ソウルで髪の毛を掴まれて引き倒された女性の裁判の話

8月23日頃に韓国のソウルで、日本人女性がナンパ男に「暴行」された事件の裁判についてです。(以前の記事はこちら
被告人の30代男性は容疑を「否認」したそうです。

ちなみに、民事ではなく刑事裁判です。警察はこれを「暴行事件」として処理、検察が起訴したということです。


ちょっと長いのですが、当時の状況についての証言が詳しく報じられています。
イーデイリーの記事からです。

「ナンパ断ると殴って」...弘大暴行事件の日女性、法廷で「涙」


ソウル麻浦区弘大近くでナンパを拒否した日本の女性を暴行した疑いを受け、30代の韓国人男性が裁判で容疑を否認した。検察は日本の被害者と現場で一緒にいた日本人の友人と事件当時、連絡を受けて現場にやって来た韓国人の友人を証人として申請して訊問した。

27日、ソウル西部地裁刑事9単独(裁判長パク・スヒョン)は、侮蔑・暴行の疑いで拘束起訴されたパン某(33*1)氏の裁判を開いた。この日、被害者である日本女性A(19)氏と彼女の日本人の友人B氏、韓国人の友人イム(23)氏が証人として出席した。拘束状態であるパン氏と顔を合わせないように幕を設置した状態で証人尋問が行われた。

◇日本女性の涙の証言

被害者A氏は、法廷に出席しパン氏から膝で顔を打たれたと証言した。A氏は「ナンパを拒絶すると態度が急変して悪口を浴びせてきたし、証拠を残そうと映像を撮影すると、腕を打ち、後を追ってきて髪の毛を掴んで下に振り落とした」と述べた。パン氏の弁護人が映像を撮影した理由を聞くと、「日本でも韓国人に会ったことがあるが、助けを借りることが出来なかった記憶があって証拠を残さなければならないと思った」と涙をこぼした。

先のパン氏は8月23日に韓国を訪れたA氏一行に「一緒に遊ぼう」と声を掛けたが、A氏一行が付いて来るのを止めようとすると「Xパリ」、「AV俳優」など卑下表現で侮辱した疑いを受ける。また、これを撮影するA氏の髪の毛を掴み地面に振り下ろすなど暴行の疑いも受けている。

事件当時、A氏一行から助けを求める連絡を受けて現場に行ったイム氏も証人として出席した。イム氏は「当時A氏が『パン氏が悪口で応じてきて髪を掴んで痛い』と泣きながら話していた」とし「パン氏に謝罪を要求したら『男だから膝をついて死んでも謝罪できない』と言った」と証言した。

事件現場にいた日本人の友人B氏は「パン氏が膝でAの頭を攻撃した」とし「暴行された直後にA氏が頭、首、腕などに痛みを訴えた」と述べた。続いて「暴行直後に謝罪を受けたりしたが真正性がなかったと感じられたので翌日、暴行映像をツィッターにあげた」と付け加えた。

◇「膝攻撃があったのか」が争点

争点は、パン氏の膝がA氏を攻撃したかどうかだ。両方の間の主張が交錯している。A氏は法廷で「髪の毛を捕まれ、地面に倒れた時は、その衝撃で覚えていなかったが、(暴行シーンが写った)映像を見て(パン氏が)膝で顔を攻撃した事実を知った」とし「暴行による嘔吐と寒気を感じて応急室へ行った」と所見書と傷害診断書を提出することを明らかにした。

パン氏は引き続き、膝で顔を攻撃した事実はないと主張している。過去の裁判でパン氏は「侮辱容疑は認めるが暴行ではない」として容疑を一部否認した。パン氏の弁護人は「顔の部位を膝で攻撃して転んだ事実はない」とし「A氏が証拠として提出した脳震盪事実も認められない」と主張した。

この日の裁判でもパン氏は「最初に投稿されたツィッターも髪を掴まれたという話があるだけ顔が膝に当たったという話はない」と否定した。A氏は「当時は記憶が混乱しており、感情的になっていたので話をしていないだけ」と反論した。

(中略)

A氏と一行は当時の暴行と悪口のシーンが収められた映像6個を法廷に証拠として提出した。映像にはパン氏が「XバリXXXあ」「XのようなXよ」と罵倒する場面と、撮影するA氏の手を叩いて画面が揺れる様子、A氏の髪を掴んで振る姿などが含まれている。

パン氏は暴力事件の前科が多数あり、執行猶予期間中に犯行を犯したことが明らかになった。検察は、パン氏を拘束する必要性が認められると判断した裁判所が礼令状を発行し、拘束状態で裁判を受けている。


イーデイリー「"헌팅 거절하자 때려"..홍대 폭행사건 日여성, 법정서 '눈물'(「ナンパ断ると殴って」...弘大暴行事件の日女性、法廷で「涙」)」より


この程度、というと語弊があるかもしれませんが、凶悪犯罪というわけでもなく、証拠隠滅の恐れもないのに勾留されているというのが不思議だったのですが、前科持ちの執行猶予中だったんですね…心証としては被告人に不利ですね。


韓国では喧嘩のときに相手の髪を掴むそうです、普通に。韓流ドラマとか観てるとよく見る光景だそうです。
日本だと胸ぐらを掴み上げる感覚で髪の毛を掴むんでしょうかね。

だから「髪を掴んで引き倒す」ことは暴行に当たらないと考えるのでしょうか?
「膝攻撃があったかが争点」って、そういう意味ですよね?ニーキックが入っていなければ、腕を叩こうが髪を掴んで揺さぶろうが、地面に引き倒そうが「暴行」には当たらない…というのが被告人と弁護人の主張と受け取れます。

あと、弁護人が言っている「顔を膝で攻撃して転んだ事実がない」という主張が不思議です。「倒れてから膝が入った」というのが被害者側の訴えのように思えたのですけれど、弁護人が「ニーキックで転んだ」に対して反論しているのであれば、話が噛み合いません。


「Xパリ(原文「X바리」)」の「X」は放送禁止用語などの伏せ字によく使われるのですが、日本人に対して「パリ」の付く侮辱表現と言えば「チョッパリ(쪽바리*2」でしょうね。

事件当時、YTNが加害男性へ独占取材を行った際の報道では侮辱発言は日本人女性側が行ったということになっていましたが、逆だったようです。(よくあるパターン)


被害者のAさんの証言で「日本でも韓国人に会ったことがあるが〜」の部分、少し分かりにくいので補足しますと、別ソース記事によると、彼女はこのときも韓国人男性からナンパ(通称「ハンティング」)されて、断ると暴行を受けたそうです。

普通なら、この時点で「韓国人」ひいては「韓国」という国そのものに対して否定的な感情を持ってもおかしくありません。
彼女は韓国人の友人も居るそうなので、「こんな人ばかりじゃない」とちゃんと分かっていたんでしょうね、友人と韓国旅行を楽しめる程度には韓国に対して好感を持ち続けていたようですが……今回ばかりはどうでしょう。妙なトラウマを抱えることがないよう願います。


*1:8月に報道が出た時は35歳になっていた気がするが…。

*2:「쪽발이」「쪽빠리」など、表記の種類がいくつかある。ハングル表記として正しいのは「쪽발이」。元々は「双蹄」の意味。