韓国で活発な「私教育」、体育分野でも活発...「学校に任せていると運動不足」という話

過酷な進学競争のため韓国で私教育が活発という話はよく聞きますが、最近では体育分野にも力を入れる親が増えているそうです。
子供を一流アスリートにするためとかではなく、学校教育の場で体育が軽視されがちという背景からです。

これにより、基礎身体能力的な面においても「スプーン理論(親ガチャ)」が適用されてしまうと危惧する声があるようです。

 



世界日報の記事からです。

体育が消えた学校...運動も塾の私教育[深層企画-体育教育を生かそう]


(前略 ※京畿道在住の小学3年生A君の事例を紹介)

学校から体育教育が疎外されている。体育の授業は身体を鍛えることを超え、人格と学業発達にまで影響を及ぼし、児童教育で重要な要素と見なされるが韓国の公教育では相対的に疎かに扱われている。特に初等学校1・2年生は別途体育教科も存在せず多くの生徒が公教育進入と同時に体育断絶を体験する。この隙間を掘り下げたのは体育の私教育だ。親の財力と関心の程度によって児童の身体活動の量と質に差が生じるのだ。

◆運動不足青少年、世界最高

「毎日平均60分以上、中~高強度の身体活動」、「筋力・骨教化運動を含む激しい運動を週3回以上」。世界保健機関(WHO)が出した5~17歳の運動推奨量だ。

(中略)

2019年のWHO発表報告書によると、韓国の11~17歳のうち推奨運動量を満たせなかった割合は94.2%で、世界146ヵ国(平均81%)の中で最も高かった。運動不足の割合が90%以上のところは韓国の他にフィリピン(93.4%)、カンボジア(91.6%)、スーダン(90.3%)だけだった。通常、国家所得水準が高ければ青少年の身体活動が増えるが、韓国は所得水準が高く身体活動が少ない特異事例に挙げられた。

同年発表された「2018年国際学業成就度評価(PISA)」で、韓国の青少年の読書・数学・科学能力は世界79ヵ国中5~11位を記録した。読み取り領域は6~11位だったにも関わらず「歴代最低順位」として学力低下を心配する声が大きく、教育当局は優秀コカkの教育政策を参考にして順位下落原因を分析すると明らかにした。「最下位」の運動量を心配する声は相対的に少なかった。

(中略)

韓国の教育課程評価院によると、初等学校3~6年生の体育時間は年間102時数だ。3・4学年が計1972時数、5・6学年が2176時数という点を考慮すれば教育課程の9~10%を占めるわけだ。

(中略)

ソウルのある保護者は「教師によって体育授業の量と質が違う。1人目は低学年の時も週に2度は運動場に出たが、2人目は1年生の時に運動場に一度も出なかった」とし「周りに聞くと、美術中心にだけ授業するクラスも多く、統制のとれない生徒がいれば教室の外に出ないなどクラスごとに偏差が大きい」と話した。

(中略)

教育部関係者は「小1・2学年は発達段階、統合教育が適しているとして数学・国語以外の教科は統合教科に縛られている」とし「楽しい生活(※統合教科の名称)に身体活動部分が少ないという指摘が出て、来年から適用される『2022改正教育課程』総論に『室内外の遊びおよび身体活動の機会を十分に付与する』という内容を入れた。新しい教科書には身体活動部分がもう少し増えるだろう」と説明した。

(中略)

体育の授業に不満を感じる保護者の多くは私教育を訪れる。教育部によると昨年、小学生の私教育参加率は85.2%で中学生(76.2%)、高校生(66%)より高く67.8%は「芸術・体育、趣味・教養分野」の私教育を受けた。

(中略)

ソウルのある保護者は「学業に熱心な地域や家では運動私教育にもっと力を入れている。身体活動が子供のストレス解消にも良く、中・高生の時に勉強する体力をつけるためには幼い時に運動しなければならないと考えるため」とし「国・英・数の塾が終わった後、夜8時にテコンドー学院に行く子供もいる」と話した。

(中略)

また別の保護者は「しあ金は未就学段階から格差が広がっている。経済的条件が整い、親が気にする家では5~6歳からテコンドーやサッカー、水泳などで運動時間を作って身体能力が発達し続けている」とし「体力も『富める者が富、貧しいものが貧しく』なる傾向」と話した。



世界日報「체육 사라진 학교… 운동도 학원 사교육 [심층기획-체육교육 살리자](体育が消えた学校...運動も塾の私教育[深層企画-体育教育を生かそう])」より一部抜粋

記事に添付された写真で公開授業の様子が見られますが室内授業の際は、教室で机を隅に寄せて数人の生徒がボール遊びをしているようです。ちょっと衝撃。体育館とか無いの?

WHOの調査は2001~2016年に146ヵ国約160万人を対象に実施された調査(発表は2019年)です。が、なぜか対象国に日本は含まれていません。
日本の文部科学省が設定している標準授業時間では体育は小学校1年生が102時間(週3コマ)、2~4年生が105時間(週3コマ)、5・6年生が90時間(2.6コマ)。中学生以上は保健体育と合わせて105時間となっています。1、2年はともかく3年生以降は時間数だけ見ると日韓で大して差は無さそうです。問題は質ですかね。
日本で義務教育を受けていれば経験上分かるかと思いますが、体育の授業は天候が悪くない限り、ほぼ屋外あるいは体育館で何らか身体を動かします(マット運動が好きでした)。夏は当たり前のように水泳の授業ですけど、世界的に見て学校に専用のプールがあることは非常に稀です。
また、中学生以上は部活動が活発になり、およそ半数が運動部です。
これらの制度的な諸事情から日本が調査対象から外されたのかもしれません。

そうそう、記事中でも出て来るPISA。読解力関連の記事でたびたび触れられるOECDの学習到達度調査ですが、2022年実施分が来月の5日(日本時間19時頃)に発表されます。