「こんなのはじめて」という話

2日、韓国野党「共に民主党」代表のイ・ジェミョンさんが襲撃され負傷する事件が起こりました。
イ・ジェミョンさんは釜山大学病院に搬送され応急治療を受けた後、ヘリでソウル大学病院に移送となりました。しかし、どうやらこれが異例のことらしく、病院関係者は「こんなのはじめて」と困惑しているようです。

 



朝鮮日報の記事からです。

[単独]釜山大学外傷センター長「イ代表の移送、望ましくない…反対はあったが家族の意思を尊重」


「センターに詳しい外部の医師たちは『イ・ジェミョン代表は一体なぜソウルに行ったのか』と尋ねます」

釜山大学病院圏域外傷センター長のキム・ヨンデ教授は3日、本紙と会って「経静脈のような血管損傷治療は釜山大学病院外傷センターの医療スタッフが経験も豊富で全国最高水準」とし、このように話した。キム教授は「応急医学科の教科書にも出てくる内容だが、患者を移送するのは病院内でさえ多少の危険が伴う」とし「治療が到底できない場合を除けば医学的側面では外部移送は望ましくない行動」とした。

(中略)

キム教授はソウル大学病院のイ代表治療経過ブリーフィングについて「私たちが先に転院を要請したのではなく、ソウル大学病院の医療スタッフと先に通話中だった秘書室長が私に電話を渡した」とし「その際、私が患者の状況を説明し、手術が可能か確認した」と述べた。ソウル大学病院は4日のブリーフィングで「何度が高く、手術成功を断言することが難しいため、経験豊富な医師による手術が必要だった」とし「釜山大学病院の要請を受け入れて手術を準備した」と明らかにした。

(中略)

一部の圏域外傷センターの関係者はイ代表がヘリコプターでソウル大学病院に移動することに反対した。手術を準備していた圏域外傷センター所属のある教授は「私たちでやりましょう」と言ったという。キム教授は「該当の教授は直ちに手術しなければならず、移送中に緊急状況が生じることを憂慮した」とし「その点も理解できるが、患者の世話をしなければならない家族の立場も理解できたためセンター長である私の意見によって転院が決定された」と述べた。

(中略)

キム教授は「地域医療システムを正しく立てなければならないと主張する周辺の人々から連絡をたくさん受けている」とし「その方々は『地域医療を生かそうと言っておきながら、釜山から手術せずにソウルに行ってしまった』と残念な気持ちを吐露する」と話した。彼は「釜山大学病院外傷センターの水準を知っている人なら、なぜ危険を冒してあえてソウルに行ったのかと尋ねるが、移送に関しては家族が望む通りにするしかなかった」と話した。

(後略)



朝鮮日報「[단독] 부산대 외상센터장 “李대표 이송, 바람직 안해...반대 있었지만 가족뜻 존중”([単独]釜山大学外傷センター長「イ代表の移送、望ましくない…反対はあったが家族の意思を尊重」)」より一部抜粋

「単独」と付いていますが、同様の内容は他のメディアでも取り上げられています。医療関係者の目には移送は不自然に思えたようです。

釜山大学病院のセンター長の話からすると、釜山大学病院でも対応可能ではあったけれども、秘書室長が移送を念頭に既にソウル大学病院に打診をしていた、という感じでしょうか。
変だなとは思ったんですよね。大学病院に搬送されているのに応急処置だけで「移す」なんて。

ところで、センター長は患者の世話をする家族の負担云々言ってますけど、それって患者の命と天秤に掛けるようなものでしょうか?これはちょっと違和感あります。

私が受けた印象は、移送を念頭に秘書室長が動いていたことも、家族がソウルを希望したことも、根幹にあるのは「ソウル至上主義」でした。無意識か意識的かはともかく、釜山の医療はソウルより劣っている、と考えたのではないでしょうか?
医療関係者が移送について「なぜ?」を問いかけるのも、そうした気配を敏感に感じたからかもしれません。
センター長自身がそうした空気を一番感じたでしょうが、立場上その件に触れるわけにはいかず、「家族の意向には逆らえない」ということにしたのかもしれません。