韓国産検査キットは「不良品?いやいやFDAの基準に合わせただけ」という話

メリーランド州知事が4月に州警察まで動員して大騒ぎ...大々的に「空輸」を演出した韓国産検査キットにまたまた問題が持ち上がっています。
当初購入した50万件分が全て「不良品」だったのではないか、疑惑です。
購入後、実際に使用されるまでに2〜3ヶ月空いていますが、その間の5月に追加資金を投じて全品「交換」しているのです。
州知事はこれを「アップグレード」と表現していました。けれど、追加金が発生しているにも関わらず、議会での質問に誠実に答えないなど説明が十分ではないようです。


聯合ニュースの記事からです。

韓国産の診断キット不備があり交換?...「FDA基準に合わせたアップグレード」(総合)


米国メリーランド州が韓国産コロナウィルス感染症(コロナ19)診断キットを購入したが、一月後にこれを新たに交換したとワシントンポスト(WP)が20日(現地時間)報じた。

WPは最初のキットに欠陥が発見されたためと報道したが、メリーランド州とそのメーカーは製品の欠陥ではなく、米食品医薬品局(FDA)が後日提示した条件に基づいてキットをアップグレードしたためと述べた。

WPによると、メリーランド州は去る4月18日から二度にわたって韓国のラブ・ゲノミクスが作成したコロナ19診断キット「ラブゴン」50万回の検査分を空輸した。

(中略)

キットの購入にかかった費用はキット価格900万ドルと送料46万ドルなど946万ドルであった。

メリーランド州は検査を処理する研究所が必要で、ICMDとCIANなど2か所に依頼し、ICMDはこのキットに問題があることを発見したとWPは報道した。
また、メリーランド州政府は250万ドルを追加で投じ、FDAが承認した内容と一致する新しいラブゴン50万回分を5月21日から受け取り開始したとWPは伝えた。

また、州政府が診断キットの交換事実を明らかにしておらず、州議会議員の質疑にも誠実に回答していないだけでなく、ホーガン知事も欠陥是正ではなく、キットをアップグレードしたというように答えたとWPは批判した。

ラブゴンは6月10日頃から実際の検査の現場で使用され、現在までに75%である37万5千回分が使用され、年末までに残りの検査分をすべて使い切る計画であることが分かった。

しかし、メリーランド州の説明はWPの報道とはかなり異なっている。初めてラブゴンを持ち込んだ4月には、米国で診断キットが非常に不足しており、連邦政府も州が自主的にキットを確保するように事実上、手を引いていた段階である。

FDAも診断キットの明確な基準を提示するより州の裁量をある程度認めていた時期に、キットの確保が急務だったメリーランド州としては韓国の支援を受けてようやくラブ・ゲノミクスの物を確保したということである。

しかし、その後FDAが4月30日、ラブゴンの診断キットについて最終的に承認した基準によると、既に空輸したキットでは検査に時間がかかる問題点か発見され、これを解決するために既存のキットを返却し、FDA基準に合わせた新しいキットを確保したという。

ラブ・ゲノミクスキットに欠陥があったのではなく、FDA基準に合わせて見るとアップグレードしたキットが必要という説明である。

メリーランド州の関係者は聯合ニュースとの通話で「困難な中でラブ・ゲノミクスがよく協力してくれて感謝している」とし「WPの記事のために援助してくれた韓国政府とラブ・ゲノミクスに被害がいくのではと気になる」と語った。

ラブ・ゲノミクスの関係者も「キットを再空輸したのは製品に問題があったのではなく、メリーランド州の政策的意思決定によるもの」とし「最初のキット出荷時に州にFDA緊急使用の承認を受けていない製品だと告知したが、州政府が購入の意思を明らかにし、これを信じて販売した」と述べた。

(後略)

聯合ニュース「한국산 진단키트 결함 있어 교체?.."FDA 기준 맞춘 업그레이드"(종합)(韓国産の診断キット不備があり交換?...「FDA基準に合わせたアップグレード」(総合))」より一部抜粋


ICMDが発見したキットの問題は「アップグレード」前に空輸された最初の検査キットのはずですが、それが何だったのかについては触れられていないので分かりません。(記事の後半で触れている「検査に時間がかかる問題点」はまた別のことだと思います)


この記事から分かることは

  • 最初に購入された50万回分の検査キットは1件も使われていない。
  • FDA基準を満たすために追加で250万ドル支払って交換した。


です。韓国産キットの品質云々は置いておいて、この動きは事実でしょう。
で、FDA基準を満たしていない(=米国で結果が保証されない)ことをもって「不良品」というのなら、50万回分の検査キットは確かに「不良品」と言えます。

ラリー・ホーガンさんは自分の出来ることを出来る範囲で頑張ったのかもしれませんね。
結局、彼が動いている間に米国の検査キット供給状況は改善されて、韓国産キットが現場投入される頃には米国産で賄えるようになっていましたが、これは結果論に過ぎません。

それをどう評価するかは人によるでしょう。
徒労に終わったとしても何もしないよりはマシ、と感じる人もいれば、慌てて動くからこうなった、と思う人もいるでしょう。

いずれにしても、追加金が発生してしまっているので「何がどうしてこうなった」はちゃんと説明するべきだとは思いますけどね。


最後に、名称の訳語について。
ラブ・ゲノミクスは韓国語表記で「랩지노믹스」。これは日本語に直すと「レプ」とも書けますが、英語表記が「Lab Genomics」のため、「ラブ」としています。
検査キット名のラブゴンは韓国語表記で「랩건」。日本語では「レプゴン」とも書けます。が、前述のように「랩」を「ラブ」としたので合わせておきます。