徴用工訴訟で「消滅時効」の話

徴用工訴訟で新たに原告の訴えを棄却する判決が出ました。6月の判決に続いてふたつ目の敗訴判決となります。
まだ一審ということもあり、ニュースとしてはあまり大きく取り上げられていない印象です。

素直に喜べないのは、棄却の理由が原告の訴えを「不当」としたのではなく「消滅時効」とした点です。


ニュース1の記事からです。

最高裁全員合議体の判決以降相次ぐ強制徴用訴訟敗訴...なぜ?


2018年最高裁の全員合議体で日帝強占期の強制労働被害者に対する損害賠償請求権を求める趣旨の判決が下されたが、最近、下級審で強制労働被害者が敗訴する事件が発生している。

(中略)

ソウル中央地裁民事25単独のパク・ソンイン部長判事は11日、強制労働被害者の遺族5人が三菱マテリアル(元・三菱鉱業)を相手取って起こした損害賠償訴訟で 「原告の請求を棄却する」と原告敗訴の判決を下した。

2012年に最高裁で強制労働被害者の損害賠償請求権が消滅しなかったという判決が出てから3年経ってから訴訟を起こすことは、権利行使の時効内に訴訟を提起したと見ることは出来ないという理由からだ。

三菱側は裁判過程で遺族の損害賠償請求権が消滅時効になったと主張した。

遺族側は2012年以降、破棄差し戻し審を経て、最高裁判所の全員合議体が2018年10月、再上告審判決を下したため、2018年になって権利行使の傷害事由が解消された、と主張した。しかし裁判所は請求権協定の適用対象に関する法理は2012年の最高裁判決の内容に拘束される、と認めなかった。

要するに、2012年に最高裁判所で既に請求権について法理が決まっているため、それから3年後の2017年2月23日に訴訟を提起したことは権利行使の相当期間に提起されたと見ることは出来ない、という判断だ。

(中略)

現行の民法上、不法行為を原因とする損害賠償請求権は被害者やその法定代理人が損害や加害者を知った日から3年間これを行使しないか、不法行為を行った日から10年が経過すると時効が成立する*1

(後略)

ニュース1「대법 전합 판결 이후 잇따르는 강제징용 손배소 패소…왜?(最高裁全員合議体の判決以降相次ぐ強制徴用訴訟敗訴...なぜ?)」より一部抜粋


6月の判決は個人請求権は日韓請求権協定に含まれる、という判断のもとの棄却でした。
今回は2012年の「損害賠償請求権は消滅していない」の判断は生きとしておいて、ただし3年以内に訴訟を起こさなかったことから「消滅時効」です。判断が一貫されていませんねぇ...。

引用した記事とは別にイーデイリーが速報で敗訴の報せだけ出している記事に90個ほどコメントが付いているのですけれど、マトモなものが多いです。思わず「日本の極右のコメントか?」とツッコミが入るほどです。

「ムン・ゲンイ、パル・ジェイン」*2

「FACT=本当の強制徴用被害者は20、30代の大韓民国の男性だ」

文在寅民主党の連中は...もう反日煽動はやめて...ユン・ミヒャン*3とかをちゃんと断罪しなさい」

「65年の韓日条約ですべて終わった問題を何度持ち出すんだよ。当時の韓国国家予算の3倍の大金での京釜高速道路やポスコ建設に満足すべき」

「ここのコメントはみんな日本の極右なのか?」

「日本が個別補償すると言うのを韓国政府が拒否して直接解決すると言ったのだ。韓国政府に問い詰めるべきであり、異議があるなら第三国の仲裁のもと再議論が可能とした。今回、日本がこのように要求したが、文在寅政府が拒否する」

イーデイリー「[속보]강제징용 피해자들, 日기업 상대 손배소 1심서 패소」のコメント欄より一部抜粋


コメントは「いいね」順に並べたものです。
こうした考えが主流とは思いませんが、もうこのやり口は通じないと思っている人がいることは確かなようです。

記事自体に付いた評価は「いいね=107」「バカ=99」(「温かい=2」「悲しい=5」「続き気になる=4」)と、意見がおよそ真っ二つに割れています。

*1:原文は「時効が消滅する(시효가 소멸한다)」となっているが、それだと日本語では時効が成立しない、と同義になってしまうので意味が通じなくなる。権利が消滅する「消滅時効」の意味だと思われる。

*2:ムン・ジェインとアカ(共産主義者)=パルゲンイを混ぜた造語

*3:元・正義記憶連帯の理事