「日帝残滓精算」、「親日残滓精算」よく聞くワードです。
実際は「親日」や「土着倭寇」とレッテルを貼った自身の「敵」を攻撃するための道具であったり、既得権を守るための道具とし機能していますから精算対象となるものは恣意的に選択されています。日常的に溶け込んだ習慣や言葉などは問題視されないことも珍しくありません。
そんな事例を紹介します。
葬儀で当たり前に行われている献花についてです。
韓国の葬儀では菊の花が使われるそうです。葬儀風習自体は日本と違うものの、菊を献花するという所は同じようです。
でも儒教文化の朝鮮に死者に献花するという風習は元々は無く、日本からの独立後に始まったようです。
しかも捧げられるのは日本の皇室を象徴する「菊の花」。このことを、問題視するどころか疑問視すらされていない、と何故かキリスト教の牧師が嘆いています。
東亜日報の記事からです。
「大統領までキム・ボクトンさんの遺影に日本皇室の花を献花するなんて..」[イ・ジング記者の対話]
先月12日、日本軍「慰安婦」被害者の一人、チョン・ボクスさん(99)がこの世を去った。葬儀は滞在していた京畿道広州の「ナヌムの家」近くの葬儀場で行われ、いつものように弔問客は菊で飾られた遺影の前に菊の花を献花した。誤った韓国葬儀文化の改善運動を繰り広げているソン・ギルウォン牧師(63・チョンラン教会)は「亡くなった慰安婦被害者に日本の皇室を象徴する菊の花を喧嘩するというのはとんでもない」、「このように意味も分からず、何も考えずに行う葬儀文化が一つや二つではない」と話した。
ー葬儀で目にする菊が、日本皇室の象徴とは思いもしなかった
「無条件に日本を排斥しようというのではない。しかし、日本軍の蛮行を経験したお婆さんたちの最後を菊で飾って献花することは本当にない。2019年1月にこの世を去ったキム・ボクドンさんの殯所*1ではムン・ジェイン大統領も訪ねて菊を献花した。ムン大統領だけでなく、我々は誰も知らないが、お婆さんたちは空でどんな気持ちなのか...独立軍の殯所も菊の花を飾って喧嘩している...」
(中略)
「葬儀文化というのは国が強制して変えられるものではないから。このインタビューのように何度も知らせて国民の考えが変わるしか無いのではないか」(葬儀の菊の献花習慣はどのようなものか)「解放後、釜山で始まったと言われているが、おそらく日本と近いしそうだと思う。日本の国花愛は並外れていて、神社はもとより軍艦にも飾るほどだ。それを韓国の葬儀業者が金儲けの手段として持ち込み、拡大させたようだ。韓国の伝統的な祭祀には花を飾って献花する文化がない。いざ日本は小さな葬式に変わっているのに、日帝の残滓を精算しようという我々は朝鮮総督府が作った儀礼準則をなぜ今まで捨てられずにいるのか...」
ー朝鮮総督府の儀礼準則とは?
「1934年に朝鮮総督府が植民地支配のために作った朝鮮儀礼簡素化政策だ。我々の伝統の喪服である屈巾*2の代わりにトゥルマギ*3に頭巾を着けさせ、洋服を着る際は左腕に腕章を付けさせた。腕章の黒い線は喪主、家族、弔問客を区別するために数を変えたが、弾圧のための監視手段として起動した。当時、葬儀は村中の行儀であり、各地の親戚や知人らが参列したため、情報交換の場としても利用されたためだ。
(中略)
ー故人を罪人にするとはどういう意味か
「故人が着る服は壽衣*4だ。伝統的に絹か、官職にあった人は官服を着せたが、故人に対する尊重、最高の礼遇の意味が込められている。喪服というのは遺族が着ていた服だが、罪人たちが着ていた麻布で作ったものだ。親にまともに仕えることが出来なかった罪人、という意味が込められている。ところが、今は故人に麻の服を着せ、子どもたちは洋服を着る。完全に逆になったのではないだろうか。さらに『親孝行しなければならない』という葬儀業者のマーケティングに乗せられ数百万ウォンの麻の服を着せているが、実際の原価は数万ウォンしかしないうえ、大半が中国産だ。火葬率90%を超えるため、ほとんど2、3日後に焼かれる服だ。これがコメディでなくて何がコメディなのか」
(後略)
東亜日報「"대통령까지 김복동 할머니 영정에 일본 황실 꽃을 헌화하니.."[이진구 기자의 대화](「大統領までキム・ボクトンさんの遺影に日本皇室の花を献花するなんて..」[イ・ジング記者の対話])」より一部抜粋
キリスト教の牧師が「韓国の葬儀文化」を「改善」というのも何だか変な話に聞こえます。
ところで「葬儀文化というのは国が強制して変えられるものではない」のに「朝鮮総督府の儀礼準則によって伝統儀礼が解体された」というのは矛盾しているように感じるのですけど。しかも菊の献花が始まったのは独立後と言いますし、関係ないのでは...?と思えてなりません。
他にも「コメディ」として「2〜3日後には焼かれる麻の服に数百万ウォン」としていますが、これは「2〜3日後には焼かれる服を絹で作る」のでも、やはり同じく「コメディ」でしょう。(罪人に着せる麻の服、中国産...ここに一番文句を言いたいのでしょうけど)
とにかく、韓国社会ではなんでもかんでも「日帝残滓」と言っているように見えて実はかなり恣意的なようですよ、という事例です。
わざわざムンさんが献花した件に触れているあたり、これも「日帝残滓」を利用した攻撃かもしれませんけど。
ところで、献花の文化の無かった朝鮮の葬儀文化に献花を導入したのは、葬儀を派手にする演出だったのではないかと思います。
豪華で華やかな祭祀を行うことで遺族が故人に「尽くす」姿を見せることが出来ますからね。(良い/悪いの話じゃないですよ。故人に「尽くす」ことが儒教祭祀の重要な要素でしょ、って話です)
ある意味では「伝統的思想」に則って変化した葬儀儀礼と言えなくも無いんじゃないでしょうか?