韓国人女性と結婚できない韓国人男性...「今後20年間続くかもしれない」という話

韓国では出生児性比(男児と女児の出生数比率)が歪む程度に「男児選好」があったため、男性が「余っている」状態という話を以前少ししました。
その出生性比の歪みが「男児選好」と少子化の結果かつ韓国人男性が結婚できない原因であり、それにより少子化現象が再生産されている、と指摘するコラムがありました。

どういうことか。
生まれてくる子供の性別が男の子か女の子かは、ほぼ50%の確率です。1960年代の韓国は合計特殊出生率が6に迫る勢いでした。この中に男児が1人も居ない確率はたった1.5%(0.5^6)です。70年代に入ると出生率は4人に落ちましたが、男児が1人も居ない確率は6%です。
80年代に入ると出生率は2人に落ちます。そうすると男児が1人も居ない確率は25%に上がります。子供が2人居る4家庭のうち1家庭は姉妹家庭ということになります。ちょうどこの時期に胎児の性別鑑定が導入され、韓国の出生性比が歪み始めます。(また第1子より第2子、第2子より第3子の順で歪みが大きくなる傾向があります)
90年代に入ると出生率は1台に落ちます。男児が産まれる率は50%です。
ここで文化的背景にある「男児選好」の影響により、子供を一人しか産まないのであれば男児が良い、となります。
結果「男児選好」により男性が余った状態となり結婚できず、少子化に拍車が掛かっているというわけ。この傾向は今後20年続くかもしれないとコラムは指摘しています。

 



ヘラルド経済の記事からです。

韓国の未婚男性は20年の間、韓国人女性配偶者を見つけることができない[ダドリー・ポストンの韓国人口問題の考察]


世界の大部分の国で女児100人当たりの出生男児の数は105~107人程度だ。出生性比105~107はほぼ生物学的に普遍的な数値で、ここから外れる場合は極めて珍しい。出生児の性別は無作為で男児が生まれる確率は0.513だ。

(中略)
加えて説明すれば1950年の米国の出生性比は105であり、2021年現在も105だ。出生性比データが収拾され始めて以来、米国の出世性比は常に変わらず維持されてきた。このように時間の経過にも105~107程度の安定した出生性比が維持される現象は、この生物学的概念を妨害する人間の介入が無い限りほとんどどこでも観察される。

韓国の出生性比は1950年から1980年頃まで正常範囲に収まっていた。それが1985年に110、1990年には115に上昇した。その後、小幅下落したが1994年に再び115に戻った。言い換えれば1990年に韓国では女児110人当たり115人の男児が生まれたという意味だ。

(中略)

2021年の韓国の出生性比は106で正常水準に定着している。

中国、台湾、インドなど一部のアジア国家と共に韓国は1980年代から1990年代初めまで異常に高い出生性比が報告された国だ。

これらの国々がこのような出生性比不均衡を見せた理由は大きく4つの出来事、または現象によると見られる、第一に、20~30年の間に出生率が高い水準から低い水準に急落した。第二に、男児を好む思想が強かった。第三に、胎児の性別を鑑別できる技術を使用することができ、その技術へのアクセスが比較的高かった。第四に、物理的にも規範的にも中絶が可能であり、中絶手術を受けるのが比較的容易であった。この4つは韓国を始め東アジアおよび南アジアの一部の国に依然として残っている現象・事柄である。

(中略)

第1子の場合、出生性比は正常に近いが(約107)、第2子はこれよりはるかに高い。これは特に農村地域で目立つ。農村では第2子の出生性比が145またはそれ以上の場合も発生し得る。このような格差は家族計画政策の差別的適用と施行、そして先に言及した第一から第四の問題の程度の差を反映する。

なぜ韓国のような国が生物学的正常範囲を超え、高くは115に達する出生性比をもたらす人的介入をするのか。その答えは韓国の劇的な出生率下落にある。韓国の出生率は1960年に女性1人当たりの出生児数6人弱から1972年には4人、1984年には2人、2017年には1人台前半、そして2022年には0.8水準に下がった。

韓国の出生率が急激に墜落した背景には数千年間続いてきた家父長的儒教伝統の影響を受けた文化が位置している。このような文化では「男児選好」現象が明確で確固たるものだ。

(中略)

最近、韓国の親たちは数十年前に比べて子供をはるかに少なく産むが、「男児選好」という根強い儒教文化は依然として、特に今世紀初めまでも韓国に大きな影響を及ぼした。多くの家族が息子を少なくとも1人以上持とうとする理由だ。

