米韓首脳会談について「何をあげて何を貰ったのか」的なまとめ記事がありました。
「成績表」と称しています。
長い割に中身が薄いのですけれど、内容の薄さも含めてぜひ見ていただければと思います。
というのも「伝えるべき核心部分の都合が悪い、あるいは薄いほど、どうでも良い見てくれ部分を大げさに伝えて装飾する」傾向が韓国メディアにはある、と個人的に思っていますので。
KBSの記事からです。韓国のKBSは公共メディアで、日本で言うNHKに相当します。
何を与え、何を受け取ったのか...韓米首脳会談の成績表は?
ムン・ジェイン大統領とバイデン大統領との初の首脳会談が終わりました。
(中略)
ムン・ジェイン大統領は今日、SNSで「最高の歴訪であり、最高の会談だった」と自評しました。
ムン大統領は「本当にもてなされているという感じだった」とし「我々より遥かに大きく強い国なのに、彼らが外交に注ぐ真心は我々が学ばなければならない点」と述べた。
(中略)
今回の韓米首脳会談を見守った人なら「もてなしを受けた」というムン大統領の評価が理解できます。アメリカはムン大統領の訪米に合わせ、バイデン政府初の名誉勲章授賞式を行いました。6・25戦争の英雄に名誉勲章を与えながら、授与式に海外の首脳としては初めてムン大統領を招待しました。米国全域に生中継される授与式でムン大統領は韓米同盟の重要性を強調する演説をしました。
(中略)
バイデン大統領、ハリス副大統領、ナンシー・ペロシ下院議長はみな好意的でした。ペロシ議長は自身の韓国系補佐官がムン大統領のファンだと言い、ハイヒールを履いて飛び出して紹介したりもしました。
(中略)
韓米首脳の共同声明は「韓米同盟の新しい幕開け」という表現で始まります。安保、経済、社会、文化など、ほぼ全ての分野で韓米同盟を強固にし発展させる構造的な枠組みが新しく整備されました。
(中略)
これでムン・ジェイン政府の期間中にレッテルのようにつきまとっていた韓米同盟の亀裂という憂慮は一応、払拭させることが出来たように見えます。これまで防衛費分担、南北関係改善推進の過程での対北制裁問題、米中葛藤での曖昧な立場などで韓米同盟に亀裂が生じているという指摘が多かったが、こうした懸念を払拭させたのは今回の訪米の最も大きな成果だと言えます。
(中略)
バイデン大統領は対話と外交を強調し、特に「南北対話」を支持すると述べました。目標として 「韓半島の完全な非核化」 を提示しました。全ての過程は韓国と調整すると約束しました。それとともに、共同声明に「2018年板門店宣言」とシンガポール共同声明を基に議論を始めると述べました。我々の政府はこの部分を最も大きな成果と見ています。
(中略)
今回、ナンシー・ペロシ米下院議長からも「クアッド」に参加した方がいいと聞いた、とヨン・キム米下院議員がKBSとのインタビューで明らかにしました。
(中略)
米国は対中国戦略に明確な立場を取ることを求めたはずですし、我々はそうできない事情を話したはずです。
そして、その結果が首脳共同声明に盛り込まれました。首脳の共同声明には「クアッド」と南シナ海問題、台湾問題など中国が敏感になっている問題が多数含まれています。当初、「自由で開放的なインド・太平洋」という中立的な表現だけが盛り込まれると予想されていましたが、一歩踏み込んだのでした。
特に韓米両国が共同声明で台湾問題を公に取り上げたのは今回が初めてです。
ただ、その内容が中国を刺激するようなものではなく、原論的な内容だったという点で水位を調整したものと思われます。
(中略)
その代わり、韓国は半導体とバッテリーなどの新技術分野、コロナ19ワクチンなどのバイオ産業、そして環境分野、原子力協力分野などで本格的な協力を続けるものと見られています。米国としては実利を取ったのです。あえて南シナ海や台湾海峡の軍事参加まで要求する必要はないと考えたのです。
半導体など新分野、5G技術、ワクチンなどもすべて「安全保障」と繋がる領域です。クアッド中心のインド・太平洋地域で韓国の役割がより大きくなることで、自然と中国牽制の役割ができるよう誘導するのです。
韓国としても経済的な実益を得ることが出来るという点で互いにウィン(win) - ウィン(win)と解釈することができます。
(後略)
KBS「뭘 주고 뭘 받았나..한미 정상회담 성적표는?(何を与え、何を受け取ったのか...韓米首脳会談の成績表は?)」より一部抜粋
お疲れ様でした。一応、6・25戦争というのは朝鮮戦争のことです。
記事を要約すると「ムン大統領は大歓待を受けた。アメリカはこんなに韓国を大事にしてくれている。だから大丈夫」です。なんとも中身のない記事です。
大事にしてくれているから「よきに計らってくれる」と考えているのでしょうか?
実は大事なのは引用文の最後の部分です。クアッドに加入せずとも韓国に中国牽制の役割を担わせるというところ。
「クアッド」協議体による庇護(サポート)を受けられない状態で単身、中国への「防波堤」として使われるという意味であり、最も避けなければならなかった事態でしょう。
昨日紹介したビクター・チャさんの主張する韓国の「孤立」はまさにこの状態です。
これをwin - winと認識している韓国政府のおめでたさは、ぜひ日本も利用していきましょう。
「韓半島(朝鮮半島)の完全な非核化」という表現を、米国が韓国や北朝鮮と同じく「在韓米軍撤退」まで視野に入れて考えているのだとしたら、確かに南シナ海や台湾海峡の軍事参加にまであえて韓国に要求する必要はありません。米軍を台湾に移す、という選択肢もあるわけですから。