「韓国経済の成長モデルは13年前がピークだった」という話

英経済紙フィナンシャルタイムズが4月22日に、韓国経済の既存成長モデルはすでに13年前に頂点に到達していたという記事を載せました。
龍仁半導体クラスターを例に挙げ、投資の必要性は認めながらも、しかし、韓国政府が依然として製造業と大企業を中心の成長モデルに固執していることは、「既に衰退の兆しを見せているこれらの従来モデルを改革する意志や能力がないことを示している」と指摘しています。

週刊東亜がまとめ記事を出していたので紹介します。

 



週刊東亜の記事からです。

FT「韓国経済の既存成長モデル、すでに13年前に頂点に到達」


(前略)

韓国の1970~2022年の年平均経済成長率は6.4%だった。昨年、韓国銀行は2020年代の年間成長率が平均2.1%に鈍化し、2030年代には0.6%に達し、2040年代からは毎年0.1%ずつ減少するだろうと警告した。
安価なエネルギーと労働力に基づいた韓国の従来の成長モデルが揺らいでいる。製造企業に安価な産業用電気を提供してきたエネルギー、公企業、韓国電力公社には1500億ドル(約206兆7300億ウォン)の負債が山積している。経済協力開発機構OECD)37の加盟国のうち、ギリシャ、チリ、メキシコ、コロンビアだけが韓国より労働生産性が低い。

(中略)

経済学者たちは「古いモデル」を改革しにくい理由の一つとして、それが非常に成功的だったためだという点を挙げる。

(中略)

マッキンゼー・アンド・カンパニー韓国事務所のソン・スンホン代表は「韓国が2度大きな跳躍を成し遂げた」と話す。一つは1960~1980年代に基礎商品から石油化学と重工業に移動したもので、もう一つは1980~2000年代に先端製造業に移ったものだ。しかし、2005~2022年には国の10大輸出製品リストにディスプレイ一つだけ新たに追加された。多様な核心技術分野で韓国の優位は減っている。2012年には韓国政府が選定した120の重点技術のうち、36の分野で世界をリードしたが、2020年にはその数が4つに落ちた。

ソウル大学行政大学院のパク・サンイン経済学科教授は、既存の成長モデルが2011年に頂点に達したと主張する。韓国の技術輸出は中国の浮上と世界的な技術ブームという二重需要の衝撃、そして日本のライバル会社に対抗してグローバルディスプレイ市場を掌握しようとするサムスンとLGの大規模な投資によって10年間牽引されたという説明だ。しかし、その後、中国の技術企業が最先端半導体を除いたほぼすべての分野で韓国に追いついた。これは一時、顧客会社または協力会社に過ぎなかった中国企業が競争者に浮上したという意味だ。

(中略)

パク教授は「主要大手企業が収めた注目すべき巨大利益が、独占的な契約で価格圧迫を受ける国内協力会社の犠牲によって得られたものだ」と付け加えた。その結果、韓国労働力の80%以上を雇用している中小企業は職員とインフラに投資する資金が不足し、生産性が悪化し、革新が鈍化し、サービス部門の成長が抑制されている。パク教授は「財閥が国内の混乱状況下で保護を受け、海外競争に集中できなければならないというのがその理論的根拠だった」と話す。
パク教授によると、2021年に韓国GDPの半分を占めた大企業は全体人口の6%だけを雇用していた。このように両分化した経済構造は社会的・地域的不平等を引き起こし、若者たちの間でソウルとその周辺少数エリートの大学進学、高賃金働き口を巡る競争を深化する。

このような競争は、韓国の若者たちに学業的、財政的、社会的負担と格闘させ、出産率をさらに下げる。韓国はOECDで性別賃金格差が最も大きく、自殺率が最も高い国だ。 また、国際金融研究院によると、韓国は先進国の中でGDP対比家計負債比率が最も高い国でもある。

(後略)



週刊東亜「FT “한국 경제 기존 성장모델, 이미 13년 전 정점 도달(FT「韓国経済の既存成長モデル、すでに13年前に頂点に到達」)」より一部抜粋

最後にチラっと反対意見にも触れられています。
韓国に批判的な意見があるときによく見る「韓国を羨ましがっているからだ」というものです。西側諸国が放棄した先端製造業を韓国が保持してきたこと、南米や東南アジア、中東市場へのアプローチが欧米企業より上手く行っていることを妬んで韓国危機を誇張している、というものです。

私がこの記事で気になったのは、競争の深化を云々、という段落の部分です。
競争の深化(激化)というのは、記事で言われているようなことだけが原因ではないと思うんです。もともと韓国(朝鮮)では、エリート志向が強いため競争率も高かったんじゃないかと思います。
そのもともとの国民性・社会性と、記事で言われているような状況との親和性が高かったということではないでしょうか?

また、大企業を中心による成長も一種の「一極集中型」と言えます。
この「一極集中」、韓国のあらゆる社会問題・経済問題を表すことが出来る言葉だと思いますけれども、この考え方・行動原理、そうなってしまう根底には儒教的な思想が影響しているのではないかと思います。

儒教には「宇宙の法則」とでも言うべき「普遍的な価値」が存在します。つまり、正しいことは始めから正しいと決まっているのです。
だからこそ多くの人が「一番正しい」と感じるものに殺到する…それが「一極集中」という結果を招いているのではないかと考えます。

まあ、正しさの基準は「損か得か」、「偉いか、そうではないか」という非常に世俗的なものな気がしますが...だからこそ皆が皆「そう」動くレミング現象になるのではないかと。