米韓の「核協議グループ」発足は核抑制に特化した「アジア版クアッド」の下敷き、という話

先月の米韓首脳会談の後発表された「核協議グループ(NCG)」についてですが、これが「アジア核企画グループ」の下敷きだ、との主張がありました。
まず韓国との間で話が出たのは韓国世論を中心に広がる「対米不信」を払拭するためで、米国の絵としては日本とオーストラリアを加え核抑制に特化した「クアッド」を描いている、とのことです。

 



東亜日報の記事からです。

[今日と明日/イ・チョルヒ]韓米核協議に隠された「アジア核クアッド」


4・26韓米種の会談の結果出た核協議グループ(NCG)をめぐり「事実上の核共有」とか「中身のない強情」とか、その評価は正反対だった。どんな制度や機構であれ、始まりは不慣れで中途半端なものだ。

(中略)

NCGをきちんと評価するためには、その源を先に調べる必要がある。一昨年2月、バイデン政権発足直後に出たシカゴ国際問題研究所(CCGA)の報告書「核拡散防止と米国同盟安全保障」がその始まりと見られる。これはチャック・ヘーゲル元米国防長官とケビン・ラッド元オーストラリア首相、マルコム・リフキンド元英外相が共同議長を務め、各国の安保専門家らが参加した。

同報告書は豪州、日本、韓国を米国の核企画過程に参加させ、彼らと米国の核戦力政策について話し合う体系を整えるべきだとし、NATOの核企画グループ(Nuclear Planning Group)のような「アジア核企画グループ(ANPG)」の創設を提案している。米国、日本、オーストラリア、インドの4ヵ国安保協議体クアッド(Quad)とは別に核抑制に特化した「アジア版クアッド」の設立を注文したのだ。

その提案の原動力は米国の政権交代だった。前任のトランプ政権の同盟軽視と自国優先主義から抜け出し、同盟国の疑問を払拭しなければ各国の独自核武装など、世界的な核拡散を防ぐことは出来ないという危機感の表れだった。

(中略)

また、今年初めユン・ソンニョル大統領の「核保有可能」発言は世界安保専門家グループを驚かせた。ワシントンの専門家たちはユン大統領の発言が単なる失言なのか、国内世論管理用なのか、米国に向けた圧迫用なのか疑問を提起した。その一方、増大する米国に対する韓国人の反感を管理すべきだということには意見が一致した。

その中で目立つ政策構想がヘリテージ財団ブルース・クリンナー先任研究員の「信頼の危機:アジアにおける拡張抑制強化の必要性」報告書だった。クリンナー氏も韓米日3国と豪州が参加するNATO式多国間NPGの設立を提案する。ただ「韓国はNPGという名前に及ばないいかなるものでも不満に思うだろう」とし、韓米戦力の統合性と韓国の切羽詰った要請、国家的自負心を考慮してひとまず両者NPGを作った後、4者グループにまとめる2段階案を提示した。

このような背景の下で生まれた韓米協議体NCGは、米国の戦略的ビッグピクチャーでは韓米日3者、続いてアジア版4者NPGへの初の飛び石になるだろう。実際、NCGが核拡張抑制の実効性を備えるためには脅威認識を共有する韓米日3国間協力は欠かせない。さらに北韓核の脅威がさらに高まり、米中対決が一層激化すれば、豪州の合流も時間の問題だろう。

問題は、その過程で韓国がやむを得ず中国との葛藤を最前線で耐えなければならない地政学的ジレンマに直面することにある。中国はクアッドのような安保協力体を「排他的集団」として強く反発してきた。韓国は北韓核問題に対抗した韓半島の安保に焦点を合わせたいが、米国は台湾海峡はもちろんインド太平洋で中国を封鎖しようとしている。NCGが米国にはアジア版核同盟の試験台だが、韓国には米中選択の試験台にならざるを得ない理由だ。



東亜日報「[오늘과 내일/이철희]한미 핵협의그룹에 숨겨진 ‘아시아 核 쿼드’([今日と明日/イ・チョルヒ]韓米核協議に隠された「アジア核クアッド」)」より一部抜粋

うーん...韓国世論を考慮して持たせてくれたお土産(NCG)が、対中外交では不利に働くと可能性がある、と。難儀ですね。