家計債務関連の話題です。
金利の急上昇後、不動産価格の下落と共に一時期、家計債務の上昇は緩やかになっていました。しかし6月になって再び増加傾向になり、第2四半期末時点で1863兆ウォン(うち銀行圏は1062兆3000億ウォン)と高止まりしたままです。
家計負債に関しては(関しても?)韓国当局側としては「減らしたい」がホンネのはずです。国内外あらゆるレポートで「地雷」扱いされていますから。
しかし、家計負債が経済の軸を担っていることは間違いありません。急に減られても困ります。理想としては「借りる→返す→また借りる」の循環を生みたいところ。しかし現実は完全に停滞しています。
しかもその停滞が主な消費活動を担う40代以下を中心に深刻になりそうです。資本市場研究院の出したレポートによると、35~44歳の所得対比金融負債率は146%、34歳以下は149%と分析されています。
39歳以下の金融債務不履行者に至っては約23万人。韓国金融研究院の報告だと、債務不履行者の消費活動は延滞発生直後の3ヵ月で3割以上低下し、1年後にも回復せずおよそ2割低下したままとのこと。
ヘラルド経済の記事からです。
「融資を受ける前に考えましたか?」延滞が発生するとこうなります
(前略)
韓国金融研究院(KIF)は発表した「高金利に伴う借主の消費不振程度と持続性推定」研究によれば、金利1%の上昇は借主の総負債元利金償還比率(DSR)を平均2.02%増加させ、これに伴い借主の四半期別消費支出は平均0.42%減少すると推定された。
(中略)
問題は、借金を返すために一度減った消費が長期間回復しにくいという点だ。KIFは延滞発生以後、長期的な消費経路を推定した結果、延滞発生直後の第1四半期中に借主の消費水準は平均対比で33.6%ほど低く表れ、以後第4四半期が経過した時点でも依然として平均対比23.1%低い水準であることが分かった。
民間消費は韓国経済の重要な軸であり、経済成長に欠かせない必須要素だ。
(中略)
企画財政部はKDI経済情報センターと共に発刊した「青年期の負債、これだけは知っておこう」ガイドブックで青年期の負債管理の核心として「将来的な償還可能性」を挙げている。クレジットカード代金、分割金、貸出金償還額を毎月家計に入ってくる所得で割った「所得対比負債比率」を通じて戦略的に貸出を受けなければならないという説明だ。
ガイドブックによると、所得対比負債率が25%未満なら緑、40%未満なら黄色、40%を超過すれば赤信号と診断している。負債規模が月の所得の40%を超えれば家計財政に相当な負担になるという話だ。
現実は大部分の青年が「赤信号」の状態だ。資本市場研究院の報告書によると、昨年基準で35~44歳の所得対比金融負債率が146%、34歳以下は149%に達した。分析を行ったチョン・ファヨン研究委員は「44歳以下の世帯は他の年齢グループに比べて相対的に住宅所有率が低く、不動産価格上昇と共に住宅購入、ジョンセ資金準備など不動産関連貸出が多く増えたものと見られる」と説明した。
「赤信号」に耐えられなかった青年たちは金融債務不履行者(信用不良者)になったり、裁判所に再生を申請している。韓国銀行によると、6月末基準で39歳以下の金融債務不履行者は約23万人で昨年末より1万7000人増加した。
個人回生申請者のうち30歳未満の青年比率は2020年の10.7%から2021年に14.1%、昨年は15.2%に上昇中だ。
ヘラルド経済「“대출 받기 전에 생각했나요” 연체 발생하면 이렇게 됩니다(「融資を受ける前に考えましたか?」延滞が発生するとこうなります)」より一部抜粋
2007年から5年毎に家計負債の増加を表した表が↓です。
豪州 | カナダ | 中国 | ドイツ | イタリア | 日本 | 韓国 | オランダ | スペイン | スイス | 英国 | 米国 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2007年(A) | 109 | 81 | 19 | 61 | 38 | 60 | 69 | 111 | 82 | 104 | 94 | 99 |
2012年 | 110 | 95 | 30 | 57 | 44 | 61 | 77 | 119 | 82 | 113 | 90 | 84 |
2017年 | 123 | 104 | 48 | 53 | 41 | 60 | 89 | 108 | 61 | 126 | 86 | 78 |
2022年(B) | 112 | 103 | 61 | 55 | 42 | 68 | 105 | 93 | 53 | 129 | 84 | 75 |
B - A | +3 | +22 | +42 | -6 | +4 | +8 | +38 | -18 | -29 | +25 | -10 | -24 |
2007年時点では日本、ドイツ、韓国の3ヵ国はほぼ同じ水準です。日本が微増、ドイツが微減したのに対し、韓国は約1.5倍。韓国だけどうした?って感じです。後、増加速度で言うと中国も目立ってますね。
ただ韓国の場合、家計負債そのものは増えているのですが、家計負債世帯(全世帯比63%)は増えていないという特徴があります。負債を負っている世帯が増えたのではなく、既に負債を負っている世帯の負債額が増えている(=家計負債の世帯集中度が高い)状態ということです。この世帯が、記事で指摘されている「44歳以下の世帯」です。
2022年に韓国統計庁、金融監督院、韓国銀行が発表した「2022年家計金融・福祉調査結果」だと、世帯主の年齢別に世帯負債を見ると、40代が1億2328万ウォンで一番高く、次が30代で1億1307万ウォンとなっています。
そしてこの負債を負っている人たちが返済しないのが家計負債が増加する原因です。
韓国では分割返済の割合が15%に過ぎず、満期一時返済を選ぶ人が5割を超えています。元金返済猶予期間があるからです。前にも少し書いたように思いますが、ローンを組んでから大体3年位は元金の返済が始まらないのだそうです。
つまり、その期間は利子だけの返済で済ませて元金の返済が始まる頃に新たに乗り換えローンを組んで前の分を一括返済、また3年の元金返済猶予を経て乗り換えローン...これを繰り返せば元金を返す必要は無く利子だけでマンションが手に入ります。(最終的にローンを組んだ本人が亡くなってしまえば相続放棄するか売却すれば良し。どうせマンションなので土地は無し)低金利のときは上手くいきそうに見えます。
すっごい雑に計算してみましょう。
40代の負債額1億2328万ウォンを日本円1200万円と換算して住宅ローンを年率4%(2019年の第3四半期貸出金利は3.83%)とすると、利子は年間で48万円です。月々4万円。
利子+元金せっせと完済するのと、死ぬまで月々4万円のサブスクでマンション手に入れるのと、どっちが良い?という話でしょうか。