徴用賠償金の代位弁済、早くも「供託」手続きへと進むも、裁判所により「不受理」という話

徴用訴訟賠償の代位弁済ですが、最高裁判決が確定した対象者15人中11人は既に政府案による第3者弁済を受け入れています。
残り4人中1人は明確に「拒否」の意思を示し、残り3人はよく分かりません。意思表示をしていない人も居るようです。
これらの人たちに対して韓国政府は賠償金に対する供託手続きを開始すると明らかにしました。
代位弁済の受給申請が始まったのが今年の4月ですから、まだ3ヵ月くらいです。正直、思ったより早く手放したな、という気がします。なんというか...言い方悪いですけど「放り投げた」とでも言いましょうか、そんな風に思えてしまいました。せめて1年くらいは「説得」のポーズを取るかと思っていたんですけどね。

しかし、韓国外交部が光州地裁に提出した供託手続き開始書類について、明確に「拒否」の意思を示していた1人について供託担当の職員が「不受理」とし、もう1人についても「書類不備」で取り下げられたそうです。

 



朝鮮Bizの記事からです。

光州地裁、徴用賠償金供託1件を不受理...外交部「異議申し立てに着手」


(前略)

外交部は「昨日(3日)、政府は強制徴用被害者のうち、すでに政府から返済金を受け取った11人との公平性などを考慮し、まだ返済に応じていない4人に対する供託手続きを開始した」とし「しかし、光州地方裁判所所属の供託公務員が、そのうちの1件の供託に対して『不受理決定』を下した」と明らかにした。供託とは、法令によって金銭などを供託所(銀行または倉庫業者)に預けることを意味する。

光州地方裁判所供託官はヤン・クムドクさんに対する供託は「不受理」し、イ・チュンシクさんに対する供託は「取り下げ」た。光州地裁はヤンさんが「返済を許さない」という書類を裁判所に提出し、供託拒否意思を明確に明らかにして不受理決定し、イさんの場合は供託書類が不備だという理由で差し戻したことが分かった。

外交部は立場文を出し「強い遺憾の意を表明する」とし「政府は(供託に対して)すでに綿密な法的検討を経たことがあり、不受理決定は法理上承服しがたい」と述べた。それと共に「直ちに意義手続きに着手し、裁判所の正しい判断を求める」と付け加えた。

また「供託公務員が形式上の要件を完全に備えた供託申請に対して『第3者返済に対する法理』を提示し不受理決定をしたことは供託公務員の権限範囲外であり憲法上保障された『裁判官から裁判を受ける権利』を侵害すること」とし「類例のないこと」と強調した。供託制度は「供託公務員の形式的審査権、供託事務の機械的処理、形式的な処理を前提に運営されるということが確立された最高裁判例」と説明した。

(後略)



朝鮮Biz「광주지법, 징용배상금 공탁 1건 불수리… 외교부 “이의 절차 착수”(光州地裁、徴用賠償金供託1件を不受理...外交部「異議申し立てに着手」)」より一部抜粋

代位弁済案を推し進める過程で、韓国政府も外交部も「法律検討の結果、第三者の財団が判決金を支給する案が可能」という説明を何度も行っていました。しかし、韓国法曹界では「前例がなく、類似判例も無い」ということで解釈が割れているようです。

別ソースになりますが、聯合ニュースが割とこの辺りを詳報していて、争点は民法第496条1項で「債務の弁済は第三者でも行うことが出来る」とした上て、「債務の性質又は当事者の意思表示で第三者の弁済を許可しないときはこの限りではない」としている部分です。
今回、裁判所が「不受理」とした人は明確に拒否の意思を明らかにしていますので、この部分に引っかかるわけです。

他にも「法律上の利害関係」という視点があります。今回、代位弁済を行う主体である財団は日本企業と「法律上の利害関係がある」と見なせません。もし、利害関係があるなら財団はこの問題を放置しておくと自身 にも法律上の問題があるので代わりに返済が可能と解釈できるのですが、そうではないので供託は出来ないということです。
仮に日本企業が財団に債務を「譲渡」すれば代位弁済は有効なので供託も可能となりますが、そのためには日本企業が弁済責任自体を認めることになるため可能性としては低い、との指摘もあります。

一方で、債務者が反対しなければ第三者は利害関係が無くても代位弁済が可能、という主張もあります。今回の場合、債務者である日本企業に明確に認識できる反対意思が無いため、財団による代位弁済は有効であり、そのため供託も有効という意味です。

いずれにせよ、もう完全に国内問題ですから「勝手に」やっていただきたい。