ユハさんに対する名誉棄損罪の最高裁判決です。2015年1審、無罪→2017年2審、罰金1千万ウォンからの6年越しの最高裁判決、つまり確定判決となります。

2つ目は日本の対馬観音寺から盗まれた仏像の帰属判断です。韓国の浮石寺が返還を求めて起こした訴訟で、こちらも最高裁判決です。

私の感覚(マトモかどうかはさておき)では、パク・ユハさん→無罪、仏像→観音寺に所有権、が妥当だと思うのですけれど、さてはてどうなったでしょう?

 



まずはパク・ユハさんの結果をKBSの記事からです。

大法院、「帝国の慰安婦」パク・ユハ教授を無罪趣旨で破棄差し戻し


(前略)

最高裁3部(主審=ノ・ジョンヒ最高裁判事)は本日(26日)、名誉棄損の疑いで起訴されたパク名誉教授事件について「2審が有罪と認めた表現は学問的主張、あるいは意見表明として評価してこそ妥当だ」とし「名誉棄損罪で処罰できる『事実の適時』とは見難い」と宣告しました。

裁判所は「全体的な内容と脈絡からみてパク名誉教授が日本軍による強制連行を否認したり、朝鮮人慰安婦が自発的に売春行為をしたなどの主張を裏付けるために関連表現を使用したとは思えない」と判断しました。

続けて「各表現が被害者一人一人に関する具体的な事実の陳述に該当するとは見難い」とし「起訴された表現の中で『公的強制連行』に関する内容は学問的概念の包摂を前提としたもので事実上適時と見ることは難しい」としました。

(中略)

大法院は該当判決に対して「学問的表現物による虚偽事実適時名誉棄損罪の成立判断時に『事実の適時』に該当すると認める際には慎重でなければならないという法理を改めて説明し提示した」と説明しました。

(後略)



KBS「대법원, ‘제국의 위안부’ 박유하 교수 무죄 취지로 파기환송(大法院、「帝国の慰安婦」パク・ユハ教授を無罪趣旨で破棄差し戻し)」より一部抜粋

個人的にパク・ユハさんの主張(強制連行は無かったかもしれないが日本は謝罪すべき)そのものは「なんか違う」感が否めないのですけれど、まあ無罪判決は納得ですよね。

慰安婦関連は他にもリュ・ソクチュンさん(「慰安婦は売〇の一種」発言)の訴訟もまだ続いています。ペンアンドマイクは今回の判決がそちらの判断にも影響を与えるのでは?と肯定的に報じていますが...どうでしょうね?


 

 



次に仏像の所有権です。YTNの記事からです。

大法院「略奪された高麗仏像、日本観音寺所有権認定」


(前略)

大法院は本日午前、大韓仏教曹渓宗浮石寺が国家を相手に起こした仏像引き渡し請求訴訟の上告審宣告期日で原告敗訴とした原審を確定しました。

裁判所は日本の観音寺が法人資格を得た1953年1月から盗難直前まで仏像を占有してきており、1973年に取得時効が完成したとし、韓国の浮石寺が原始取得者であっても所有権を喪失したと見るべきだと判断しました。

(中略)

1330年頃に作られた仏像は倭寇によって略奪されたものと推定されますが、2012年に韓国の文化財窃盗団が日本の対馬所在の観音寺から盗んできて韓国に入ってきました。

浮石寺は当時仏像から発見された「1330年頃、西州にある寺院に奉安しようと仏像を製作した」という結縁文を根拠に所有権を主張し、2016年に国を相手取って仏像返還を求める訴訟を起こしました。

(後略)



YTN「대법 "약탈당한 고려 불상, 일본 관음사 소유권 인정"(大法院「略奪された高麗仏像、日本観音寺所有権認定」)」より一部抜粋

「略奪」の有無と判決の事由を上手く切り離しましたね。「略奪」があってもなくても所有権は観音寺。それでいいんです。

日本側としては判決を根拠に返還を要求すれば良いんですが、このままスムーズに行くかはまだ分かりません。2審で日本の観音寺の所有権を認めた判決のときに「所有権は観音寺にあるけれども、それと文化財の返還は別。国際法とかユネスコ規約とかに則って別途判断されるべき」みたいな一言が付いていたはずです。
最高裁判決でそこのところがどうなっているのか分かりませんが、2審と同じような判断だったらまたダラダラ引き伸ばしがされるかもしれません。