TMON・ウィメプ問題から見る韓国経済の隠れた爆弾の話

シンガポールに本社を置くQoo10の韓国内子会社で決済遅延が発生し、それからのすぐに破綻(企業回生手続き申請)しました。
原因はQoo10の資金不足と見られています。事業拡大するために北米のWishを買収したのですが、その買収資金をTMONの売上金から「持ち出した」ことが原因ではないか、と。

Qoo10の代表は今回の決済遅延とは「関係ない」としているものの、Wish買収資金の名目でTMONから貸与を受けたのは事実のようです。しかも、TMON代表の「事後承認」という形で資金貸与を受けており、これが問題(横領)と見なされる可能性があります。

また、電子商取引業者は売上金の清算を最大70日ほど先送りにし、資金を「流用可能」な状態にすることで利ザヤを稼ぐ事実上の「シャドーバンキング」であり、事態はEC業界だけに止まらない、という懸念が出ています。

 



京郷新聞の記事からです。

ティメプが終わりではない…1500兆ウォン台の「影の金融」隠れた刃


大規模な精算遅延事態が発生した電子商取引業者であるTMON・ウィメプは代表的なシャドーバンキングだ。事実上、金融機関のようにお金を借り入れて規制は受けない「シャドーバンキング」は不良が発生すれば時限爆弾になり全業権に危険を転移させる。

(中略)

TMON・ウィメプなどEコマースは電子商取引業者であると同時に金融機関の役割を遂行している。 特に、販売代金の精算を最大70日ほど先送りし、資金を流用した部分は、まるで非認可金融投資会社を彷彿させる。

(中略)

影の金融は危機的状況から専業圏へと不良債権を拡散させる。銀行圏がTMON・ウィメプ入店業者を相手に出した839億ウォン規模の先精算貸出関連被害が代表的な例だ。先精算貸出は入店業者がまだ精算されていない決済代金を根拠に、銀行から貸出を受ける事実上の担保貸出だ。未精算の担保が信用膨張を起こしたが、その代金が途中で消え、入店業者は販売代金の損失に貸出元金の責任まで負うことになった。企業が個人回生や破産をすれば、銀行に損失が転嫁される恐れがある。

(中略)

問題は国内のシャドーバンキングがEコマース業界に止まらないという点だ。TMON・ウィメプで割引販売されたが最近決済が阻まれ紙切れになったハッピーマネーのような現金性商品券発行会社も資本金や発行限度などを規定した法的規制が全くない。支給保証保険加入もしないまま資本蚕食会社が商品券発行が可能な構造だ。カカオ、ネイバー、ビバ・リパブリカ(トス)など国内ビッグテックも内部統制遵守義務や資本健全性強化規制、公示義務などから全て除外されている。消費者保護よりは新規顧客確保を目標にして無理な営業を続け、不良化する危険が存在するという話だ。

不動産のシャドーバンキングは、その増加速度に規制が追いついていない。国際金融安定委員会(FSB)によると、2022年基準の国内ノンバンク金融圏の資産規模は10年前に比べて3倍増えた1兆950億ドル(約1508兆ウォン)に達した。このうち国内非銀行圏が保有している不動産金融は926兆ウォンで史上最大値を記録した。危機の際、金融会社や建設会社の損失、保有不動産の投売りにつながり、市場全般を麻痺させる悪循環を招きかねない。

(後略)



京郷新聞「티메프가 끝이 아니다…1500조원대 ‘그림자금융’ 숨은 칼날(ティメプが終わりではない…1500兆ウォン台の「影の金融」隠れた刃)」より一部抜粋

清算金の決済遅延と商品券を一緒にしてしまって良いのかはちょっと疑問ですが...それはともかくとして、金融業は自己資本比率など厳しい基準が課されています。取り付け騒ぎなど、万が一が起こるとそれだけ社会的影響が大きいからです。
電子商取引業者はそうした規制を受けず、言わば抜け道的に金融業と同じような利ザヤ商売が出来たりグループ間で融資の真似事が出来たりするので、抱えている「爆弾」が外側からでは全く見えません。

どうも韓国では不動産PFや家計負債、各種ローンの延滞率のような「目に見えるリスク」以外の部分でも、かなりの爆弾を抱えているようです。
TMON・ウィメプ以外にもパボサランというデザイン小物で人気のプラットフォームが先月30日、HP上で突然サービス終了の告知をして経営難を理由に破産申請を行いました。
このプラットフォームでも1ヵ月の決済遅延が発生していたようです。HPでの告知2日前には全社員が退職していたというので、TMON・ウィメプの騒動(本社前に集まって抗議)を見て退路を確保していたんでしょう。
また、この時期に事業を畳んだのも偶然とは思えません。被害額は推定50億ウォン程度でTMON・ウィメプに比べれば少額です。TMON・ウィメプの影に隠れてやり過ごすつもりだったとしたら、相当悪質だと感じます。