三菱の社報が強制徴用の証拠という話

「強制徴用の証拠」とされる資料が見つかった、との報道がありました。


「徴用」という言葉には、既に強制性という意味があるので「強制徴用」は日本語としては間違った単語になるのですが、原文を訳すと「強制徴用」となるので、あえてそのままにします。
なぜなら、記事内で「徴用」と「強制連行」の区別を付けずに一緒くたにした「強制徴用」とすることで認識のスリ替えを行っているからです。


日本は「女子挺身隊」も「徴用」も否定していません。「強制連行」を否定しています。(ココ大事)


ニューシスの記事から一部引用します。

「勤労挺身隊、強制徴用の証明」三菱社報公開(総合)


(前略)

太平洋戦争当時、日本が軍需企業労働に強制動員した事実を立証する証拠として戦犯企業が発行した社報が23日公開された。
強制動員被害者の訴訟を支援する日本の市民団体「名古屋三菱女子勤労挺身隊訴訟支援会」の髙橋誠代表は23日午後、光州西区の光州市議会市民交流室で開かれた懇談会で「三菱重工業社報40年史」(1945年8月基準)を公開した。

社報は髙橋代表が10余年前に日本の某大学図書館で見つけたもので、従業員の勤務状況が書かれている。
現況には「工員(全従業員)」数34万7974人に対する具体的な分類が書かれている。このうち「普通労働者」のほかに 「特殊労働者」に分類される中に「女子挺身隊」が9465人勤務したという記録がある。

また、当時の朝鮮人を指す「半島人」という大分類には「徴用」と「非徴用」の従業員がそれぞれ1万2913人、171人と書かれている。

社報の中の「女子挺身隊」と「徴用半島人」が強制動員被害者を正確に示すかは確認されなかった。しかし、「女子挺身隊はなかった」「強制徴用はなかった」と主張し続けてきた日本政府と極右の主張とは正反対の資料だ。
(後略)

ニューシス「'근로정신대 강제징용 입증' 미쓰비시 사보 첫 공개(종합)(「勤労挺身隊、強制徴用の証明」三菱社報公開(総合))」より一部抜粋


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「三菱社報40年史」のコピー。ニューシスソース記事より。


記事では「工員(全従業員)」となっていますが、正しくは全従業員ではなく、「工場現在数」です。工場勤務者以外にも従業員はいますからね。


ところで、部分抜粋したところの最初の文(導入)と最後の段落(結論)だけ繋げて読んでみると変な文章になると気が付かれましたか?


「日本が軍需企業労働に強制動員した事実を立証する証拠の社報公開」→「社報の中では強制動員被害者を示すかは確認されなかった


「証拠が出た」って言っているのに「立証できない」って、完全に破綻しているんですよ。 そこが一番大事で、そこが確認できてこその証拠では? と思うのですけれど、いかがでしょう?


で、「女子挺身隊」と「慰安婦」を混同する方法と、「徴用」と「強制連行」をくっ付けて「強制徴用」という珍妙な言葉を使用することで認識のスリ替えを行い、「日本が否定している『女子挺身隊』『強制徴用』は存在する」 という結論に導くわけです。

でも最初に言いましたように、日本は「女子挺身隊」も「徴用」も否定していません。存在を認めています。ただし、「労務動員」としてです。否定しているのはあくまで「強制連行」です。
これは「慰安婦」についても全く同じで、日本は「慰安婦」の存在は認めています。否定しているのは軍や政府による「強制連行」です。


徴用には強制性がありますが、これは国家総動員法第4条に規定された勅令(国民徴用令)によるものだからです。謂わば国民の義務です。
当時、朝鮮系日本人だった半島の人たちにも、同じ日本人としての義務が課せられたに過ぎません。