米シンクタンクによる「助けにならない同盟」の話

米国の保守系新自由主義)のシンクタンクであるケイト研究所が、米国にとって価値のない(国益に適わない)同盟を破棄しよう、という趣旨の提言報告書を公表しました。


前提として、ケイト研究所はもともと在外米軍基地の閉鎖と他国の戦争への不介入を提唱し続けている組織です。

掲げる理念の一つに「個人の自由の尊重」が挙げられており、その観点からの「不干渉・不介入」提言です。他にもマイノリティへの積極的な差別是正措置を批判するなど、極端な個人の自由を尊重する傾向があることを前提としてお知らせしておきます。(極端な個人主義は突き詰めれば弱肉強食)

日米同盟についてもずっと批判的な立場なので、特に目新しい内容ではなさそうですが、米国が日本に「何を」望んでいるのかは分かりやすく出ていると思います。


朝鮮日報の記事からです。

米保守シンクタンク「助けにならないドイツ・日本・サウジとの同盟を切るのだ


米保守性向シンクタンクであるケイト研究所が米国の同盟再編が必要である、という報告書を発表した。
(中略)

この研究所は米国の助けにならない同盟で、サウジとトルコ、エジプト、ドイツ、イタリア、スペイン、日本、フィリピンなどを取り上げた。過激な主張かもしれないが米国保守勢力内で起こっている、同盟に対する不満を忌憚なく見せてくれたという評価が出る。今回の報告書では韓国の名前は取り上げられなかった。しかし、この研究所は過去に韓国が十分に自らを防衛する能力があるとして、在韓米軍撤収を主張したりした。


(中略)


◇サウジ・エジプト・トルコ「独裁国家、同盟として価値がない」


(中略)


◇ドイツ・イタリア・スペイン「安保ただ乗り、同盟として扱っても」


(中略)


◇日本・フィリピン「日和見主義...米国の助けにならない」


(フィリピンについて中略)


彼(※バンドウ専任研究員)は、最後に「今、日本との親善を断ち切るとき」とした。彼は「日本は清潔で丁寧で良い国」としながらも、「中国と北朝鮮が軍事的に活発になったが、日本は一貫して『平和憲法』の後ろに隠れていた」と語った。世界3位の経済大国である日本の国防費はGDPの1%水準に留まっており「第二次大戦は終わって、日本は回復し民主主義は深く根付いた」と言った。


もちろんこれは事実上、日本の再武装を懸念している韓国の立場とは異なる。しかし、米国の保守勢力は今、日本が平和憲法を超えて再武装し、中国と対立するよう願っているということを伺わせる。


(後略)


朝鮮日報「美 보수 싱크탱크 "도움 안되는 독일·일본·사우디와 동맹 끊어야"(米保守シンクタンク「助けにならないドイツ・日本・サウジとの同盟を切るのだ)」より一部抜粋



米国が...というか、ケイト研究所やその提言に同調する保守性向の人たちが「日本」に望んでいることは、きちんと再武装して極東アジアの抑えになれ、ということなんでしょう。

それについては一理あると思います。正直、私は韓国を全く信用していません。在日米軍もあまり信用していません。いざという時、日本は単身で自国民を守れるだけの備えを最低でもすべきだと思っています。

軍拡しろ、と言っているわけではありませんし、戦争がしたいわけでもありません。ただ世の中、「無抵抗であれば何もされない」なんてことはない、というだけの話です。

非暴力と無抵抗は違います。平和主義者は非暴力主義者ではあるかもしれませんが、決して無抵抗主義者とは限りません。

ですので、日本に手を出したら只では済まない、と相手に思わせるだけの備えと制度(法整備含めて)の構築が必要だろうと思っています。


しかし、在外米軍を撤収させるということは、米国は自身の影響力を自ら削ぐことと同義です。

仮に日本が再武装したとして、今まで通り日本が米国と「お友達」の関係を続ける保障なんてないのですけれど、そのあたりどのように補完していこうと考えているのでしょう?

それとも報告書は単なる「ポーズ」で、「米国は同盟破棄したっていいんだよ?」という揺さぶりの材料なのでしょうか?