医学部卒業生数が減少傾向の韓国、所得格差ではOECD内1位という話

最近、韓国では医師の不足が問題視されています。
2019年の医学部卒業生(韓方医含む)は2010年と比較して5%減でした。フランスとイタリアは50%以上増えています。日本でさえ18%増、米国やカナダも2桁増加と、主要国は軒並み増加傾向にある中、韓国は減少しているとのこと。
しかも2019年の卒業生数ですからコロナ禍における医療従事者の負担増は関係ありません。
コレを解消するために医学部の定員数を拡張する案が検討されています。
しかし、一言で「医師」と言っても色々です。「医学部を出てもみんな美容整形に従事するだけでは?」と考える人たちからは「医大共和国」などと揶揄されていたりもします。

医学部卒業生が減少している理由を取り上げているメディアは見当たりませんでした。単に「少子化」の影響なのか、「定員数」が少ないだけなのか...。
給与面での不満は少ないかと思います。韓国の医師の所得は一般労働者と比べて2.1~6.8倍の年収と、OECD内でも断トツの格差1位となっています。

 



聯合ニュースの記事からです。

医大生をどれくらい蓋スカ...フランスなど50%以上増加、韓国は減少


(前略)

12日、保健福祉部によると2019年の韓国医学部卒業生数(韓医学部定員750人を含む)は3827人で2010年(427人)より5%減少した。

同期間、他の主要国の医学部卒業生数は多くは2倍近く増えた。

フランスの医学部卒業生は2010年(3,740人)には韓国より少なかったが2019年には6,387人と71%増加した。
同期間、イタリアは医大卒業生数が6,732人から56%増え、2019年(1万488人)と1万人を超えた。
オーストラリアも2,662人から4,022人と医学部卒業生が1.5倍以上になった。
米国では20,469人から26,641人に30%増え、日本(18%)とカナダ(17%)でも20%近く増加した。

(中略)

福祉部に登録された医師数を見ると、1992年に4万8390人から2022年には13万4900人へと179%増加した。

単純数値では長い年月を経た増加幅は小さくないが人口1,000人当たりの医師数の場合、全体2.6人(韓方医含む)でOECD平均(3.7人)の70%に止まった。

(中略)

福祉部は最近公開した保健福祉白書で「専門医の中でも外科と胸部外科、産婦人科、小児青少年科の割合が持続的に減少している」と述べた。

このため、専攻の不足が現実に近づいている。

健康保険審査評価院の研究報告書によると小児青少年科の修練期間が3年に減ったが、今年から3年間、専攻医の志願率が現在と近いと仮定した場合、2025年には専攻医が500人ほど不足(3年間、総定員624人基準)するものと推算された。

(後略)



聯合ニュース「의대생 얼마나 늘리나…프랑스 등 50% 이상 늘때 한국은 감소(医大生をどれくらい蓋スカ...フランスなど50%以上増加、韓国は減少)」より一部抜粋

これを受けて医大の定員数を増やす方向で医師の確保を進めようとの動きがあります。狭き門戸を広げるということですね。

医大卒業=医師ではないので、この方策で医師の質がどうこうは言えません。ただ、苛烈な入試競争を緩和する(みんなに「大卒」資格を与える)ために大学の数を増やす方策を取ってきた教育部の発想と根本部分が似ている気がします。「不足」を補うために「供給」を増やせばいい単純発想というか...。


 

 



次いで、医師の「所得」について、同じく聯合ニュースの記事からです。

韓国の医師の所得、労働者平均の最大6.8倍...OECDの中で格差1位


(前略)

12日、OECDが最近公開した「一目で見る保健医療2023」(Health at a Glance 2023)によると、2021年基準の韓国医師の年平均総所得は雇用形態と一般医・専門医などの基準により全体労働者より2.1~6.8倍多かった。

代表的な高所得専門職である医師は韓国だけでなくOECDの他の国でも高い水準の所得を挙げていた。

ただし、韓国の場合、医師が他の労働者よりとりわけ多くの所得を稼いでいることが分かった。

具体的に見れば、開業医が勤務医よりも、専門医が一般医より賃金が多かった。

全体労働者の平均賃金対比で韓国医師の所得は、勤務一般医が2.1倍、開業一般医が3.0倍、勤務専門医が4.4倍多かった。

特に開業専門医は労働者平均より6.8倍多くの収入を上げ、OECD国家の中で最も大きな格差を見せた。

(後略)



聯合ニュース「한국 의사 소득, 근로자 평균의 최대 6.8배…OECD 중 격차 1위(韓国の医師の所得、労働者平均の最大6.8倍...OECDの中で格差1位)」より一部抜粋

勤務医よりも開業医が、一般医よりも専門医が所得が高くなるというのはごくごく当たり前のことだと思うのですけど、美容大国韓国の話ですからね。「何科の」専門医なのか気になる所です。

日本の場合、一番「オイシイ」のは歯科医の開業医だと聞いたことがありますが本当でしょうか?