個人回生(個人再生)件数の話

2023年の個人回生申請件数が約2万件に達したと報じられました。特に20代の若年層が、件数そのものの全体に占める割合は小さいものの、伸び率が45%と急増しているとのこと。

ただ、この公表されている数字、ちょっと変なんですよね。その辺は後述します。

 



ソウル経済の記事からです。

「借金だらけ」の後遺症...20代再生申請、1年間で45%急増


(前略)

ソウル回生裁判所が5日発表した「2023年度個人回生事件統計調査結果報告書」によると、昨年計1万9379件の事件が受け付けられた。これは受付後、審議を経て回生手続き開始決定が下された事件を基準に集計された数値だ。

個人回生件数は毎年増加傾向にある。2022年の開始件数である1万4826件と比べ、1年間で31%ほど増加した。裁判所が個人回生申請を棄却した件数まで含めた場合、この1年間で2万人以上が回生裁判所を訪れたわけだ。 特に30代以下の回生申請が3278件で前年(2255件)よりおよそ45.3%増えた。

債務者らが抱えている借金も毎年増えている。全体債務者のうち47.2%が1億ウォン以下の債務を負担しており、1億ウォンを超過する債務を負担する割合は52.8%で、2022年(48%)に比べて4.8%ポイント増加した。また、4億ウォンを超過する債務を抱えている人は全体の4.5%に上る。

(中略)

特に20代の個人回生申請の割合が16.8%に達したと集計された。最近、仮想資産や株式投資の失敗と詐欺によって、割合が2021年上半期(10.3%)と比べて6.5%上昇した。

(後略)



ソウル経済「'빚투' 후폭풍…20대 회생 신청 1년새 45% 급증(「借金だらけ」の後遺症...20代再生申請、1年間で45%急増)」より一部抜粋

数字が変な部分ですが、「1万9379件の事件が受け付けられた」の部分です。これは申請が認められて手続きが開始されたものだけだからかもしれません。しかし、それにしても少なすぎます。
というのが、昨年の上半期だけで個人再生申請件数はすでに60,191件と集計されていたからです(このうち20~30代だけは2万5244件)。韓国裁判所の公表資料で調べたデータなので間違いありません。
上半期と同等のペースで申請件数が増えていたとしたら、去年は12万件近く個人回生申請があったことになります。それで手続きが開始されたのが2万件弱だとすると、6分の1、申請件数を6万件と据え置いたとしても3分の1しか通っていないことになります。

なーんか妙ですよね?で、引っかかったのが「ソウル回生裁判所」の一文。個人回生が申請できる裁判所はソウル回生裁判所以外にも14ヵ所あります。
というわけで、裁判所公表資料を確認してきました。


大韓民国法院HPより

左端が裁判所名です。一番上が「ソウル回生裁判所」。これは去年の12月のデータですが、年間累計件数が一番下に載っています。
121,017件。これが全裁判所で申請された2023年の個人回生申請件数です。その下の89,966件が2022年の分となります。申請件数だけで3割増。

ソウル回生裁判所に限定すると24,817件となります。申請件数24,817件のうち19,379件の事件が受け付けられた(4分の3が通過)と考えれば現実的な数字になった気がします。
一応、右の方に「認可」件数(73,603)も載っているのですが、これがどの期間の認可件数なのかまでは分かりません。

いずれにしても、「ソウル回生裁判所」「回生手続き開始決定が下された事件」の2つの条件を付け加えることで数字を目減りさせていることになります。意図したことなのかどうかはともかく、「個人回生申請件数」の全体数を少なく誤認させているように思います。