ユニクロ創業祭のヒートテックプレゼントを「嫌韓マーケティング」とする話

ユニクロさんは年に2回、創業祭を行っています。
日本では誕生感謝祭という名称で、11月22日〜25日に実施されるようですが、韓国では一足先に始まっています。
で、このときにノベルティグッズとかクーポンとか、何かしら配るのが定番になっています。過去にはタンブラーなどもありました。(デカデカと「UNIQLO」ロゴが入っているので、外で使うにはなかなか勇気が試されるデザインでしたが…)

今回、日本では10,000円以上の購入で1,000円分のクーポン券が貰えるらしいです。韓国では購入金額に関わらず、数量限定・先着順でヒートテックが貰えるそうです。どっちがいいですか?

かなり盛況なようですが、韓国メディアでは、これを「日本ボイコットに対抗した無料マーケティング」という見方で捉えている所があるようです。


関連した記事を3本ほど紹介します。


アジア経済の記事からです。

ヒートテックもっと無いんですか」ユニクロ「無料肌着」の人気...「ボイコットジャパン」揺れる


ユニクロの「ヒートテック」贈呈イベントをめぐる議論が続いている。オンライン・コミュニティ、ツイッターなどのSNSには、ユニクロヒートテックを受け取る人々の写真を撮影して掲載し、「肌着乞食*1」と非難している。

日本製品の不買が続いている中で「無料」の前にプライドも捨てた人々というのが非難の主な内容である。

ユニクロは15日から代表商品であるフリースとカシミアセーター、ダウンベストなどを1万〜4万ウォン割引する「15周年記念冬の感謝祭」を行っている。

ヒートテックの贈呈イベントが行われ、先週末からソウル首都圏など、一部の店舗では一日の準備量がすべて品切れになるほどユニクロを探す人々が増えた。

(中略)

しかし、これらを眺める視線は冷ややかだ。SNSでは「無料なら本当に何でもする人」、「日本製品不買運動に水を差す人」、「プライドもないのか」など非難の声が続いている。

また、店舗の前に無料ヒートテックを受けるために並んだ写真がアップされ非難はさらに拡大している。最初から「あの人は韓国人ではなく、日本人ではないのか」という言葉まで出てくるほどだ。

一方、一部のネチズンは「消費者の権利」であり「これは個人の選択である。(不買運動を)強要しなければ良いだろう」などの反論意見も続いている。

(中略)

チョン・オヨン韓国学中央研究員客員教授は去る18日、自身のSNS「『朝鮮人たちは無料であれば膝が曲がる』などが日本人の代表的な嫌韓談話だった」としヒートテック無料配布は『攻撃的マーケティング』ではなく『嫌韓マーケティング』」と主張した。

(後略)

アジア経済「"히트텍 더 없나요" 유니클로 '공짜 내복' 인기..'보이콧 재팬' 흔들리나(「ヒートテックもっと無いんですか」ユニクと「無料肌着」の人気...「ボイコットジャパン」揺れる)」より


「『朝鮮人たちは無料であれば膝が曲がる』などが日本人の代表的な嫌韓談話だった」

「膝が曲がる」は、厳密には「ひかがみ*2を伸ばすことができない(오금을 못 편다)」となっているのですが、ちょっと日本語ではしっくりきません。
「膝が伸ばせない」→「足がすくむ」→「手も足も出ない」くらいの意味に捉えるのが適当じゃないかと思います。


それはともかく、贈呈イベントが嫌韓マーケティングイベントとは初耳です。

ヒートテックを受け取れ」なんて強要はしていませんから、あくまで消費者の自由意思なんですが、いつも通り内輪に敵を見つけて同士討ちしています。
なんとか日本(ユニクロ)を悪者にしようとして出してきたのが「ヒートテック無料贈呈イベントは嫌韓マーケティング」という意味不明な理屈です。


この「嫌韓マーケティング」については朝鮮日報が「陰謀論」との見方を記事にしていました。

[NOW]ユニクロヒートテックプレゼント「嫌韓マーケティング」と非難されて


去る7月、日本製品不買運動が開始されて後、代表的な日本ブランドとして攻撃を受けた衣料品会社ユニクロが最近、防寒肌着(内衣)プレゼントイベントを行ったが、今回は「意図的な嫌韓嫌韓マーケティング」という非難に苦しんでいる。ユニクロは他の多くの国で似たようなイベントを進行したが 「韓国人がタダが好きという認識を広めるために今回のイベントを企画した」という陰謀論が出ている。



(中略)

ユニクロの関係者は「今年は韓国進出15周年を記念して準備した行事というだけで、他の背景はない」とした。

朝鮮日報「[NOW] 유니클로 히트텍 무료증정 '혐한 마케팅' 비난받아([NOW]ユニクロヒートテックプレゼント「嫌韓マーケティング」と非難されて)」より


先の記事で紹介したチョン・オヨン客員教授SNSにアップした意見を「陰謀論」としています。さすがに冷静です。
プレゼントイベントとか、クーポン券進呈とか…創業祭や決算セールのような少し大きなセールイベントのときは、さして珍しくないことですからね。

実際、ユニクロは米国、豪州、カナダなどでも同様のプレゼントイベントを実施しています。
チョン・オヨン客員教授の言でいくと、これは「欧米人がタダが好き」という認識を広めるための、反米反豪反加キャンペーンイベントってことになってしまいます。(あ、日本でもやってるから反日キャンペーンでもあるのか…)


デイリー1の記事では、便乗商法…というと失礼かもしれませんが「愛国マーケティング」というオブラートで包んだ便乗商法が行われていることが触れられています。

ユニクロヒートテック大乱」...「それでもプライドは守る」

(前略※記事の前半はアジア経済のものとほぼ同じ。恐らくソースが同じ)

似たような時期にトップテン*3ユニクロが進行する贈呈イベントの二倍量で対抗している。トップテン成人服店149ヶ所で、過去4日間に準備した物量の半分にあたる10万枚が排出された。オンエア*4贈呈イベントはトップテン全体の売上高の増加にも繋がっていることが分かった。

トップテン関係者は「これまで日本のSPAブランドの対抗馬として消費者の多くの支持と愛を受けた」とし「韓国人に日本産の肌着を与えないというヨム・テスン新星通商会長の誇りで作られた製品であるだけに感謝のイベントを準備した」と述べた。

デイリー1「"유니클로 '히트텍 대란'…"그래도 자존심은 지킨다"(ユニクロ「ヒートテック大乱」...「それでもプライドは守る」)」より


こちらの記事ではユニクロの客が戻っているのはヒートテック無料マーケティングの間だけ。終わればまた閑散とするし、売上増加には繋がらない」という見方になっていました。
それに対して、対抗馬であるトップテンは「売上増加に繋がっている(ドヤァ)」というわけです。

ユニクロは海外店舗の売上を逐一公開していません。あちらのメディアはクレジットカードの決済情報で色々と報道が出るのですが、それがどの程度的を得たデータになっているのかは、正直なところ分かりません。


ここまでくると、メディアの煽りが強すぎて一般的な感覚とは随分ズレているように思えます。
普段からユニクロを利用している(していた)人なら創業祭に大規模なイベントを実施することは知っているはずですから、今更、ヒートテックプレゼントくらいで「嫌韓マーケティング」説を真に受けたりしないように思うのですよねぇ…。


*1:原文「내복 거지」

*2:膝の後ろ。関節の凹んでいる部分。

*3:韓国のファストファッションブランド。

*4:ユニクロヒートテックに相当するトップテンのインナーウェア。