中国内の工場で製造する半導体に技術キャップ(性能制限)が課せられるかもしれない、という話

米国の半導体支援法の補助金申請が来週28日から始まるそうです。

しかしこの段階に来てもまだ韓国メディアはゴチャゴチャやっています。韓国の半導体産業に一体どのような影響があるのか、という具体的な部分に踏み込んだ記事は見かけません。正直、右往左往しているだけに見えます。

というのも、韓国政府の動きがアレだからでしょう。アレというのはアレです。つい先日(確か22日)に「中国とサプライチェーン強化のための協議体」を開催しちゃったりしてるんです。(内容非公開なので取り上げませんでした)
一応、韓国政府は「半導体は議論の対象ではない」としているんですけど、「このタイミングにわざわざなぜ?」という気分は否めませんし、このタイミングだからこそ「半導体は対象外」が、果たして中国相手に通じるのか??な感があります。(押し切られそう...)

また、中国内に多くのメモリ半導体製造拠点を持つサムスンとSKは、米国産半導体装備を中国内に輸出できないようにする輸出統制措置(昨年10月から)について1年間猶予を貰っているんですが、それが切れた後にどうなるかは一切決まっていないようです。ただ「可能性」として中国内で製造できる製品の「性能範囲」に何らかの制限が課せられるかもしれないとのこと。この措置は装置輸出に関するものなので、補助金関係なく課せられるものと思われます。

 



アジア経済の記事からです。

「韓国半導体、中国生産技術水準の限度が設定される」...米補助金の恩恵を受けるのに抵触


(前略)

23日(現地時間)、ウォールストリートジャーナル(WSJ)などによると、ラモンド長官はこの日、ワシントンD.C.ジョージ・ワシントン大学の講演で「来週火曜日(28日)から半導体支援法補助金申請を受け付ける」とし「補助金は企業が米国で半導体を生産するよう誘引しようという趣旨」と話した。彼女は半導体支援法を「根本的な国家安保政策」と説明し「私は米国がすべての最先端半導体生産企業が多く研究開発および大量製造施設を置く唯一の国家になることを願う」と話した。

(中略)

ラモンド長官は2030年までに少なくとも2つの半導体クラスタを確保すると明らかにした。同氏は「各クラスターに堅固な供給生態系と新技術革新を実現するためのR&D施設を構築する」と強調した。さらにメモリ半導体を生産すると同時に自動車や医療機器、軍事装備などに主に使われる成熟工程半導体の需要も合わせると述べた。

WSJはラモンド長官がクラスタの所在地を明らかにしなかったが、米国インテルと台湾TSMCが投資して半導体工場を建設しているアリゾナオハイオと、サムスン電子半導体投資が行われたテキサスなどが有力だと伝えた。

(中略)

同氏は「日本と最近接触し、韓国のカウンターパートとも緊密に対話している」とし「米国は今後長い間、半導体生産を同盟に依存するだろう」と強調した。続いて韓国、欧州、日本とどのように共に出来るのかについて話し合うために対話を交わしているとし「日本企業も韓国企業も米国に工場を建てて事業を行うなら補助金申請を歓迎する」と話した。

(中略)

国内半導体業界は補助金支給条件に注目している。米国は補助金を受ける企業が今後10年間、中国などの懸念国で半導体生産能力を拡大しないことで商務部と協約を締結しなければならないという条件を掲げた状況だ。中国が米国の補助金で恩恵を受けることを防ぐためのガードレール(安全装置)条項を設けたのだ。サムスン電子とSKハイニクスなど国内半導体業者が中国内の半導体工場を運営する状況で細部要件が重要な状況だ。

米国は中国内のレガシー(成熟工程)半導体を生産する従来の施設運営は制限しないと明らかにした。レガシー半導体でも生産能力を拡大する場合、大半が中国内需向けに生産しなければならない。半導体支援法にはレガシーの基準をロジック(非メモリ)半導体の場合、28nm(ナノメートル・1nmは10億分の1m)やそれ以前の世代と規定した。ただ、メモリ半導体については具体的に言及せず、ロジック半導体に準ずる基準で商務部長官が国防部長官と国家情報局と協議して決定するよう規定した。

(中略)

中国に半導体工場を稼働している国内半導体メーカーは、米国の対中半導体輸出制限の影響も追加で受けるものと予想される。これに先立って商務部は昨年10月、中国で半導体を生産する企業に米国産半導体装備を輸出できないようにする輸出統制措置を発表し、サムスンとSKハイニクスの中国工場には1年間装備輸出を包括的に許容した。

ラモンド長官の発言が出る直前の同日、米政府高官は対中半導体輸出制限措置で1年間猶予期間を適用されるサムスン電子とSKハイニクスが、中国工場生産品に対しては一定水準の制限を設ける可能性があると言及した。

アラン・エステベス米商務省産業安保次官はこの日、韓国国際交流財団(KF)と戦略国際問題研究所CSIS)がワシントンD.C.で開催した韓米経済安保フォーラムで猶予期間終了後どうなるのか、という質問に「今後どうするか企業と協議している。企業が生産できる半導体水準に限度(cap of level)を置く可能性が高い」と話した。彼は「今、企業が何『段』のNANDフラッシュメモリを生産しているか、その範囲のどこかの水準で止めるだろう」と説明した。

中国で生産される半導体技術水準を制限し、サムスン電子やSKハイニクスなど中国内の半導体工場で先端半導体を中国が確保する状況を作らないということと分析される。

エステべス次官は「(どこまで許容するかは)中国がどのように行動するかにかかっているが、韓国企業と深い対話を交わしている」と明らかにした。

(後略)



アジア経済「"韓 반도체, 中생산 기술수준 한도 설정될 것"…美 보조금 수혜 촉각(「韓国半導体、中国生産技術水準の限度が設定される」...米補助金の恩恵を受けるのに抵触)」より一部抜粋

相変わらず、どっちつかずのマイハート...いえ、どっちにもつきたいマイハートですね。米国の補助金は諦めたくない、でも中国にもいい顔したい、と。
でもこれってそういう簡単な目先の話ではなくて「米国の補助金を取る」ということは「中国市場を捨てる」ことを意味しますし、逆もしかりです。

正直、中国にいい顔をしても韓国の(メモリ)半導体の市場寿命が少し伸びる程度で、遅かれ早かれ中国市場は失うことになると思うんですが...。