拡大する旅行収支赤字...韓国人は海外旅行に行くのに訪韓客は伸び悩んでいるという話

最近、韓国では「報復旅行」と言ってコロナ禍で制限されていた海外旅行に出かける人が増えているそうです。
しかし、逆に海外から韓国に訪れる観光客は大して増えておらず旅行収支は赤字化しています。最近出た昨年11月の集計では、直前の10月の2倍の赤字でした。
THAAD事態以降、6年5ヵ月に渡って中国政府は韓国への団体旅行を規制していましたが、昨年8月に解除しました。
韓国旅行業界は「特需」を期待していたようですけれど、結果はサッパリです。旅行業界さえも中国経済に頼り切りだったという構図がはっきり見て取れます。

で、これに対して「世界が羨むKコンテンツを持ちながら活かし切れていない」とする社説がありましたのでご紹介します。医療・美容観光で誘致しようという、なかなか思い切った提言です。

 



韓国経済の記事からです。

[社説]旅行収支赤字の雪だるま...医療・美容観光で韓国の魅力を高める


半導体が景気回復傾向に乗り経常収支が黒字基調を続けている中、雪だるま式に増える旅行収支赤字が経済回復の足を引っ張っている。旅行収支は昨年11月、12億8000万ドルの赤字を出した。前月の10月の赤字額(6億4000万ドル)の2倍規模だ。これで昨年1~11月の旅行収支赤字は113億ドルで、前年同期の68億ドルと比べて2倍近く増えた。THAAD(高高度ミサイル防衛システム)配備を機に中断されていた中国人の韓国団体観光が昨年8月、6年5ヵ月ぶりに再会されたが、期待した「ユーカー(中国人観光客)徳寿」は行方不明だった。世界が羨むKコンテンツを持っていながらも、観光需要に引き出せない残念な現実だ。

(中略)

世界経済フォーラム(WEF)が主要国の観光産業競争力を評価した資料によると、韓国は2022年基準の総合評価で15位を記録したが、価格競争力では80位に止まった。観光インフラがまだ不足している上、ぼったくり料金も依然として残っている。だからチェジュの代わりに日本やベトナムを訪れるのが当然だ。

(中略)

私たちは競争力の高い医療サービスと安い診療費、短い待機時間を備えただけに「アジア医療観光ハブ」になれる潜在力が十分だ。 外国人の非対面診療を認めるなど規制改革が急がれる理由だ。 保健と美容などを結合した「ウェルビーイング観光」、Kフードスポットを連結する「グルメ観光」でも新しい付加価値を創出できる。

ところが医療をはじめ観光・ヘルスケア・コンテンツなどサービス業種規制を緩和し、税制を支援するサービス産業発展基本法は13年間国会で漂流中だ。それでも政府は争点を避けるために医療・保健分野を除いたまま立法を推進するという話まで出てくるので情けない。このような状況では観光大国への跳躍どころか赤字脱出も難しい。



「[사설] 여행수지 적자 눈덩이…의료·미용 관광으로 한국 매력 높여야([社説]旅行収支赤字の雪だるま...医療・美容観光で韓国の魅力を高める)」より一部抜粋

「世界が羨むKコンテンツ」の自画像が間違っているのかもしれませんね。
多分、韓国人の脳内では中国人たちは韓国に「来たくて来たくて仕方がない」けれど「中国政府が許さないから来られないだけ」と考えていたのでしょう。
だから団体旅行が解禁されれば「特需」が起こる、と。

しかし中国が韓国の団体観光旅行を禁止してから6年5ヵ月です。生まれた子どもが小学生になる期間です。長いです。首を長ーくして待っていたとはとても思えません。


それに、記事が言う所の「Kコンテンツ」とは一体何を指しているのでしょう?まるで「ぼったくり」さえ無ければ日本やベトナムに観光客を奪われることはない、と言いたげですが。
ドラマでしょうか?それならわざわざ韓国に行かなくても自宅で視聴できます。
Kポップでしょうか?わざわざ韓国のツアーに参加しなくても海外遠征してます(むしろそっちがメイン?)。
買い物でしょうか?コスメ品とか、ネット通販で現地並みの価格で買えます。

ざっと挙げられたのが3点だけなんですけど、代表的な「韓国コンテンツ」ですよね。これらに共通するのは残念ながら「現地に行く必要性が全くない」なんです。

だからこそ「医療」を押すんでしょう。富裕層が狙えますし、今のところ医療行為を受けようと思ったら現地に行くしかありません。(セットで「美容観光」としているのは暗に「美容医療」を指しているのでしょうが...)

ただ、これはリピーターはそうそう狙えないというデメリットがあります。だから日本でも一部で「医療」を目的に訪日観光客を誘致する動きはあるものの、あくまでオプション。メインストリーム(主流)にはなっていません。
単価は高いもののリピーターを狙えないところを一点集中で押すのはリスクが高いと思います。それに韓国は医師の成り手不足も問題になっています(参考)。国内の貴重な医療リソースを外国人観光客に開放するというのは反発を招きそうです。(そもそも「安い診療費」は健康保険があるからでしょうに)

最近は「体験」が一つの旅行トレンドといいます。
ぼったくりや観光インフラの不足を抜きにして、韓国に何か「体験」で人を呼べるコンテンツはありませんか?推すべきはそこかと。

ちなみにですが、世界経済フォーラムの主要国の観光産業競争力、2022年基準としていますが、これは発表されたのが2022年という意味です。データとしては2021年のもので、日本はこのとき1位を獲っています。とっても良いお手本になれそうな気がします。