慰安婦合意関連文書開示請求訴訟、原告敗訴で最終判決が出た話

2015年の慰安婦合意の関連文書を韓国外交部は「非公開」としていました。理由は「国益を棄損する恐れがあるから」です。
日本との合意文書の内容が後ろめたいというより(それもあるかもしれませんが...)、今後、他の国と合意を結んだ際、ホイホイと事前協議の内容を開示してしまっては国家の信頼に関わる、ということです。

これに対してソン・ギホさんという弁護士が「国民の知る権利」を根拠に開示請求訴訟を起こしていました。この人の経歴を調べてみましたが、あまり詳しくは分かりません。ただ、過去に左派系インターネットメディアとされる「プレシアン」に大量の寄稿文を掲載しており、そこからかなり政治的発言の多い人だな、ということは分かります。

ソン・ギホさんの開示請求訴訟は1審は原告勝利、つまり文書の公開が認められましたが、韓国外交部は上告し2審で原告敗訴となりました。そして昨日1日に最高裁が2審判決を支持し、文書非公開の最終判決が確定しました。

 



京郷新聞の記事からです。

慰安婦合意文書非公開正当」最高裁が無視した「被害者の知る権利」


(前略)

最高裁判所3部(主審イ・フング裁判官)は1日、ソン・ギホ弁護士が韓日両国の慰安婦問題合意過程で議論した内容を盛り込んだ文書の一部を公開せよ、と外交部長官を相手取って起こした情報非公開処分取り消し訴訟上告審で、原告敗訴判決を下した原審を確定した。

(中略)

「国民の知る権利」と「外交国益」を巡って交錯した1・2審

1審は「協議関連文書をすべて公開しなければならない」とし、ソン弁護士の手を挙げた。文書を公開しないことで保護される国益は国民の知る権利より大きいとは言えないとされた。裁判所は「日本軍慰安婦被害者問題は被害者個人として決して消えない人間の尊厳性の侵害、身体自由のはく奪であり大韓民国国民として国民の一員である被害者をまともに察知できなかったことに責任感を持つ非常に重大な事案」とした。それと共に「12・28合意で日本軍慰安婦被害者問題が最終的、不可逆的に解決されるならば、被害者だけでなく大韓民国国民は日本政府がどのような理由で謝罪および支援をするのか、その合意過程がどのような方式で進行されたのかを知らなければならない必要性が大きい」とした。

2審の判決は違った。2審裁判所はソン弁護士が請求した情報が外交関係などに関するものであり「公開される場合、国家の重大な利益を顕著に害する恐れがある」とした。文書が公開されれば日本と築いてきた外交的信頼関係が深刻な打撃を受けかねず、今後他国と条約や協定を締結する際に困難が生じる可能性もあるとした。1審が「被害者と国民の知る権利」を優先したとすれば、2審では「外交上の国益」により傾いたことになる。

2審判決は事件当事者の声を反映できなかったという批判を受けた。判決に先立ち日本軍慰安婦被害者の一人であるキル・ウォンオク氏は裁判所に「日本が慰安婦問題の真実である強制連行を認めたかどうかを国民に知らせてくれることを切に訴える」という訴え文を出したが、裁判所は受け入れなかった。

最高裁判決で完全に排除された「被害者の知る権利」

この日、最高裁控訴審判決をそのまま維持し、韓日合意過程で慰安婦被害者の知る権利は完全に排除された。政府に登録された慰安婦被害者は計240人で、2017年1審勝訴の時までは40人だった被害生存者は多数が高齢で死亡し、今年5月基準で9人に減った。彼らの平均年齢は94.4歳だ。外交部は文書が生成されてから30年後に該当文書を公開するかどうかを決めることになるが、すでに高齢者被害者たちが今から22年後の2045年に文書内容を確認する可能性はほとんどない。



京郷新聞「“위안부 합의 문서 비공개 정당” 대법원이 외면한 ‘피해자의 알 권리’[플랫](「慰安婦合意文書非公開正当」最高裁が無視した「被害者の知る権利」)」より一部抜粋

徴用訴訟では散々「最高裁判決」を盾に日本企業に賠償履行を迫っていたのですから、今回も「最高裁判決」を尊重して欲しいものです。

どうやら日本側が「強制連行」の「法的責任」を認めていたか否かが知りたかったようです。が、合意文に盛り込まれなかった以上、それが答えではないでしょうか?