したがって韓国の親たちは息子を得るための戦略と介入を実行した。主に2つの方法が性別確認と中絶だった。その結果、韓国では1980年頃から2010年頃まで女児に比べてはるかに多くの男児が産まれた。この過剰な男児結婚適齢期になって韓国人の結婚相手を探し始めたら、ほとんどは求婚に失敗するだろう。1980年代に生まれた過剰男性が現在結婚適齢期になり結婚相手を探している。そして今後20年間でさらに多くの過剰男性が結婚年齢に達するだろう。

(中略)

このような否定的予測を修正し、可能な代案を提示できる状況が少なくとも2つある。第一に、200万人以上の韓国系中国人が住んでいる中国北東部地域とその他の国から韓国系中国人女性が移民することだ。そうすれば、当然女性配偶者の規模が広がるだろう。韓国に向かうこの新しい移民の流れはすでに始まっている。中国上海大学の教授陣である人口統計学者ガイ・アベル(Guy Abel)とホ・ナヨン(Nayoung Heo)は2018年に発表した自身の研究で「韓国政府がすでに中国北東部地域の韓国系女性やベトナム、フィリピン、そして一部東欧国家など所得の低い一部国家出身の外国人女性の韓国移民を財政的に支援している」と言及した。

一方、韓国人男性の一部が結局結婚できず自分たちだけの人生と生計を模索せざるを得なくなる可能性もある。彼らはソウルあるいは性売買業者がより多く広がっている釜山、大邱など他の大都市で「独身居住地(bachelor ghetto)」を形成し、一ヵ所に集まって暮らすこともできる。

ホ・ナヨンは2017年、米国テキサスA&M大学で書いた自身の博士学位論文で「過去数年間、韓国では時々農村の老独身男性が韓国人女性配偶者を見つけられない場合、外国生まれ女性と結婚する可能性が高かった」と言及した。このようなことはおそらく今も起きており、今後も続く可能性がある。

1980~2010年の間に生物学的正常範囲を外れた出生性比が韓国社会に持つ含意に対する私たちの議論には矛盾的な面がある。韓国は女性1人当たりの出生児数6人に迫る出生率急増問題を世界的な基準でも非常に成功的な出生率転換を通じて克服した。しかし、まさにその成功的な転換が問題になった。韓国は社会的規範を通じて平均世帯当たりの子供数を人口代替水準(replacement level)よりはるかに低い女性1人当たりの出生児2.1人以下に制限した。しかし息子が欲しいという熱望が蔓延していたため、1980年から2010年までの30年間、多くの韓国人夫婦は息子を出産するために各種介入を試みた。その結果、同期間の韓国の出生性比は異常に高くなった。韓国の出産力の変遷(fertility transition)があまりにも早く起きたため、女児より男児を重視する傾向が少ないより現代的な家族規範が発達する時間があまりなかったのだ。

(後略)



ヘラルド経済「韓 미혼남 20년간 한인 여성 배우자 못 찾는다 [더들리 포스턴의 韓 인구문제 고찰]」より一部抜粋

ちなみに1980年代~90年代あたりの出生性比の偏りは日本では確認できません。都道府県別に見れば多少の偏りはありますが、高くても107程度のようです。
そのため、このコラムで語られている少子化の原因をそのまま日本に当てはめて考えることは出来ません。

ところで、あまりにもサラっと書かれていますが「所得の低い一部国家出身の外国人女性の韓国移民を財政的に支援している」って、直接的ではなくても要するに花嫁候補を「買っている」ということですよね?
3日ほど前に韓国のある現職教師が「国際結婚は恐ろしい」という文をSNSで書き込んで議論を呼んだという記事を読みました(これ)。
その教師が言うには、「母親(父親→韓国人、母親→外国人。これが前提)が韓国語が出来ないと子供も韓国語が出来ない」、また「父親も教育水準が低く家庭教育をやらない」そのため「小学4年生になっても韓国語が話せない子供がとても多い」よって「東南アジアの女性を『買ってくる』形の国際結婚はとても恐ろしい」というものでした。

賛否両論ありそうな意見ですね。
ただ、個人的にはその主張の是非よりも、教師が先に述べた「個人的に売買婚を悪く見るのではない」の方が気になってしまいました。お金で結婚相手を買うことに対して忌避感が無いんだ、そうなんだ...と。
これは価値観の問題と言われればそれまでで、利害が一致しているんだから良いじゃないかと言う人も居るかとは思うのですけど...どうしても「韓国」絡みであることから「慰〇婦と何が違うの?」と思ってしまうんですよね。慰〇婦は人権問題で、売買婚は利害の一致だから良いの?と。