以前は、個人利用であるなら中国企業へデータが流れることを気にしないのであれば好きに使えば良い、企業の場合は、米国との取引がある場合、セキュリティ上の不備を理由にビジネスチャンスを逃す可能性があるので、シビアな問題、という見方をしていました。
ところが、米国がエンティティリスト*1にHuaweiを加えたことにより急転直下、個人利用においても留意しておくべき問題が色々と出てきてしまいました。
とは言いつつ、Huaweiには少し頑張ってもらえるとスマートホン市場が面白くなるかもしれない、とちょっと勝手な期待を抱いています。
排除されるHuawei
Googleサービスからの締め出し
米国が本気でHuaweiを潰す気があるのかどうかは分かりませんが、Huaweiのスマホは基幹技術とソフトの大部分を外国企業、団体に依存しています。
最たるものがAndroid OSを提供している米国企業Googleです。
今回、Huaweiがエンティティリストに登録されたことを受けて、Googleは新規のHuawei向けのアプリ、及びサービス(Google Playストア、Gmailなど)の提供を停止すると発表しました。
既存製品については継続利用可能ですが、Android OSのアップデート対象となるかは不透明です。
Android自体はオープンソースとしてソースコードが公開されていますし、誰でも入手して自由に利用可能です。
それを用いれば、独自にアップデートに対応し続けることは可能です。
ですが、既存製品はそれで良いとしても、新製品はそうはいきません。
Googleのサービスを利用するためにはGMSライセンスというのが必要になりますが、新製品にはそのライセンスが発行されなくなるのでGoogleサービスのアプリをプリインストールして出荷できなくなります。
Google Playストアが無ければアプリは追加できません。スマホはアプリが追加できなければ、ただの「ネットが使える電話」です。
Googleサービスからの締め出しは、中国以外の市場ではかなり堪えるはずです。
Huaweiは、2012年ごろから独自OSの開発に着手していたという噂があります。
7年も前ですから、とっくに完成していてもおかしくありませんが、製品として投入してこなかった背景には、Googleサービスと、そこで提供されているソフトウェアリソース(Google Playのアプリ)の存在が大きかったのでしょう。
過去にサムスンが独自OS「Tizen」を開発していましたが、Androidの市場を切り崩すことが出来ずに開発から撤退した、という事がありました。
各種共通規格からの締め出し
1. SDカードの標準規格
SDアソシエーションという非営利団体があります。
SDカード(microSDカード含む)の規格を管理する団体です。
管理対象は、SDカードだけでなく、読み込むためのポートデザインも含みます。
この協会に登録していない企業は、正式にSDカード対応を謳った製品の製造・販売は出来ません。
米国がHuaweiをエンティティーリストに追加した後、協会のメンバーリストからHuaweiが削除されました。
Huaweiはハイエンドモデルに独自規格であるNMカードを採用しています。
今後出る新製品では、SDカードからNMカードに置き換わっていくことが予想されます。
独自規格のカードは、メーカー側は品質の管理がしやすくて良いのですが、消費者側からすると汎用性がなく不便です。
かつてSonyが独自規格のメモリカード、メモリカードDuoを採用していたことをご存知の方は分かるでしょうが、データをPCに読み込むだけでも対応したカードリーダーが必要になる、他メーカーへ機種変をすると使えなくなる、などの問題があります。
2. Wi-Fiの標準規格
Wi-Fi AllaianceはWi-Fiの相互接続性を確認する認証試験と、試験にパスした製品に対してWi-Fi-認証を発行しています。
この団体が、Huaweiの参加を「一時的に制限した」と表明しました。
これもやはり、Wi-Fi対応を謳った製品の製造・販売が出来なくなります。
3. 半導体標準規格
半導体標準規格化を進めるJEDECへの加盟を、エンティティーリストから削除されるまでHuaweiが自主的に停止することを通達したとのことです。
試験手法や製品の標準規格などの策定を行う団体です。
ここからの脱退や資格停止は、消費者に直接的な影響は無いと思われます。
影響がどこまで拡大するか不透明
今の所、既存の製品は引き続き利用可能となっています。
ですがAndroid OSのアップデートがどこまで対応されるか分かりません。
Googleの現時点での発表では「とりあえず、現在出荷済みの端末については継続してサービスが使えるよ」ということしか分かりません。
Google自体がどこまで影響するか把握できていないのが現状ではないかと思われます。
Huawei側はさらにはっきりせず「大丈夫」としか言わなかったようで、こうした対応に不安を抱いた日本の三大キャリアが新機種の予約を停止しました。
買ったは良いが使えない、となると一番ワリを食うのは消費者ですからね、懸命な措置だと思います。