先日、徴用訴訟の賠償金を三菱の韓国内取引先であるLSエムトロン株式会社からの売上（債権）を差し押さえることで支払わせる命令が出た、ということをお伝えしました。
既にご存知かもしれませんが、この話が少しコジれそうな気配です。
簡単にまとめると、三菱重工は現在、韓国で事業を展開していません。販売、施工、メンテンナンス業務の子会社オフィス（三菱重工エンジンシステム）があるだけです。LSエムトロンと取り引きがあるのはそこで、法人格としては三菱と別会社扱いです。
で、LSエムトロンは現在のところ、取引相手は「三菱重工ではない」との立場だそうです。
もうちょっと様子を見ようかと思ったのですが、もしLSエムトロンがこのまま「三菱重工」と「三菱重工エンジンシステム」を別会社との立場を変えず、債権差し押さえ命令を拒否すると、今度はLSエムトロンが（自称）徴用被害者たちから回収訴訟を起こされる可能性があるという意味不明な事態が発生しているようです。
ここにきてようやく韓国企業にとってマイナス影響かもしれない、という見方が出てきました。
ソウル経済の記事からです。
最悪の韓日関係...韓国企業の日本事業にも影響
政府が冷え込んだ韓日関係を放置している間に、強制徴用被害の賠償問題が韓国企業にとって強力なリスクとして浮上している。
（中略）
20日、産業界によると三菱重工業が韓国内企業のLSエムトロンに対して持っている物品代金債権と関連し、裁判所が差し押さえ及び取り立て命令を下し、LSエムトロンは同日、裁判所に陳述書を提出し、三菱重工業との実質的な取引関係を釈明した。
（中略）
LSエムトロンは監査報告書に記載されたみつビス重工業はグループ所属の他法人である三菱重工業エンジンシステムという点を陳述書で明らかにした。両社を同一会社と見なすことは出来ないと強調した。実際、三菱重工業エンジンシステムは三菱重工業の孫会社で2006年7月に設立されトラクターエンジンなどを生産・販売する。
財界では裁判所が最後まで差し押さえ決定を維持すれば、既に最悪の韓日関係がさらに悪化するだけでなく、韓国企業に対する日本の報復が現実化するという憂慮が高まっている。日本は2019年、半導体素材などに対する輸出規制に踏み切った経緯がある。財界関係者は「日本企業から代金見払いを理由に訴訟を起こされる可能性が高く、取引先も途絶える可能性がある」と指摘した。
（後略）
ソウル経済「최악 한일관계···韓기업 日사업에도 불똥（最悪の韓日関係...韓国企業の日本事業にも影響）」より一部抜粋
多分、ムン政権2年目とかなら「政府が冷え込んだ韓日関係を放置している間に〜」なんて記事は出なかったと思います。
純粋に現状の日韓関係を心配しているのか、それとも大統領選を控えて現政権から距離を取りたいだけなのか、微妙な気はします。
資産差し押さえと関連して、産経さんの記事で「二重基準」という指摘が出ていたので紹介しておきます。
朝鮮戦争（1950〜1953年）での戦争犯罪に関し、韓国国内の北朝鮮資産を差し押さえ、韓国人被害者への賠償に充てるための司法手続きが進んでいる。韓国国内にある外国資産の差し押さえを求めるという意味では日本に対するいわゆる徴用工訴訟と同じ構図だ。一方で、韓国政府は北朝鮮資産に関しては「国益」を理由に裁判所手続きへの強力を拒んでおり、「司法尊重」を名目に外交解決に動かない徴用工問題と異なる〝二重基準〟を露呈している。
問題となっている韓国国内の北朝鮮資産は、韓国のテレビ局などが使用した朝鮮中央テレビの映像の著作権料など。2004年に設立された財団が代理で徴収していたが、経済制裁に伴い09年以降、北朝鮮に送金できなくなった。韓国メディアによると、約23億ウォン（約2億1900万円）が保管されているという。
ソウル中央地裁は昨年7月、朝鮮戦争で北朝鮮の捕虜となり、休戦後も強制労働させられたとする韓国人男性2人の請求を認め、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党書紀に対し1人当たり2100万ウォンを賠償するよう命じた。北朝鮮側は訴訟参加や賠償に一切応じず、男性らは同12月、この著作権料などから賠償金を支払うよう財団側に求める訴訟を新たに起こした。
財団側は「著作権料は朝鮮中央テレビなどに所有権があり、北朝鮮政府の資産ではない」として支払いに応じない姿勢を示した。裁判所は送金を受領するのが誰なのかを調査するため、送金ルートについて韓国統一省に照会を求めた。
しかし、同省は今年7月、「国家の重大な利益を著しく害する恐れ」がある情報を非公開とする規定を根拠に、要請を拒否した。
（後略）
産経ニュース 2021年8月14日より
徴用工には「司法尊重」を盾に動かず、朝鮮戦争捕虜には「国益」を盾に賠償拒否、という見事な韓国政府のダブルスタンダードっぷりです。
