祝賀ムードに水を差されたような気分でちょっと腹が立っています。
こんな御目出度い日に徴用工問題に動きがありました。
不二越さんの方は調査中です。
取り急ぎ、日本製鉄さんの状況をまとめておきます。
共同通信さんの記事によると原告側代理弁護士が裁判所に資産売却の命令を出すよう申請したそうです。
対象となっている日本製鉄の資産
PNR株式会社(POSCO-Nippon Steel RHF Joint Venture、Co., Ltd.)という会社があります。
韓国最大手の製鉄メーカーであるポスコと日本製鉄の合弁会社として設立されました。
持株比率は ポスコ 7:3 日本製鉄 です。
製鉄、製鋼の過程で発生するゴミや水を処理するリサイクル事業を行っています。
今回の差し押さえ&売却対象となったのは、このPNRの日本製鉄持ち分の30%の株式です。
日本経済新聞社の報道では株式19万4千株、昨年の中央日報の報道では289億ウォンとなっています。
株数はともかく価格は事業報告書の資産から単純に算出したものだと思われます。
※5/2追記
株式19万4千株はそのままですが、金額が「9億7400万ウォン相当」とされているので、持ち株全てが対象ではなく一部のようです。
残りを「余地」として取ってあるのか、このくらいなら「買い戻す」だろう、と踏んでいるのか…。
非公開株の売却は難しい
差し押さえられたのが上場企業の公開株であれば、市場が値段を付けてくれるので大した問題にはなりません。
ですが、PNRは上場企業ではなく、ポスコと日本製鉄だけが持っている非公開株です。
株式市場では売れません。
どの程度の価値があるかは誰にも分かりません。
しかも、この手の非公開株式には大体「譲渡制限」が付けられていることが一般的です。
「譲渡制限」というのは、「株式自体の競売はできるが、会社に対して株式の移転の効果を主張できない」という制限がつきます。
PNRの株式を競売で手に入れても、会社側が拒絶すれば株主とは認められません。
その場合、競売で株式を手に入れた人は「譲渡承認請求」を行う必要があります。
「正式に譲るよう」要求するわけです。
非常にめんどくさいですよね。
そして最大の問題が、非公開株式は買い手が付かない可能性が高いということがあります。
なぜなら、上場株と違って決算書が公開されていないからです。
ほぼ情報が手に入らない会社の株を欲しがる人はまず居ません。
原告側の狙い
買い手が付く可能性が低い非公開株の売却手続きをなぜ進めるのかですが、原告側は何を狙っているのでしょうか。
一つは、今までの延長でポーズを見せているだけ、という見方です。
新天皇即位、令和改元の祝賀ムードに水を差してやろう、というつもりでしょうか。
前回の三菱さんの特許売却警告が3月末で、その前は2月末でした。
大体一ヶ月に一度のペースで話題を作りに来ています。(定期連絡?)
もう一つの見方は、原告側が狙っているのは日本製鉄に買い取らせること、またはポスコ、PNR自身に買い取らせることかもしれない、ということです。
非公開株に買い手が付かないのは、情報不足によるものです。
非公開株が競売に掛けられた際に入札する典型的なクラスタは当該会社の役員や従業員、取引先企業などです。
つまり内情を知っていれば判断が出来るわけです。
しかも関係者であれば、会社側から拒絶される可能性はありません。
個人的には話題作り兼、時間稼ぎだと思っています。
株式の差し押さえ、というとインパクトが大きいですが、やっていることをよくよく見ていくと、非効率的なのですね。
原告側の代理弁護士さんがわざわざ「実際の売却には3ヶ月ほどかかる」と教えてくれていますので、それまでに交渉のテーブルについて欲しいのでしょうね。