現政権と朝鮮末期との類似点の話

ハム・ジェボンさんという政治学者がいます。「韓国人とは何か?」というテーマで著作を書かれています。

8ヶ月ほど前にメディアとのインタビューで現在、韓国政治の中心を担っている586世代と朝鮮末期の親中斥邪衛正派の類似性について話していましたので紹介します。

ちなみに、586世代というのは1950年代生まれで1980年代に学生運動を経験した現在60代前後の人たちのことです。親中斥邪衛正派は親中で朱子学を正学として固守し、それ以外の思想を邪教として排除しようという動きのことです。

 

 

東亜日報の記事からです。

「執権586、朝鮮末期の親中斥邪衛正派に似ている」


ハム・ジェボン(63)博士が朝鮮末期の混乱から韓国政府の樹立まで、歴史について熱弁を振るった。ハム博士は延世大学政治外交学科教授とユネスコ(UNESCO)社会科学局長、峨山政策研究院理事長兼院長を務めた政治学者だ。この20年間、彼の話題は「韓国·韓国人とは何か」だった。国内外の膨大な資料を取り込んだ「韓国人づくり」は生涯の力作である。 2017年に第1巻「親中為政尺社派」、第2巻「親日開化派」、第3巻「親米キリスト教派1」を出版した。 新刊「親米キリスト教派」は韓国近代化過程でアメリカのプロテスタントの役割にフォーカスを当てた。


(中略)


彼は「今の大韓民国は指導層が世界情勢にうとい『井の中の蛙』という点で朝鮮末期と似ている」とし「閉鎖的・人種的民族主義に陥って、親中・親北路線を歩めば国家的危機に直面する」と懸念した。


(中略)


「1966年、父(1983年ビルマ·アウンサン墓地テロで殉職した咸秉春元大統領秘書室長)が交換教授として赴任し、初めて米国に渡った。同じ年頃の米国の子供たちが私を見て『チャイニーズ(中国人)』、『ジャパニーズ(日本人)』と言った。 私は『コリアン(韓国人)』と言ったら、『ワッツ·ザット(What's that:それは何か)』と聞き返した。強烈な経験だった。コリアンが米国に住めば『在米同胞』、中国に住めば『朝鮮族』、中央アジアに住めば『高麗人』ではないか。韓国人という単語が彼らを一つにまとめることができるだろうか、韓国と韓国人とは何かを探求してみたかった」


朝鮮人も朝鮮王朝が人為的に作り出したものだ。 世宗大王は性理学的価値観によって国家システムを変えた。 高麗時代まで「丈家に行く*1」社会を「嫁入りする」社会に変えるなど、民の生活まで性理学的に規律した。儒教の三綱五倫が支配する朝鮮と朝鮮の人が誕生した。朝鮮末期の混乱で、このようなアイデンティティが揺れた。1919年、高宗の因山をきっかけに三·一運動が起きた。 それでも当時の人々は『国権回復』を叫ぶだけで、王朝復活を主張しなかった。それだけ朝鮮王朝の統治が厳しかったのだ」


(中略)


「朝鮮末期、民は本当にヘル朝鮮で悲惨な生活を送った。力のある両班が肥沃な土地をすべて占め、税金も納めなかった。朝鮮政府は、民のために十分に役割を果たせなかった。医療システムが崩壊し、病気になった民は迷信に依存せざるを得なかった。非両班と女性はまともな教育を受けられず、迫害を受けた。こうした劣悪な現実はプロテスタントが大多数の普通の人にアピールする背景になった」


朝鮮·朝鮮人が韓国·韓国人になる過程で大きく5つの国家·人間の類型があった。『韓国人作り』シリーズの骨組みでもある。 第一は、親中斥邪衛正派だった。従来の朝鮮の価値観を固守し、中国文明を価値基準に立てた。2番目は、日本の近代化に注目した親日派だった。三つ目が親米キリスト教だ。キリスト教、特にプロテスタント的世界観を受け入れ、自由主義·資本主義に友好的だった。第四に、親ソ共産主義は文字通り、共産主義者としてソ連中心の国際社会主義路線を信奉した。最後は人種的民族主義だ。血統中心の民族主義で世界を眺める人々だ。今も韓国社会で大きな力を発揮している」


ハム博士は「今日、大韓民国に親中斥邪衛正派と人種的民族主義派の影が濃く立ち込めていた。586運動圏出身指導層の閉鎖的世界観を見れば朝鮮末期の亡国の悲劇が再現されるのではないかと懸念される」と指摘した。


「586世代は1980年代、民主化を泣き叫んだ。多くはNL(民族解放)だのPD(民衆民主)だのといった理念闘争にだけ没頭した。甚だしくは北朝鮮を信奉する主体思想に陥ったりもした。586世代の政治家たちがそのような理念を捨てても、若い頃に身につけた偏狭な世界観の影響は無視できない。朝鮮末の親中斥邪衛正派の狭隘な価値観と似ている。 ここに人種的民族主義まで結合した」


「米国·日本に対する反感、中国·北朝鮮に対する漠然とした憧れがそれだ。今、南北が1つと見る根拠は、いわゆる『血』しかない。理念と考え方が全く違う。北朝鮮は今でも韓国を核爆弾で抹殺すると意気込んでいる。にもかかわらず、ある人は統一をロマンチックに眺め、北朝鮮政権に何かを施したいという。人種的民族主義の弊害だ。中国に屈従的態度を見せるのも親中斥邪衛正派のような現実に誤った判断だ」


(後略)


東亜日報「“집권 586, 조선 말 친중 위정척사파 닮았다”(執権586、朝鮮末期の親中斥邪衛正派に似ている」)」より一部抜粋

「丈家に行く」とか「嫁入り」とかの部分を補足しておきますと、朝鮮前期までは結婚すると男性が奥さんの実家で奥さんの両親と同居して暮らしていたのだそうです。婿入りですね。

なので「妻の実家(丈家)暮らし」=「結婚」という意味で使われていたのですが、これを「嫁入り(妻が旦那の実家に行く)」に変えたというわけです。

「嫁入り」はもともと中国の風習だったことから儒教とともに定着したことになっているようです。

5つの類型については面白いと思うのですけれど、複数の要素を持っている人が大半でしょう。特に「人種的民族主義派」は他の4類に分類される人であってもほぼ全ての人が持っている要素ではないでしょうか?

「親中斥邪衛正派」と「人種的民族主義」を合わせると「反日種族主義」と同義になりそうに思えます。「朝鮮策略」のときもそうでしたけれど、肝心なところで最悪の手(逆張り)を取ってしまうのもこの辺りが影響していそうですね。

斥邪衛正って要するに「よく分からないから怖い」→「怖いから排除する」ってなるんだと思うんですよ。つまり好奇心が薄いってことでは?朝鮮通信使の代表も、確か「よく分からないのでわざわざ聞きませんでした」みたいな事言っていましたし。

*1:結婚すること。