尿素が無い、苛性ソーダが無い、ホウ砂が無い、ポリゾールが無い...いろいろ無い話

韓国で尿素水不足が深刻です。尿素水はディーゼル車の排ガス浄化システム(AdBlue)に使われているそうで、なくなると最悪エンジンが掛からなくなるのだそうです。
韓国は比較的ディーゼル車の割合が高く、国内車両2600万台のうち、約1000万台(約38%)がディーゼル車と推算されています(日本は約5.8%)。物流をはじめ、消防車や救急車、パトカーなどの緊急車両やタンクローリーなどの建設車両への影響も懸念されています。

発端は中国です。尿素は石炭を原材料に生産されているそうで、韓国は数年前に採算が取れないという理由で国内生産を停止し、ほとんど中国からの輸入で賄ってきました。しかしその中国が、豪州から石炭輸入を止められたことで連鎖的に尿素の生産量が落ちたということのようです。

 

 

イーデイリーの記事からです。

中国メディア、韓国「尿素水大乱」に注目..「自給自足できずに苦境」


国内で尿素水輸入品不足現象が悪化している中、尿素輸出を統制した中国が今回の事態に注目している。中国官営メディアは韓国政府が中国に輸出協力を要請したという知らせを伝え、自国の供給網の重要性を強調している。
9日、中国官営の環球網は「車両用尿素水不足危機が連日韓国メディアのヘッドラインを飾っている」とし「中国が石炭価格上昇と電力難問題で尿素輸出統制を強化し、中国からの輸入に依存してきた韓国の車両用尿素水の供給が不足し、物流業界に影響を与えた」と報道した。

環球網は与党である共に民主党のイ·ジェミョン大統領候補とキム·ブギョム首相などの発言を紹介し、中国依存度の高い韓国の状況を伝えた。さらに韓国が尿素を輸入に依存するのは関連技術がないからではなく「経済的利益」がないからだという専門家の意見も加えた。

中国の有力な澎湃(ホウハイ)新聞は「中国で尿素の輸出を制限し、ただでさえ尿素の生産と消費に困難をきたしている韓国は、車両用尿素不足の危機に直面している」とし「韓国政府は数日間、持続的にこの問題に関心を持って調整してきたが、現在としては根本的な解決策を見出せずにいる」と指摘した。

澎湃は「韓国は中国の輸出統制のほかにも韓国本土の要因も車両用尿素不足の重要な原因」とし「軽油車の比重が高い韓国は車両用尿素に対する依存度が高いが、自給自足できない現実が苦境を持続·解決しにくくする」と指摘した。

韓国外交部はすでに中国と契約した尿素尿素水原料)約1万8000トンに対する輸出通関が早急に完了するよう緊密に疎通を図っているという立場だ。しかし、いつ通関が成立するかは未知数だ。

(後略)



イーデイリー「中언론, 韓 '요소수 대란' 집중 조명.."자급자족 못해 곤경"(中国メディア、韓国「尿素水大乱」に注目..「自給自足できずに苦境」)」より一部抜粋

他にも中国に高依存していたものが色々足らなくなっているようです。

ソウル新聞の記事からです。

尿素水大乱でダンボール運送費もニ桁暴騰...「苛性ソーダ需給難度、ダンボールの価格引き上げの圧力」


尿素水大乱だけでなく、中国発のポリゾル、ホウ砂、苛性ソーダの需給難が始まりダンボール業界は三重苦に見舞われている。古紙回収·段ボール運送車両不足から、さらに苛性ソーダなど副資材の在庫も底をついている。このためダンボール価格の追加引き上げ圧力が強まり今後最終財貨価格と宅配費の上昇も見込まれる。

8日、製紙業界によると尿素水の不足により古紙回収車の運行に大きな支障を来たしている。ただでさえ古紙価格が急騰しているのに古紙回収まで難しくなると、古紙が文字通り「禁止」になっている。実際、廃段ボールの価格は今年3月、キログラム(キロ)当たり55.6ウォンから先月150.6ウォンへと170%以上高騰した。

(中略)

ダンボール業界では尿素水より大きな問題がダンボール生産のための中国産副資材の供給難だと口をそろえている。最近はダンボール生産に欠かせないポリゾール、ホウ砂、苛性ソーダのような副資材不足問題も大きくなっている。ポリゾールは印刷のための化学物質である。ホウ砂と苛性ソーダは段ボールを作る時の核心的な生産要素だ。これらの副資材も中国産がほとんどだ。最近、中国に端を発した尿素水事態のように、中国産ダンボールの副資材の供給にも問題が生じ今後、最終的な製品生産に大きな支障が予想される。

苛性ソーダはかつては韓国で生産したものの、工場の大半が中国に移転され中国産が大半だ。最近、全方位的な中国発素材需給難に北東アジア市場の苛性ソーダの先月末価格は1トン当たり700ドルで前週対比40%上昇した。

(中略)

中国発素材需給大乱により尿素水やホウ砂、苛性ソーダ、ポリゾールの価格が大幅に上昇し、全ての産業で使われていないところのないダンボール価格も同様に、再び上昇せざるを得ない状況となった。

(後略)



ソウル新聞「요소수 대란에 골판지 운송비도 두자리 폭등…"가성소다 수급난도 골판지價 인상 압력"(尿素水大乱でダンボール運送費もニ桁暴騰...「苛性ソーダ需給難度、ダンボールの価格引き上げの圧力」)」より一部抜粋

苛性ソーダって水酸化ナトリウムのことですから、そのうち洗剤不足にもなったりするのかしら?
なにはともあれ、原材料を外部に、しかも一箇所に頼るということの危険性がよく分かる事例です。

また、中国はあくまで「自給自足できない国の脆弱性」との観点での話しかしたがらない様子ですが、中国国内でも相応の混乱・異常が起こっているのかもしれません。

余談として、記事内で「古紙が文字通り『禁止』に〜」というのは、「古紙」と訳した部分を原文では「廃紙(폐지)」としてあり、これが「廃止(폐지)」と同じ表記になるためです。