「合法タグ替え」の話

太陽光発電用インバータというものがあります。太陽電池パネルや蓄電池から取り出される電力は電圧が不安定なので、これを所定の電圧のAC電力に変換するための装置です。

最近、韓国のある太陽光発電部品メーカーの関係者が、韓国大手メーカーが販売しているインバーターを購入して分解してみたところ、その中身は中国産だったそうです。中国産OEMを購入してきてヒューズだけ取り替えて自社ブランドとして販売している「合法タグ替え」...イメージ的にはこんな感じです。

もちろん認証を取得しているので法的には問題無いものの、このことは消費者には知らされていませんから「裏切られた」感はするでしょうね。

 



韓国経済の記事からです。

ヒューズだけ変えて韓国製に変身…太陽光インバータ95%が「メイド・イン・チャイナ」


国内の中小太陽光部品メーカーのA社が、国内に流通するさまざまなブランドのインバータを購入したのは今年の初めだ。それなりに大金をかけて1000万~3000万ウォンのインバータを多数買い入れたのは、製品ごとにどんな部品が入っていて、その特性がどうなのか直接確認してみるためだった。インバータを分解したA社の代表は、意外な結果に開いた口が塞がらなかった。製品の表面にはHD現代エネルギーソリューション、ハンファQセルズ、暁星重工業のロゴが鮮明だったが、実際は全て中国産だったためだ。

(中略)

29日、太陽光業界によると、HD現代エネルギーソリューション、ハンファQセルズ、暁星重工業は、中国製品に自社ブランドを付ける「タグ替え」方式でインバータを販売しているが、消費者にはこのような事実を告知しなかったという。ホームページにも「中国産」という言葉はない。ビル、工場、ガソリンスタンド、商店街、小型発電所などインバータ消費者が事実上、中国産製品を買ったという事実を知る術がないという話だ。ビッグ3のうち1社の関係者は「国内で自社ブランドで販売できるKC認証を受けただけに法的問題はない」とし「価格を考えれば中国産を使うしかない」と述べた。

業界では、中国企業がタグ替えという新しい方式で韓国市場攻略に乗り出したと解釈している。中国製品に対する不信が販売拡大の足かせになると判断し、韓国企業と手を組んで新種攻略法を開発したということだ。

ビック3が最初から中国と手を組もうとしたわけではない。ビック3ともインバータを独自開発し、HD現代と暁星は工場まで建設した。だが、「規模の経済」を備えた中国企業が10~20%安い価格で製品を出すと対抗する代わりに、韓国で積み上げたブランドパワーと流通網を中国製品に着せて手数料を受け取る方式に事業モデルを変えた。

(中略)

しかし「中国+韓国の大企業」連合軍のシェアは毎年縮小しているという。中国製品が丸ごと入ってきたため、インバータ製造に必要な素材、部品、装備を作る会社も一つ二つと廃業している。

(中略)

政府の計画通りなら、太陽光発電量は現在32ギガワット(GW)から2036年72.9GWへと2倍以上に増える。新規および交換需要を考慮すると今後10年間、50GW前後の太陽光発電機が設置されるという話だ。ここに入るインバータを金額で計算すれば7兆5000億~10兆ウォンに達する。

エネルギー安保に問題になり得るという指摘も出ている。太陽光インバータの核心機能の一つである電力状態モニタリングと電力系統制御情報などがクラウドサーバーに保存されるだけに、ややもすると国家電力網情報などが中国に流出する恐れがあるためだ。最近、中国インバータ製品を全数調査したサイバーセキュリティ企業ポアスカウトは「ハッキングを通じて遠隔でインバータを制御したり、ユーザーおよび電力情報などが流出する可能性がある」という報告書を出した。このような懸念が大きくなると、リトアニアは中国産インバータの遠隔制御を防ぐ法案を通過させた。

業界では「インバータ空洞化」を防ぐために国内で生産した製品にインセンティブを与えると同時に国内産を明確に規定する認証制度を用意しなければならないと主張する。あるインバータ生産業者代表は「このままでは政府の太陽光育成政策は中国企業だけが太る結果を産むだろう」とし「国内インバータ市場を保護・育成するインセンティブが必要だ」と話した。



韓国経済「퓨즈만 바꿔 한국산 둔갑…태양광 인버터 95% '메이드 인 차이나'(ヒューズだけ変えて韓国製に変身…太陽光インバータ95%が「メイド・イン・チャイナ」)」より一部抜粋

結局最後はインセンティブ(≒補助金寄越せ)みたいになっちゃってますけど、エネルギー分野ですから安全保障という観点は大事です。